エンゲージメントを高める方法7選 成功のポイントや事例も紹介
組織の成長と事業の継続を実現するには、従業員一人ひとりのエンゲージメント向上が不可欠です。この記事は、近年注目が集まるエンゲージメントを高めるメリットとその具体的な方法について、すぐにでも取り組みたい経営者に向けてわかりやすく解説します。
組織の成長と事業の継続を実現するには、従業員一人ひとりのエンゲージメント向上が不可欠です。この記事は、近年注目が集まるエンゲージメントを高めるメリットとその具体的な方法について、すぐにでも取り組みたい経営者に向けてわかりやすく解説します。
目次
エンゲージメントは、英語の「engagement」で、もともと「約束、契約、婚約」などの意味を持つ言葉です。
近年は、人事の分野で、従業員一人ひとりの「組織や与えられた仕事のために、自分の能力を発揮する意欲」を指すものとして使われています。特に、従業員一人ひとりが組織に対して自発的に貢献する意欲を「従業員エンゲージメント」、個々の従業員がそれぞれの仕事の内容に対して主体的に取り組んでいる状態を「ワークエンゲージメント」と言います。
いずれにしても、エンゲージメントは従業員の意欲度を見ようとするものであり、多くの企業でこのエンゲージメントを高めることを重視しています。
まずはその理由として、エンゲージメントを高めるメリットをご紹介します。
企業によるエンゲージメント向上のための取り組みは、言い換えれば組織へ愛着を持ったり、この企業で働く意味を見出したりする従業員を増やすための活動です。そのため、まず従業員の離職率の低下を期待することができます。
新卒採用も中途採用も、どちらも苦労して採用にした人材が組織で活躍する前に離職してしまうのは、企業にとって大きな損失です。その損失を抑えられるので、大きなメリットと言えるでしょう。
エンゲージメントの向上に取り組むことで期待できるもう一つのメリットは、生産性の向上です。ギャラップ社の調査報告によると、エンゲージメントが低いかエンゲージメントに取り組んでいない従業員のチームは世界で7.8兆ドルの生産性の損失をもたらしており、その数字は全世界のGDPの11%にも及ぶとされています(参照:The World's $7.8 Trillion Workplace Problem丨GALLUP)。
エンゲージメントの向上に取り組み組織の生産性が向上すれば、業績の向上は自然の流れとも言えます。ギャラップ社が行った最新の従業員エンゲージメントのメタ分析調査によれば、エンゲージメントの高い上位25%のチームは、下位25%のチームと比較して23%高い収益性を上げていることが報告されています(参照:同上)。
エンゲージメントの向上は簡単なことではなく、時間も要する取り組みですが、数字からも企業が取り組むに値するメリットがあることが明らかにされています。
従業員のエンゲージメントを高い状態に保つことができれば、企業にとって得られるメリットが大きいことは明らかになってきています。では、経営者として、自社のエンゲージメントを高めるために実施できる具体的な方法を7つ紹介します。
企業の存在意義とも言える企業のビジョンについて、従業員が明確に理解しているところはそれほど多くないようです。しかし、例えばスターバックスやディズニーなど、わかりやすく心に訴えかけるビジョンがあると従業員の理解が各段に深まり、それぞれがビジョンを実現しようとするため、エンゲージメントを高めるのに役立ちます。
企業のビジョンは従業員に明確に理解されてこそ実現できるものであるため、企業のビジョンについて従業員の理解が深まるように日頃から繰り返し周知共有を行い、エンゲージメントを高める努力が重要です。
さらに、従業員のエンゲージメント向上に努めることを決めたら、そのことを経営者自らが企業のビジョンとして従業員に対して語り、繰り返し共有するのがエンゲージメントを高める第一歩です。
一般的な企業では、従業員は平日毎日一日の3分の1の時間を職場で過ごします。その職場環境は、想像以上に従業員のエンゲージメントに大きな影響を与えます。
