目次

  1. 1.商品開発とは
  2. 2.商品開発に必要なこと 3つのポイント
    1. ポイント1.  商品開発の目的を明確にする
    2. ポイント2. 企画は現場に足を運ぶ、生の声を聞く
    3. ポイント3. 顧客視点で考える
  3. 3.商品開発の進め方 5つのプロセスで紹介
    1. ステップ1. 目的・条件・ゴールの確認と設定
    2. ステップ2. アイデアの発想・企画構想
    3. ステップ3. 具体企画・計画策定
    4. ステップ4. 開発・導入準備
    5. ステップ5. 販売開始・事業スタート
  4. 4.商品開発のあとは? 事業を伸ばすために必要なこと3つ
    1. (1)販売拡大を進める
    2. (2)導入した商品を改善していく
    3. (3)次の商品開発の計画をたてる
  5. 5.顧客の喜びや社会貢献につながる商品開発を

 商品開発とは、端的に言うと“商いのための品を開発”することです。形のあるモノの開発はもちろんですが、形のないサービスの開発も商品開発に含めることがあります。そして、ビジネスであるからには、ただ商品を開発するだけではなく、顧客に購入してもらい、かつ利益が確保できるようにすることが大切です。

 商品開発は大きく3つのレベルに分けることができます。

  1. 新規事業として、新しい商品を開発する
  2. 既存事業において、新しいカテゴリーとなる商品を開発する
  3. 既存事業において、後継となる商品や派生商品を開発する

 また販売先として大きく分け、一般消費者向け(B2C)と企業向け(B2B)に分類されることがよくあります。

  商品開発とあわせてよく使われるのが商品企画という言葉です。商品企画は、商品の方向性を決め、アイデアを出し、具体的にどのような商品をつくるかを決定するまでの段階で、商品開発の一部で重要なプロセスです。商品開発は、商品企画のプロセスを含み、企画された商品を生産し、実際に販売開始するところまでを指します。

商品開発を成功させるポイントと手順
商品開発を成功させるポイントと手順(デザイン:吉田咲雪)

 やみくもに商品開発に着手しても、開発の途中で挫折してしまったり、せっかく労力とコストをかけて開発したのに売れない商品になってしまったりすることが往々にしてあります。商品開発を進める上で最も大切なポイントを3つお伝えします。

 目的無しでは、何のために商品を開発するのかゴールがぼやけてしまいます。商品開発の目的を2つの視点でしっかり定義しましょう。

①顧客視点での目的
 商品が顧客のどのような利益につながるのかを明確にします。さらに新規事業開発においては、顧客だけでなく、その事業がどのように社会に貢献できるかを明確にしましょう。

②自社視点での目的
 自社として、何のために新しい商品開発を行うのかを定義します。

 例えば、
 ・新たな柱となる事業を立ち上げたい
 ・既存事業において赤字の状態を黒字にしたい
 ・下請けから脱却し、自社ブランドのビジネスを開始したい
 など、企業によって商品開発の目的はさまざまです。

 プロジェクトによっては商品開発自体が目的になっていることがあります。 商品開発は目的ではなくて手段のはずです。 何のために商品開発するのか、目的をしっかり定めて、商品開発の検討に着手するようにしましょう。

 商品開発、特に商品企画の段階では、市場調査と仮説検証が欠かせません。

 市場調査は、インターネットや公開されている資料で調べるのも有効な方法ですが、それらはあくまで二次情報です。最終的には自分たちで想定している現場に足を運び、自分たちの目で確かめることが大切です。そして、想定ユーザーの生の声を聞いてください。現場やインタビューの行間からヒントを嗅ぎとり、そこからアイデアへとつなげていきます。

 仮説検証においても、ユーザーインタビューや実際に使ってもらうなど、実際の生の声をたくさんとるようにしましょう。

 これらをしっかり実践できているチームは、間違いなくよい商品を生み出しています。

 「商品をつくったはいいけど、全く売れない」というのは、本当によく聞く声です。

 自分たちがつくりたい商品を開発しても、多くの場合、顧客に購入してもらえず利益にもつながりません。

 これは顧客視点が抜けている証拠です。

  • どのようにしたら顧客に興味をもってもらえるか?
  • どのようにしたら競合商品ではなく自社の商品を選んでもらえるか?

