目次

  1. 前田染工「OEMでつきあえるメーカーを探したい」
  2. 清永さん「出会いたい相手を特定するところから」
  3. 来場者の多い展示会を狙うべきか
  4. シマワ「アパレルやセレクトショップ向けに販路開拓したい」
  5. 展示会の主催者に問い合わせてみよう
  6. ユーザーインタビューも有効
  7. 自社に合う展示会を見つける3つの手順
  8. 展示会一覧表の見つけ方

 和雑貨の企画、商品デザイン、製造までを一貫で取り扱う「前田染工」は1961年創業です。観光土産店やキャラクターグッズメーカーに風呂敷・手ぬぐい・がま口・巾着・ポーチなどの和雑貨をOEMで供給してきました。

前田染工の工場にある量産特化型のプリント機「オートスクリーンプリント」(同社提供)

 「ギフトショーに何年か出ていると新規顧客が思うように取れない。かといってギフトショー以上に来場者のある展示会がない」という悩みを持つ3代目後継ぎの前田健太郎さんは新たなOEMでの取引を探すために展示会への出展を検討していました。

 この悩みに対し、清永さんは次のように回答します。

清永健一(きよなが・けんいち)展示会営業マーケティング代表取締役。中小企業診断士。展示会を活用した売上アップの技術を中小企業に伝える専門家。これまでに見た展示ブースは53万社を超える。NHKラジオで展示会の未来に言及するなど展示会業界活性化にも尽力。著書は『飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』ほか

 展示会の選定というのは、実は単純です。シンプルに「出会いたい相手が多数来場する展示会を選ぶ」と考えればよいのです。では、前田さんが出会いたい相手はどのような人でしょうか?

 「OEMメーカーを探している人」でしょうね。

 ただし、これでは少し抽象的すぎます。もう少し具体化しましょう。

 前田さんは、染色技術を活かした雑貨のOEM製造を受注したいのですから、出会いたい相手は、OMEメーカーを探している「雑貨、小物、アパレルのメーカー・商社のマーチャンダイザーや企画、プライベートブランド担当」ということになるのではないかと思います。

 このように出会いたい相手を具体的に特定できたら、次はGoogleなどWeb検索してみましょう。キーワードは、「展示会 OEM 雑貨 小物 アパレル マーチャンダイザー」としました。

 すると、「ファッションOEM EXPO」という展示会がヒットしました。来場者向け案内ページは、次のような紹介文があります。

「本展にはウェア、バッグ、シューズ、アクセサリーや、ファッション小物・雑貨におけるOEM/ODM企業や生産受託工場が出展。生産委託先の選定、PB商品の制作依頼をはじめ、オリジナルグッズ制作やノベルティ・記念品の発注を効率的にできます。ぜひご来場ください」

ファッションOEM 展示会概要

 前田さんの意図と合致しているようです。

ファッションOEM展示会のサイトの情報をもとに編集部作成

 前田さんは、さらにもう一つの条件として、来場者の多い展示会を探しています。

 清永さんはどのように考えたのでしょうか。

 「せっかく出展するのだからできるだけ来場者数の多い展示会に出展したいと考えるお気持ちはよくわかります。

 しかし、来場者数は目安でしかありません。自社が出会いたい相手とは異なる来場者が数多く居ても意味がありません。むしろ、逆に、その他大勢の来場者の中に埋もれてしまって、本当に出会いたい来場者と接触しにくい、ということになりかねません。

 単純に来場者数だけに注目するのではなく、自社が出会いたい人の数にこだわる方が成果につながりやすいとお考えになる方がよいでしょう」

 出会いたい人の数の調べ方は後段で説明します。

 油圧部品や精密部品製造を得意とする専門商社「シマワ」の島口棟伍さんは、スマートフォン用無電源スピーカー「oto」をギフトショーやロフトで展示してきました。

町工場プロダクツとして合同出展したシマワのブース(手前)。無電源スピーカー「oto」を展示している

 さらに販路を開拓するために新たな展示会に出展したいと考えています。具体的には感度の高いアパレルやセレクトショップと出会いたいというニーズがあるそうです。

 清永さんは「先ほどと同じようなやり方でWeb検索してみましょう」と回答し、以下のように続けました。

 「展示会 アパレル、セレクトショップ バイヤー」で検索すると、いくつかの記事が表示されました。上位表示された記事を読み込んでみると、アパレル、セレクトショップのバイヤーが来場する展示会としては、rooms(ルームス)、PLUG IN(プラグイン)やMONTAGE(モンタージュ)などの展示会があることがわかりました。

 これらの主催者に、出展を検討していることを伝え、相談してみるとよいでしょう。この時、展示会で出会いたい人のイメージを、たとえば「アパレルやセレクトショップの商品のマンネリに悩むチーフバイヤー」のように具体的に伝えることがポイントです。

 出会いたい人が実際に来場しているのか?来場しているとすると全来場者の何パーセントなのか?を聞いてみましょう。「せっかく出展するからには成果を出したいので教えてください」と伝えると、主催者も親身になって対応してくれると思います。

 また、別のアプローチも考えてみましょう。

 展示会出展商材のスマートフォン用無電源スピーカーを実際に購入し使っている人がいるはずです。実際に使ってくれているユーザーにインタビューし、どのようなシーンで使われているかを把握してみるのはいかがでしょうか。

 使われているシーンが、例えば「キャンプ場でたき火を見ながら仲間と語り合う時」だったなら、キャンプ&グランピングEXPOに出展するのです。

 ユーザーにインタビューした内容は、顧客の声チラシに活用できますから、一石二鳥のやり方とも言えますね。ぜひ、実践してみてください。

清永さんの展示会専用名刺

 清永さんは2社の事例をもとに、自社に合う展示会を見つける方法を3つの手順に整理しました。

  1. 展示会で出会いたい人を明確にし、出会いたい人が数多く来場する展示会を探す
  2. 「展示会+出会いたい人の属性(OEM 雑貨 マーチャンダイザーなど)」で、Webでキーワード検索する。自社商材を実際に使っているユーザーにインタビューし、「展示会+活用シーン(例えば、『キャンプ』など)」で、キーワード検索するのも有効
  3. 自社の目的に合いそうな展示会が見つかったら主催者に連絡し、自社が出会いたい相手がどの程度来場するかを確認する

 島口さんから展示会を探す上で「展示会一覧表欲しいですね」という声もありました。

 展示会出展は、年間の売上計画、営業計画と連動させて検討すべきものです。展示会一覧表があると、計画づくりに便利かもしれません。

 清永さんは「展示会一覧表は、月別、業種別に展示会が列挙されているピー・オー・ピーの『見本市展示会総合ハンドブック』(9900円)がおすすめです。毎年12月に発売されます」と紹介します。

 また、清永さんも自社の「展示会営業マーケティング」の公式サイトで、月別展示会スケジュールを随時更新しています。

 「ただし、やみくもに一覧表から探すより、まずは3つの手順で、当たりをつけてから展示会選定を行う方が効率的だと思います。自社に合う展示会を見つけて成果を上げることを応援しています」