目次

  1. ダイレクトリクルーティングとは
  2. ダイレクトリクルーティングのメリット
    1. 転職を考えていない人も候補者に 幅広い層へアプローチ
    2. 入社後のミスマッチが比較的少ない
  3. ダイレクトリクルーティング導入前に知っておきたい注意点
    1. 選考までのプロセスが多く 採用までに時間がかかる
    2. 採用担当者への業務負担が重く 専任者が必要になる
  4. 自社でダイレクトリクルーティングに取り組むべきか否かの基準
  5. 気になる費用は? 従来型の採用方法との比較
  6. サービス選定のポイントは“自社の条件に合う人材数”
  7. ダイレクトリクルーティング 採用活動のコツ
    1. プロフィール情報が充実していない求職者にもアプローチ
    2. スカウトメッセージの工夫
    3. 無理な説得は禁物 入社後のミスマッチを生むことも
  8. ダイレクトリクルーティングは長期戦

 ダイレクトリクルーティングとは、たとえば「LinkedIn」などのサービスを利用して、企業側が求職者へ直接アプローチし、応募を促す採用活動の手法です。

 人材紹介会社や求人サイトを通して行われる従来型の採用活動が応募を「待つ」スタイルであるのに対し、「攻め」の採用とも呼ばれます。

従来の採用方法とダイレクトリクルーティングの違い

 WealthParkはより自社に適した人材を採用したいと考え、2019年9月ごろからダイレクトリクルーティングに力を入れています。

 採用マネージャーの加賀谷優希さんによると、社内の採用担当者が個々の求職者と直接やり取りをしながら採用活動を進める過程で、自社にダイレクトリクルーティングのノウハウが蓄積し、採用力が徐々に向上し、今ではダイレクトリクルーティングでの採用率が50%を超えるほど、会社として重視する採用方法になりました。

WealthPark採用マネージャー・加賀谷優希さん。新卒で大手生命保険会社に入社し、保険商品の販売に携わった後、海外留学斡旋会社に転職。留学カウンセラーとして、主に留学プランの販促やフォローアップを行う。続いて、ベトナムに本社を構える転職エージェントにRA/CAを兼務するメンバーとして入社し、ベトナムに移住。後半はプレイングマネージャーとして、20人のメンバーのマネジメントと新規マーケットの開拓を担当。2019年に帰国し「WealthPark」に人事担当として参画。ダイレクトリクルーティングをゼロから立ち上げ、2021年にWealthParkが「LinkedIn Top Startups 2021」に選出

 そこで、ダイレクトリクルーティングを導入するメリットを、加賀谷さんに聞きました。

 最大のメリットは、求職者層の幅を積極的に広げることができる点です。たとえば、自社の存在を知らない人にも企業側からアプローチすることで、応募を検討してもらえます。  

 WealthParkでは、現在は転職を希望していない“転職潜在層”にも、自社の求める人材であれば、積極的にアプローチをしています。そうすることで、転職を考え始める求職者も少なくないといいます。

 また、求人広告のように募集要項をあらかじめ記載する必要がないため、元々想定していた募集要項に完全には当てはまらない人でも、経歴などを総合的に見てそのポジションに相応しい人材か否かを柔軟に判断し、幅広くアプローチできます。その人材に合わせて業務内容や役割をカスタマイズすれば、より興味を持ってもらいやすくなります。

 また、面接に至る前に採用担当者が求職者への個別説明をすることで、自社や自社での業務内容について求職者側の理解を深めることができます。気軽に質問できる機会も多く、入社後の働き方をイメージしやすいため、勤務を開始してからミスマッチに気づくケースを減らせます。

 一方で、導入前に伝えておきたい注意点もあるそうです。

 ダイレクトリクルーティングによる採用活動では、まず各サービスの提供するデータベース上で、自社が求める人材を選出し、対象者にスカウトメールを送ります。そこで対象者が同意した場合にのみ、実際の選考へと進みます。加賀谷さんの経験上、スムーズに進んだ場合でも、人材探しから実際の選考プロセスに進むまでに約1ヵ月間かかるといいます。

 従来型の採用活動に比べて選考までのステップが多く、一人ひとりの求職者に時間と手間をかけて向き合う必要があるため、採用担当者にかかる業務負担は重くなります。

 担当者が採用活動以外の業務も兼任している場合には、業務量がこなせずに、思わしい成果が望めない可能性があります。導入するには、採用担当専任者が必要になることを念頭に入れておきましょう。

 従業員数の少ない会社では、一人の新人が既存社員に与える影響がより大きくなります。たとえば、スキルや経験だけでなく、人柄も含めてじっくりと見極めてから人材を採用したい中小企業には、ダイレクトリクルーティングが適していると言えます。

 逆に、採用を急いでいる場合や、一度に多くの人材を採用したい場合には適しません。

 次にダイレクトリクルーティングにかかる採用コストについて聞きました。

求人広告

・マイナビ
・リクナビ
・エン転職など

求人につき20万円〜180万円など
※先行投資型が一般的

出典:リクルート

人材紹介

・リクルートエージェント
・エン エージェント
・dodaなど

導入費10万円+ 内定につき成功報酬:内定者の理論年収の30%など ※成果報酬型が一般的

出典:エン転職

ダイレクトリクルーティング

・LinkedIn
・ビズリーチ
・Green
・doda Recruiters
・Wantedlyなど

初期費用10万円+サービス利用料月額5万円+
内定につき成功報酬:内定者の理論年収の15%~など ※成果報酬型、先行投資型、その両方の組み合わせなどサービスによってプランは多種多様