 使う言葉も大切です。

 「売れる商品」ではなく、「選んでいただける商品」「買っていただける商品」です。まずは言葉を顧客視点に変えていきましょう。

 実際に商品開発を進め方を、5つのプロセスで見ていきます。

 手順と記していますが、実際には行ったり来たりが発生します。その行ったり来たりを最小限にするために各プロセスを可能な限り確実にしておきます。

 また、先のプロセスも含めて全体としてどのようなことを整理していくかも最初に見ておくのも大切です。

 一方で、商品開発はスピードも命です。確実性とスピードのバランスをとりながら進めます。

 商品開発のプロセス全体を図で示すとこのようになります。

商品開発の主な流れ
商品開発の主な流れ・筆者作成

 ひとつずつ、順に詳しく見ていきましょう。

 まずは以下の項目を確認します。与えられていない場合は、自分たちで設定します。

  • 商品開発の目的:何のために商品開発をするのか
    -顧客視点での目的
    -自社視点での目的
  • いつまでにどのような目標(ゴール)をめざすのか
  • ステークホルダー(利害関係者)からの期待や条件は何か
  • どのような方向性の商品を開発するのか
  • どのような体制でどのように進めるのか
  • 誰が最終決定するのか

 これらの問いに対する答えを、商品企画書や企画構想書などと題した文書にわかりやすくまとめ、どんどん資料化していきましょう。書き出すことでいろいろなことが明確になっていきます。

 上記の問いに一度にすべて答えられないときは、まずは書けるところだけ書いてみてください。また途中で変わっても構いません。

 ただし、明確であることが大切です。これらの項目がはっきりしているほど、商品開発に軸ができブレが無くなります。迷ったとき、困ったときに戻る原点ができるわけです。

 条件や方向性が決まったら、具体的なアイデアを出していきます。アイデア発想には、ブレインストーミング(複数人で話し合いをしながら多くのアイデアを出す方法)などの手法を用いるとよいでしょう。まずは質より量を優先し、できるだけ多くのアイデアを出していきます。

 画期的なアイデアが一発で出ることはまずありません。また、すぐに発想できるアイデアは他社もすでに考えています。

 まずは小さなアイデアの種をたくさん発想し、そこに自社の強みや独自のノウハウなどをうまく組み合わせて、具体的に使えそうなアイデアへ育てていきます。

 そして、使えそうなアイデアを2~3に絞ったら、それらに対して以下の確認や作業を行います。

  • 具体的な商品の形態、価格案
  • 顧客ベネフィットの定義
  • 商品コンセプトの定義
  • イメージスケッチ、モックアップ(見た目のみを実物に似せた試作品)
  • 競合調査、差異化の定義
  • マネタイズ、ビジネスモデル
  • 市場規模、売上数量・金額試算
  • 目標スケジュール など

 この段階では、案やイメージレベルでのラフな整理で構いません。また、イメージスケッチやモックアップなどできるだけ他の人がイメージできるものをつくりましょう。

 上記の項目にある商品コンセプトは、もっとも重要な項目です。以下のように整理するとよいでしょう。

  • 誰の
  • どのような困りごと/課題/要求を
  • どのように解決するのか
  • なぜ自社なのか
  • 他との違いは何か

 具体案とコンセプトが整理できたら、これらを仮説検証を繰り返していきます。

 仮説検証には2つの要素があります。

①コンセプト検証(PoC:Proof of Concept)
 設定したコンセプトが想定顧客に受け入れられるか
 競合に対して勝てるか

②ビジネス検証(PoB:Proof of Business)
 目標の売上げ規模を達成できそうか
 目標とした利益を確保できそうか

 コンセプトだけを検証して見切り発車してしまい、商品開発を進めてから赤字になってしまうことが発覚した、ということもあります。そうならないためにも、初期投資やコストの試算を行いビジネス検証を進めます。

 ただし、現実には完璧な仮説検証はほぼ不可能です。完璧な検証を求めるとそれだけ時間がかかります。多くの場合、他社も同じことを考えています。商品開発はスピードも大切。ここでも仮説検証の確実さとスピードのバランスを考えて進めていきます。

 仮説検証がある程度進み、勝算が見えてきたら、商品化を見据えた具体的な企画へとまとめ、詳細な計画を立てていきます。

 また、マーケティング、営業、技術開発、製造/工場など、関係する部署があれば、協力を得ながら詳細を整理します。

  • 最終商品形態、最終価格案
  • 販売ルート、商物流(新規開拓が必要な場合)
  • アフターサポートプラン
  • 社内/社外体制
  • 売上目標1~3年
  • 初期投資、コスト試算
  • 利益目標、投資回収計画
  • 詳細スケジュール
  • 想定リスク洗い出し、撤退プラン   など

 プロトタイプや試作など、人・モノ・金をかけていきます。

 あわせて、どのように広告宣伝、プロモーションしていくかのマーケティング戦略、リアルな店舗販売やネット販売などどのように販売を推進していくかの販売戦略なども整理します。

