目次

  1. 1.OODAループとは 読み方は「ウーダループ」
  2. 2.OODAループの4つのステップ
    1. ステップ1:観察(Observe)
    2. ステップ2:仮説構築(Orient)
    3. ステップ3:意思決定(Decide)
    4. ステップ4:実行(Act)
  3. 3.OODAループを事業に取り入れるメリット・デメリット
    1. (1)OODAループを事業に取り入れるメリット
    2. (2)OODAループを事業に取り入れるデメリット
  4. 3.OODAループとPDCAサイクルの違い
  5. 4.OODAループを活用した企業の具体例
    1. (1)整骨院の営業戦略におけるOODAループ活用例
    2. (2)居酒屋の経営時間におけるOODAループ活用例
  6. 5.不確実性が高いからこそフレームワーク選びが重要になる

 OODA(ウーダ)ループとは、変化が激しく先が読めない状況においても成果を出すべく編み出された、意思決定の方法です。OODAとは「観察(Observe)」「仮説構築(Orient)」「意思決定(Decide)」「実行(Act)」の頭文字をとったもので、OODAループではこの4つのステップを繰り返しながら課題解決を目指します。

 OODAループという考え方を生み出したのは、アメリカ空軍の大佐だったジョン・ボイド氏です。

 ジョン・ボイド氏は、現場の兵士が上司からの指示を待たず自らスピーディーに判断して対応するための考え方を用いて、戦闘機による戦闘の勝率を高めました。

 退役後、その時の経験をもとに研究を重ね、編み出された意思決定の方法が、OODAループです。OODAループは、効果の高さはもちろん、汎用性もあることから、現在、多くの企業で採用されています。

OODAループの手順、PDCAサイクルとの違い
OODAループの手順、PDCAサイクルとの違い(デザイン:増渕舞)

 OODAループを活用する際は、OODAの頭文字の由来となった「観察(Observe)」「仮説構築(Orient)」「意思決定(Decide)」「実行(Act)」を、この順番で繰り返していくことになります。具体的に説明していきます。

 OODAループの最初のステップは、「観察(Observe)」から始まります。“観察”というと“見る”というイメージが強いかもしれませんが、調査や情報収集といった意味合いが強いです。

 実際、OODAループの「観察(Observe)」では、市場や顧客はもちろん、競合他社について調査・情報収集をします。

 調査員の経験を基にして常識にとらわれることなく、生のデータを収集することが、観察(Observe)の重要なポイントです。

【観察(Observe)の一例】
新発売の鶏ささみ梅乗せ串は、発売日の今日に100本売れた。先月の新商品だった鶏ささみ炙りチーズ串は1日平均にすると300本売れていた。

 OODAループの2番目のステップは、「仮説構築(Orient)」です。最初のステップの観察(Observe)によって得られた情報に、調査員のもつ経験やその経験から生まれたアイデアなどを加え、総合的に分析し、仮説を構築します。

 どのような順序で行動すべきなのか、成功につながる手段はどれなのかを複数検討し、その中から実行するプランを選ぶのです。

 ここで生み出された仮説は最終的な行動に直結するので、OODAループの中で最も重要なステップとも言われています。

 OODAループの仮説構築(Orient)で大事なポイントは、以下の2つです。

・他者の判断の誤りに気付くこと
・以前の判断の誤りに気付くこと

 OODAループは、「観察(Observe)」「仮説構築(Orient)」「意思決定(Decide)」「実行(Act)」のステップを1度やればよいというわけではありません。OODAループのステップを何度も繰り返すことで、目指すべき成果につながるのです。

 仮説構築(Orient)のたびに、他者の判断や以前の判断の誤りに気付くことができ、新たな仮説を立てて実行できるかどうかが、成果達成を左右します。

【仮説構築(Orient)の一例】
観察(Observe): 新発売の鶏ささみ梅乗せ串は、発売日の今日100本売れた。先月の新商品だった鶏ささみ炙りチーズ串は1日平均にすると300本売れていた。

仮説構築(Orient):“梅乗せ”というキーワードは客に刺さっていないのかもしれない。

 OODAループの3番目のステップは「意思決定(Decide)」です。意思決定(Decide)では、最後のステップである「実行(Act)」に向けて何をするのか決めます。

 場合によっては、複数の選択肢が出てくることもあるでしょう。その時には、実行(Act)しようとしている内容と、観察(Observe)で得られた生のデータが現状を本質的にとらえているのか、また、実行(Act)しようとしている内容がこれからの状況変化に対応できるのか、しっかり見極めることが必要です。

【意思決定(Decide)の一例】
観察(Observe): 新発売の鶏ささみ梅乗せ串は、発売日の今日100本売れた。先月の新商品だった鶏ささみ炙りチーズ串は1日平均にすると300本売れていた。

仮説構築(Orient):“梅乗せ”というキーワードは客に刺さっていないのかもしれない。

意思決定(Decide):こだわりの梅を使っていることもあり、味には自信がある。一度食べてもらえればリピートしてもらえるだけのおいしさなので、商品名と串を出す際の皿を変えてみよう。

