目次

  1. 1988年創業「漫画広告のパイオニア」
  2. 「子どもには継がせない」父は公言
  3. 想定外の入社の誘いに戸惑いも
  4. 社員と話して気づいた3つの課題
  5. コロナ禍で社長就任 評価制度も改革
  6. 会社の変化が結実 売上は10~15%増へ
  7. 社員が仕事で得る充実感を高めるには

 トレンド・プロは1988年創業。今では「漫画広告のパイオニア」と呼ばれます。しかし、寛之さんの父で創業者の岡崎充さん(67)はそれまで、ラーメン屋やコーヒー豆の販売など様々な事業に挑戦したものの、うまくいかなかったそうです。

 新たな事業アイデアを練っていたところ、かつて働いていたヤマハ発動機での経験を思い出します。社内で営業企画のプレゼンをした時、役員が居眠りをしていたのです。どうにか目を引きたいと考えたのが、ストーリー仕立ての絵コンテでした。知り合いに頼んで漫画を描いてもらったところ、とても好評だったといいます。

 1980年代半ばごろ、漫画広告といえば、通信教育講座「進研ゼミ」のダイレクトメールくらいだったといいます。漫画広告が専門の会社や漫画家もなかったようです。そこで充さんは漫画広告に特化した会社を作ろうと考えました。

トレンド・プロの会議室。社員同士で漫画の企画を話し合ったり、漫画制作のための顧客への取材をしたりする(トレンド・プロ提供)

 ビジネスモデルはこうでした。まず、企業から「文章を漫画にしてほしい」という依頼があります。次に、トレンド・プロが漫画の企画を練り、契約する漫画家に作画を頼みます。完成した漫画を企業側に納品します。トレンド・プロは、漫画の制作費を企業から受け取ります。

 漫画家を募ってみると、予想を上回る数の応募がありました。興味を持つ企業も次第に増え、漫画広告の制作が軌道に乗りました。

 具体的にはどんな制作事例があるのでしょうか。2009年に始まった裁判員制度について、国民の不安解消を目的としたQ&A形式の漫画冊子は、240万部以上が印刷されたそうです。また、大手金融機関の口座開設について、新聞の全面広告で漫画を連載した際は、金融機関側から「今までで最も費用対効果が高い」と言われたといいます。

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