少子高齢化やコロナ禍でより柔軟な働き方が望まれるなかで、物理的なオフィス環境や労働時間など、社内の一つひとつの制度や暗黙のルールをいかに個々の事情や都合に合わせて柔軟に対応できるかは、エンゲージメントの向上に大きな影響を持つ要因の一つです。
従業員一人ひとりの個別事情にできるかぎり配慮し、従業員が職務に集中して良いパフォーマンスを発揮できるよう柔軟な支援をすることで、より高いエンゲージメントを期待することができます。
従業員一人ひとりが自分に与えられた職務に対してやりがいを感じているか、自分の能力や適性に合った職務だと感じているかは、エンゲージメントの向上にも影響します。
もし、本人が自分の職務に前向きに取り組めない場合、エンゲージメントを高めるために担当を変えるのもひとつです。
しかし担当替えは、再度教育が必要になるなどそれなりのコストがかかります。
企業のビジョンに対する従業員の理解度とも関係しますが、どんな職務であっても、その職務の目的や意義は、何らかの形で企業のビジョンを実現するための事業方針を元に必要とされているはずです。そのことを従業員は適切にまたは十分に理解しているでしょうか。
職務そのものを変えず、その職務が組織にとってどのように重要であるか理解してもらえるように努めると、従業員のエンゲージメント向上につながる場合もあります。
本人が自覚していない場合であっても、人は誰でも自分の成長を望んでいるものです。自分が成長した方向に理解を示し、それを支援すると従業員のエンゲージメントを高められます。
従業員の自己成長を支援する方法はさまざまですが、できるだけ本人が希望する支援の方法を尊重することが、よりエンゲージメント向上につながりやすいと考えられます。例えば、社内の研修プログラムのテーマを選択性にしたり、外部の研修への参加費用を補助したりなど、従業員の選択肢を広げて成長を後押しする方法があります。
また、検定や資格試験などの受験を奨励し、自己学習のための教材や書籍などの購入費用の補助や合格後の一時金や手当を支給し、成長を支援するやり方もあります。
従業員一人ひとりがどのような支援を望んでいるか、その多様性をどれだけ受け止められるかが、エンゲージメント向上の鍵となります。
エンゲージメントの向上を目指すには、従業員の職務上の貢献や自己成長を支援するための制度を作るだけではなく、「仕事の実績や成長の結果が組織貢献することを承認する組織文化」を育むのも重要です。
チームの上司には、積極的に部下の自主性を尊重して、それぞれの努力と成果を承認する文化をチーム内に醸成する能力が求められます。従業員は、自分の職務の遂行に向けた努力とその成果を上司や同僚に承認してもらえることを認識すると心理的安全性が高まり、さらに新しいことにも挑戦する意欲が生まれます。
従業員のエンゲージメント向上を目指す従業員の成果を適切に支援するには、成果を正しく評価する指標をあらかじめ設定しておく必要があります。せっかくエンゲージメント向上を目指すための成果の承認を奨励するのに、承認の基準があいまいだったり結果だけを承認したりするような偏った承認の仕組みでは、従業員の不信感を買う結果につながり逆効果になってしまうため、注意が必要です。
職場の課題としてよく上がる上司と部下の関係も含め、社内のコミュニケーションです。この風通しの良し悪しが従業員のエンゲージメントに与える影響は、決して小さくありません。特に、上司とのコミュニケーションがうまく行かずに悩む部下にとっては、それが改善されることでエンゲージメントは大きく向上する可能性があります。
社内のコミュニケーションを本質的に改善するには、まず、従業員一人ひとりの組織に対する心理的安全性を担保する必要があります。これが担保されていない職場では、従業員が自分の意見や考えを本音で話してくれることを期待できないからです。
例えば、上司とのコミュニケーションがうまく行っていないことを人事部や総務部に相談した場合、そのことを本人に承諾なく当の上司に伝えてしまったり、本人の意向を無視して異動を決定したりしては、本人は安心して個人的な悩みを相談できない組織だと感じてしまいます。一度従業員がそのように心理的安全性が損なわれたと感じてしまうと、本音を語ってもらえなくなり、社内のコミュニケーションを改善する糸口を見つけることが余計に難しくなります。
