目次

  1. 唯一無二のべっ甲商品を製造
  2. 職人たちにかわいがられて育つ
  3. 家業がピンチになった理由
  4. ドイツ人の言葉に心が動く
  5. 家業に入って立て直しを図る
  6. 衝突しても断行した業務改善
  7. 「耳を傾ける」直営店をオープン
  8. 顧客のアイデアが商品に
  9. コロナ禍で年商が4割減
  10. タイマイ養殖でべっ甲を次世代に

 独特なあめ色が美しいべっ甲製品は、熱帯の海に生息するタイマイというカメの甲羅を熱と水と圧力だけで張り合わせて作られます。石川べっ甲製作所は創業以来220年もの間、べっ甲製品の製造を担ってきました。

 7代目の石川さんも職人のひとりで、現在は8人の従業員と江戸べっ甲の技術を生かし、腕時計やネックレス、ピアスなど多彩な商品を生み出しています。2021年度の年商は8千万円です。

べっ甲製品は地道な職人技によって送り出されます(石川べっ甲製作所提供)

 べっ甲製品といえば、かんざしや帯留め、眼鏡が有名ですが、同社の主力商品は腕時計です。

 「腕時計だけで20種類以上ありますが、べっ甲の柄には一つとして同じものはないので、どれも唯一無二の品です。べっ甲は素材としても優秀で、身につけているうちに体温で曲がり、自然と体になじみます。天然素材のため金属アレルギーの心配もありません」

石川べっ甲製作所の主力商品である腕時計(同社提供)

 汗や水に弱いのがべっ甲の欠点でしたが、現在はコーティング技術が発達し、長時間の着用も問題ないそうです。「時計は眼鏡のように度数も関係ありません。男女問わず身につけられるので、お子さんやお孫さんに受け継ぐこともできます」

 情熱があふれる語り口に反し、石川さんは「(子供のころは)家業を継ぐ気は全くありませんでした」と笑います。

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