 さらに、自社だけでなく外部のパートナーとの協業が必要な場合や、候補となる見込み顧客が存在する場合は、機密事項に考慮しながら、早い段階から協力をあおぎ巻き込んでいきましょう。

 ここまでが商品企画のプロセスになります。図にするとこのようなイメージです。

商品企画のプロセス
商品企画のプロセス・筆者作成

 サービス事業などで初期投資がそれほどかからない場合は、この段階から最小のサービスや商品を開発し、実際に販売してみたり、テスト販売したりしていくことも有効です。リーンスタートと言われる手法です。

 商品企画が完了したら、量産に向けた開発や生産準備に入ります。企画した通りに設計や生産が進んでいるか、品質に問題はないかなどを確認していきます。

 当然、企画した通りに実現できないことも多々発生します。その場合は顧客視点と自社視点を考慮し、最適な解を見つけていきます。迷ったときはまずは顧客視点をとるのが鉄則です。

 並行して、プロモーションや販売の準備にも取り掛かります。販売店や代理店などが存在する場合は、この段階(あるいはもっと手前)から商品の紹介を始めることもあります。

 アフターサポートやメンテナンスも大切です。販売開始してからアフターサポートを想定していなかったためにトラブルが大きくなった、メンテナンスに思わぬ費用がかかってしまい事業継続を断念せざるを得なくなった、というケースは少なくありません。販売後に起きうるリスクやコストに対する準備を忘れないでください。

 商品の量産が始まり計画通り販売準備も整ったら、いよいよ販売開始です。販売開始されたら、購入してくれた顧客の声をヒアリングしましょう。

  • その商品を購入した理由
  • 使ってみた感想
  • 良かった点
  • 不満や要望
  • ほかに抱いている困りごと

 そして、できる限り実際に使っている場面を見せてもらいましょう。顧客の声や使用シーンのビデオや写真は次へのヒントになるだけでなく、プロモーションにも活用できます。

 また販売開始当初は、品質やその他のトラブルや課題が発生することも少なくありません。起こってほしくはないですが、ユーザーや販売店に迷惑をかけてしまうようなトラブルも起きないとは限りません。 そのようなときは誠意を持って最短で解決していくことで、逆に会社の信頼につながることもあります。

 最終的に販売が安定し軌道に乗ったら、商品開発のプロセスははれて終了です。事業拡大のために、次の商品開発の構想をスタートさせましょう。

 商品開発の終了は次のスタートでもあります。最後に、商品開発の後にすべき大切なポイントをお伝えします。事業拡大のために、気を緩めず活動してください。

 販売が安定した後は基本的に営業担当に業務が移りますが、商品開発チームとしてもさらに販売を拡大させるために、営業担当からの要望や協力依頼に対応していきます。 

 商品開発の想いや苦労話は、販路の開拓やプロモーションに有効な場合が多くあります。どこまで参画するかはバランスですが、営業担当と協力し販売拡大に努めましょう。 

 また、販売活動の現場ヒアリングから次の商品のヒントが見つかることも少なくありません。チャンスをみつけてどんどん現場に足を運んでください。

 必要に応じてになりますが、導入した商品の改善を行います。

 商品改善のポイントは大きく分けて2つです。

  • 機能追加、品質改善
    導入後、機能追加や改善をした方がよいと判断したときは、商品を改善していきます。品質面で問題が発覚した場合は特に早急な対応が必要です。この場合、そのままの商品として扱うのかマイナーチェンジとして別商品にするのかなど、販売店に迷惑がかからないように最適な方法で改善していきます。

  • コストダウン
    機能や品質ダウンにならない範囲で、コストを下げ、利益を確保していく努力はメーカーにとって継続的な必須事項です。

 商品は必ず陳腐化します。販売が好調であっても競合商品が現れ、急に販売が鈍化することも考えられます。新規事業として導入した1号機の売れ行きが順調でも、2号機の開発が遅れて事業継続を断念せざるを得なかったという例も多々あります。次の商品の開発準備を最適なタイミングで必ず行ってください。

 場合によっては、販売開始の前に次の商品の検討を開始することも少なくありません。商品のライフサイクルを計画し、最適なタイミングで次商品の検討をスタートさせます。 

 理想は、商品を単体で企画するのではなく、先々の商品計画も織り込んだ中期ロードマップを計画し、適宜アップデートしながら商品開発を推進することです。それによって、事業が安定して継続していきます。

 商品開発は、モノづくり企業にとって最も大切な取り組みです。お伝えした3つのポイントを押さえながら、5つの手順に沿って進めていくことで、失敗しない商品開発を進めることができます。ぜひ、自分たちで知恵を絞って、顧客に喜んでもらえる、そして社会貢献につながる魅力ある商品やサービスを開発してください。