 OODAループの最後のステップは、「実行(Act)」です。OODAループの3つのステップで決めてきたことを実行に移します。

 ただし、ただ実行すればよいというわけではありません。

 OODAループは何度も繰り返すことで成果に繋がります。4ステップ目の実行(Act)はOODAループの終わりであり、次のOODAループの観察(Observe)への導入にもなり得ます。

【実行(Act)の一例】
観察(Observe): 新発売の鶏ささみ梅乗せ串は、発売日の今日100本売れた。先月の新商品だった鶏ささみ炙りチーズ串は1日平均にすると300本売れていた。

仮説構築(Orient):“梅乗せ”というキーワードは客に刺さっていないのかもしれない。

意思決定(Decide):こだわりの梅を使っていることもあり、味には自信がある。一度食べてもらえればリピートしてもらえるだけの美味しさなので、商品名と串を出す際の皿を変えてみよう。

実行(Act):商品名と串を出す際の皿を変える。

 OODAループのメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

メリット デメリット
問題にすぐに対応できる 個人の裁量が大きくなるため統率が難しくなる
緊急事態やトラブルに対応しやすい 業務改善には適していない
主体的に動けるようになる 失敗するリスクも考慮しなければならない

 現場において、担当者が迅速かつ柔軟な対応を求められることが少なくありません。事業の中でOODAループを取り入れることで、問題が発生した場合にすぐに対応できることがメリットとして挙げられます。上司の指示を仰がなくても問題解決に向けた意思決定ができるため、スムーズに業務を進められるようになるでしょう。

 さらに、緊急時やトラブルが起きた場合でもOODAループにより、現場の状況に応じた行動をとりやすくなります。それにより、業務を滞らせることも少なくなり、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。

 また、OODAループは大人数で取り組むものではありません。個人やチームといった小規模な人数で行動していくことになります。OODAループのサイクルを回し続けることで、従業員一人ひとりが責任を持って主体的に動けるようになり、生産性の向上も見込めるでしょう。

 意思決定の方法として優れている印象のあるOODAループですが、事業に取り入れるうえで、デメリットも考慮しなければなりません。

 OODAループは、個人がある程度の裁量を持って意思決定をすることができます。そのため、関係者間で全体の方向性をすり合わせておかないと統率が取れなくなることがデメリットです。OODAループの手順を適切に踏むことはもちろん、「仮説構築(Orient)」の時点でしっかり情報整理ができていれば、全体の方向性がすり合わないという事態は避けられるでしょう。

 そして、OODAループは迅速な意思決定を生み出す方法であるため、現場の状況に合わせた素早い判断によって必ずしも最適な結果を得られるとは限りません。失敗するリスクもある程度考慮することが必要です。

 また、OODAループは「問題が発生している」という状況を受けて、最初のステップが始まります。そのため、大きな問題がなく、作業の効率化や品質の向上化といった業務改善をしたいというだけなら、OODAループは不向きです。

 業務改善したい工程が明確になっているなら、PDCAサイクルを使うとよいでしょう。

 PDCAサイクルとは、多くの企業が業務改善のために活用しているフレームワークです。「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の順にサイクルを回していきますが、それは一方向です。

 もともとは工場の生産性を向上させるために作られたフレームワークだということもあり、PDCAサイクルは改善が目的です。

 一方、OODAループは状況に応じた適切な行動を決めることが目的です。文字通りループしているので、必要な場合には途中で前のステップに戻ってループを再開してもよいのです。

 OODAループとPDCAサイクルとでは、得意分野が異なります。両方の違いを理解したうえで使い分けてみてください。

 ここでは、実際にOODAループを活用した企業の具体的な実例を2つ紹介します。

 筆者の支援しているA整骨院には、ライバル視しているB整骨院があります。このB整骨院が新しく別の地域に分院を開設することになったのです。

 この場合のOODAループの1巡目は、以下のようなものでした。

観察(Observe):B整骨院が分院をつくるという情報を入手した。

仮説構築(Orient):分院開設に人員を割くことになるので、B整骨院そのものの人手が足らなくなると予想。A整骨院が営業を積極化させるチャンスではないかと考えた。

意思決定(Decide):A整骨院とB整骨院の商圏に営業を強化することを決める。

実行(Act):チラシのポスト投函、新規客へのお試しキャンペーンを実施。

 筆者の支援しているC居酒屋は深夜1時まで営業していますが、直近の2年間は23時を超えると客が来店しないという傾向が続いていたのです。

 この場合のOODAループの1巡目は次のようなものでした。

観察(Observe):深夜1時まで営業しているが、直近の2年間は23時を超えると客が来店しない傾向が続いている。

仮説構築(Orient):営業時間を短縮することで人件費を抑えられ、利益率が伸びるのではないかと考えた。

意思決定(Decide):店の営業時間を23時までに変更することを決める。

実行(Act):営業時間を実際に変更。

 OODAループは、変化が激しく先の読みにくい現代において、“今あるもので判断して実行する”ために必要不可欠な意思決定の方法です。

 まずは、PDCAサイクルと使い分けながら、OODAループの1巡目を回し始めることを検討してみてください。