逆に、心理的安全性が確保されている組織だという認識を持つことができれば、従業員は安心して本音を語ってもらいやすくなります。そうなれば、社内のコミュニケーションの課題を解決するための意見を、いろいろな立場の従業員に語ってもらえるようになるでしょう。それによって改善策をより具体的に検討することができ、エンゲージメント向上に近づきます。
どの年齢層の従業員であっても、心と体の健康を支援することによるエンゲージメント向上への効果は大きいものです。メンタルヘルスへの配慮や子育て支援と介護支援など、従業員本人の身体の健康のみならず、家族の心と体の状態が従業員本人の精神的なストレスとなるケースは珍しくありません。
従業員のエンゲージメントを高めるには、一人ひとりの家庭の事情にも配慮が必要です。企業が従業員本人だけでなく家族の個別事情にも耳を傾け、休職や退職をせずに落ち着いた精神状態で仕事を続けられるように、企業が支援できることを丁寧に伝えましょう。
従業員が健康面や家族のことで悩んでいるときこそ、心理的安全性が担保された組織であることが大切で、その上で様々な支援を得られることを実感できれば、従業員のエンゲージメントの向上に貢献するはずです。
エンゲージメントの向上に取り組む企業の参考事例を2つご紹介します。
この企業では「日本一の品質を目指す」というビジョンを掲げ、エンゲージメント向上のために、以下のような取り組みを行っています。
・新型コロナ感染症対策と事業継続の両立を実現し、多様な働き方と残業時間削減の推進のため、現場作業以外の業務(社内のコミュニケーションと業務報告など)のオンライン化に必要なタブレット端末を社員に支給。
・モチベーションおよびエンゲージメント向上のため、上司から一方的に評価されるのではなく、望ましい行動を自発的に起こすことで評価を上げられる制度を構築。さらに、それを従業員の意見を取り入れながら改善していくことを社長自ら社内に発信し、推進中。
この企業のエンゲージメント向上の取り組みは進行中ですが、トップダウンの評価制度ではなく、従業員の主体性を尊重する制度にしたいという社長の想いが伝わりつつあり、それにはこの組織の根底に心理的安全性があるからと考えられます。
Sansanは「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げ、印象的なテレビコマーシャルなどで有名になった企業ですが、従業員のエンゲージメント向上の取り組みがユニークなネーミングでわかりやすい社内制度としてホームページに紹介されています。
例えば、この企業には以下のような社内制度があります。
・Know Me ・H2O ・イエーイ ・どにーちょ ・OYACO |
社内制度にそれぞれユニークなネーミングをすることにより、堅苦しい制度ではなく、従業員のかゆいところに手が届くようなちょっと嬉しい制度であることが感じられ、まさにエンゲージメントの向上を目指した取り組みの好例といえるでしょう。
従業員には一人ひとり個性があり、仕事観も人生観もそれぞれ異なります。そうであれば、一人ひとりのエンゲージメントを高める方法もおのずと十人十色ということになります。
そして、同じ一人の従業員でも、年を重ねればその人を取り巻く仕事環境も考え方も変化するため、エンゲージメントが高まる要因も変わってくることが十分考えられます。
したがって、企業の経営者にとっては、従業員のエンゲージメントを高める方法は常にアップデートする必要があるでしょう。
自社の従業員のエンゲージメントを高めるためのベストの方策をひとつ見つけようとするのではなく、多種多様な方策を集めるつもりで色々な策を試しながら、自社の従業員の一人ひとりのニーズに合うものを増やしていく姿勢を持つことが、結果的により多くの従業員のエンゲージメントを高めることにつながります。
紹介したエンゲージメントを高める方法のなかで、自社ですぐに試せそうなものがあれば、ぜひ実践して変化を実感していただけたらと思います。
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