目次

  1. 電子交換所とは
  2. 不渡情報の共同利用も終了
  3. 電子交換所のメリット
  4. 電子交換所とでんさいネットとの違い
  5. 電子交換所利用時の注意点
    1. 手形・小切手の統一用紙が変更
    2. 手形・小切手の手数料が変更
    3. 資金化時限・引き落としが変更
    4. 手形・小切手用紙の記入方法が変更

 全国179カ所の手形交換所が2022年11月2日、交換業務を廃止します。これまで紙の手形・小切手の振り出しがあった場合、全国の手形交換所を経由して人手で搬送していました。

 しかし、政府の閣議決定を受けて、金融界は2026年までに手形・小切手の電子化を目指すことになりました。この流れをうけて、電子交換所の運用が11月4日からスタートします。

手形交換所と電子交換所の違い(全国銀行協会の資料をもとに編集部作成)

 利用者からすると、手続き方法はほぼ変わらず、紙の手形・小切手を利用できます。変更されるのは、銀行間での手形の交換です。これまでは紙の手形を実際に搬送していましたが、電子交換所では原則すべての手形・小切手が電子データ化して交換します。紙の手形・小切手は支払い後、受取人の取引金融機関で3ヵ月保管されます。

 全国銀行協会は2019年、電子交換所のシステム委託先を日立製作所に決定しています。

 全国銀行協会の公式サイトによると、手形・小切手が不渡となり、取引停止処分となったときは、一定期間、取引ができなくなります。その際に、不渡情報は手形交換所に提供され、参加金融機関などで共同利用されてきたといいます。

 しかし、電子交換所には各地手形交換所の不渡情報が引き継がれません。そのため、不渡情報の開示請求をしても、一律「該当情報はありません」という回答となるといいます。

 電子交換所を利用することで、支払い側も受け取り側も、書面・押印・対面手続きの省力化や管理コストの削減などにつながります。全国銀行協会は、災害時に搬送できないリスクがなくなり、遠隔地の取引を短縮化できることもメリットに挙げています。

 手形の電子化とは別の金銭債権として「電子記録債権」があります。紙の手形を電子データ化するのではなく、そもそも紙を使わず、パソコンなどで電子債権記録機関の記録原簿へ電子記録します。

 でんさいネットとは、この電子記録債権の一つで、全国から多くの金融機関で利用できる「でんさい」を取り扱う機関です。印紙税は課税されない、手形と違って分割や割引ができるといったメリットがあり、全国銀行協会は「でんさい」などへの移行を勧めています。

 電子交換所に移行しても、紙の手形・小切手は使い続けられますが、手形を利用するときは以下の変更点には注意しましょう。

 金融機関によっては、QRコード付きの用紙に変更となる場合があります。

 電子交換所の設立により、取立手数料が変更になっている場合があります。取引先の金融機関で確認しておきましょう。たとえば、みずほ銀行の改訂前の手数料は次の通りです。

区分 手数料
みずほ銀行同一支店内・同一手形交換所内・相互乗り入れしている手形交換所内 880円
みずほ銀行本支店が所在する手形交換所内宛 990円
みずほ銀行本支店が所在しない手形交換所内宛 1110円
至急扱い 1210円

 改定後には以下の手数料となります。

区分 手数料
電子交換所参加 880円
電子交換所不参加 1210円

 支払場所が遠隔地の手形・小切手の一部は、これまでよりも資金化時限が早まる場合があります。また、原則は一律、早朝の引き落としとなります。

 電子交換所では、手形・小切手を電子データ化するにあたり、券面の情報を正しく読み取るために、注意事項があります。詳しくは取引先の金融機関で確認してください。

 たとえば、三菱UFJ銀行の公式サイトでは、次のような注意点が書かれています。

アラビア数字(算用数字)で記入する場合

 チェックライターを使用してください。

 金額の頭には「¥」を、その終わりには「※」、「★」などの終止符号を、さらに3桁ごとに「,」を印字してください。

漢数字で記入する場合

 規定の漢数字以外読み取れません。崩し字は使用せず、楷書で丁寧に記入してください。金額の頭には「金」を、その終わりには「円」、または「円也」を記入してください。

訂正方法

 金額を誤記した場合は、新しい手形・小切手用紙を使用してください。金額以外の誤記は、訂正個所に届け印を押してください。訂正の記入やなつ印を、金額欄、銀行名、QRコード欄に重ねないでください。

禁止事項

 券面へのメモ書きはしないでください。文字による複記、補記はしないでください。