出典:dodaキャンパス 

 求人広告は内定の有無に関わらず、あらかじめ定めた料金を支払う“先行投資型”が一般的です。一方で人材紹介は、初期費用などの先行投資額は求人広告よりも低く、その分採用が決定した場合に高額なコミッションが発生する“成功報酬型”が主流です。

 ダイレクトリクルーティングサービスは、“先行投資型”と“成果報酬型”のハイブリットのようなイメージで、初期費用・サービス利用料などの先行投資額は求人広告より低く、成功報酬は人材紹介より低く抑えられる傾向にあります。

 「サービスに対して支払う金額だけを考えれば、ダイレクトリクルーティングはコストパフォーマンスが良いと言えます。しかしながら、社内に採用担当の専任者を置く必要がありますので、その雇用コストも含め、総合的に見て判断しましょう」

 WealthParkでは現在、主にLinkedInを活用しています。「圧倒的なユーザー数に加え、ビジネスSNSであるという特性上、ビジネス上での人との繋がりを大切にし、キャリアアップに関心の高いユーザーが多いという点で、自社の社風と相性が良いと感じています。それぞれの社風も考慮してサービスを選ぶのが良いと思います」

「WealthPark」の採用マネージャー・加賀谷優希さん

 実際にダイレクトリクルーティングを導入する場合、自社に合ったサービスを選ぶために、どのような点に着目すると良いのでしょうか。

 「各社に問い合わせをすると、サービスの一般的な特徴の説明を受けることがほとんどです。ここで一歩踏み込んで、そのサービスの保有するデータベースの中で、実際に何人が自社の求める条件とマッチするのかを質問しましょう。業界経験年数、保有資格、語学力、給料、勤務地など、募集ポジションに想定している条件を具体的に提示し、それにマッチする人数を確認することで、その数が重要な指標となります。弊社では、一つのサービスにはこだわらず、組織にとって最適なサービスを常に模索しています 」

 ダイレクトリクルーティングで良い成果を出すためには、採用プロセスにおいてどのような工夫をすると良いのでしょうか。加賀谷さんは、WealthParkで心がけていることをもとに次の3つのポイントで説明します。

 採用担当者は、データベース上で求職者の職歴や資格などのプロフィールを閲覧し、その人が自社の求める人材かどうかを判断します。

 「優秀な人材であっても、転職にそれほど積極的でない場合、情報をしっかりとアップデートしていないことがあります。自社の求める人材であるかどうか不確定な場合でも、可能性を感じれば、まずはアプローチしてみる事をおすすめします。メッセージを送ることで、プロフィールには記載されていない情報を知ることができ、そこから素晴らしいご縁が生まれることもあります」

 アプローチしたい人材を見つけた際、最初に送るのがスカウトメッセージです。

目に留まるタイトルで開封を促す

 魅力的な経歴を持つ人ほど、多くの企業からスカウトメッセージを受け取っています。そのため、まずはメッセージを開封してもらうための工夫が必要です。その人にとって、何か魅力になるのかを想像し、たとえば「社長面談確約」「重要マネジメントポジション」など、具体的な訴求ポイントを入れたタイトルを記載します。

パーソナライズされたメッセージが必須

 続いてメッセージ本文について、加賀谷さんは、誰にでも当てはまるテンプレートは使わない方がよいでしょうと指摘します。

 「求職者ごとにパーソナライズした文章を送りましょう。何故その人が自社にマッチすると考えたのかを具体的に伝えた上で、入社した場合のメリットや、自社についての説明を添えると好意的に受け取ってもらいやすく、返信確率が高くなります」

 一方で、加賀谷さんは、どれほど採用したい人材であったとしても、入社してもらうための説得はしないと言います。

 「ダイレクトリクルーティングでは求職者とのコミュニケーションが密になる分、入社してもらうために、懸命な説得をしてしまいがちですが、この点には注意が必要です。まず、求職者は自社のお客さまにもなり得ることを、忘れてはいけません。無理な説得は企業イメージを下げることになりかねませんので避けましょう。また、あまり気が進まないのに説得によって入社を決めた場合、入社後にミスマッチを感じて退職しまう可能性もあります。採用担当者は会社と求職者の間で中立的な立場を心がけ、求職者にとってのメリットとなる点はもちろん、デメリットも伝えた上で、求職者自身に入社の意思を固めてもらうよう意識しましょう」

 ダイレクトリクルーティングを導入する場合、経営者はどのような心構えを持つと良いのでしょう。

 「アプローチしてもすぐに反応があるとは限りません。例えば、2年前にスカウトメッセージを送った人から、ある日突然返信が届き、採用に繋がることもあります。すぐに成果に繋がらなくとも、我慢強く継続し、種まきをしていくことが重要です。経営者がその点を理解し、長い目で採用活動を見守る事ができるか否かが、成功の鍵を握ります」