目次

  1. 賃上げとは
    1. 定期昇給(定昇)
    2. ベースアップ(ベア)
    3. 諸手当
  2. 中小企業向け賃上げ促進税制
  3. 事業再構築補助金、補助率・補助上限を引き上げ
  4. ものづくり補助金、補助上限を引き上げ
  5. 事業承継・引継ぎ補助金、補助上限を引き上げ
  6. 賃上げに役立つ助成金とは 補助金との違い
    1. 業務改善助成金、最低賃金引き上げのための助成拡充
    2. 働き方改革推進支援助成金とは 2023年は賃上げ加算を拡充
    3. キャリアアップ助成金、助成額を増額
    4. 特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)
    5. 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース<仮称>)の創設
    6. 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)の見直し
    7. 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の見直し

 厚生労働省によると、賃上げには、全常用労働者を対象とした定期昇給(定昇)、ベースアップ(ベア)、諸手当の改定が含まれます。

 毎年一定の時期を定めて、社内の昇給制度に従って行われる昇給のことです。

 賃金表(学歴、年齢、勤続年数、職務、職能などにより賃金がどのように定まっているか表にしたもの)の改定により賃金水準を引き上げることをいいます。

 下記に示した手当などを指します。時間外・休日手当及び深夜手当等の割増手当や慶弔手当等の特別手当は含まれません。

  • 能率手当・生産手当など…達成した労働の量的成果に応じて支給される
  • 役付手当・特殊勤務手当など…職制上の地位、特殊な作業環境にいる者に支給される
  • 技能手当・技術手当など…特定の技能、資格などを有する者に対し支給される
  • 家族手当・扶養手当など…扶養家族の有無、人数に応じて支給される
  • 通勤手当・住宅手当など…通勤費、住宅費の補助として支給される

 中小企業庁の公式サイトによると、賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業者などが、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 雇用者全体の給与等支給額を前年度比で1.5%以上増加させた場合は15%税額控除、2.5%以上増加させた場合は30%税額控除できます。このほか、教育訓練費を前年度比で10%以上増加させた場合は、追加で10%税額控除できます。

 事業再構築補助金とは、中小企業等の付加価値額向上や賃上げにつなげつつ経済の構造転換を促すことを目的とした補助金です。

 2022年度補正予算案に盛り込まれた今後の方針によれば、いくつかある類型のうち、「成長枠」「グリーン成長枠」では、補助率は中小企業で1/2、中堅企業で1/3ですが、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年45円引き上げた場合、中小企業で2/3、中堅企業1/2に引き上げるほか、事業終了後3~5年で同水準を達成すれば補助上限額を3000万円上乗せします。

 ものづくり補助金とは、革新的製品・サービスの開発や、生産プロセスなどの改善に必要な設備投資を支援する補助金です。

 2022年度補正予算案に盛り込まれた今後の方針によれば、事業終了後3~5年に事業場内最低賃金を年45円以上引き上げるなどすれば、一部の枠を除き、補助上限を最大1000万円引き上げられます。

2022年度補正予算案に盛り込まれたものづくり補助金のリーフレット。中小企業庁の公式サイトから引用 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/

 事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継・引き継ぎにかかる設備投資や販路開拓、専門家活用、廃業費などを支援する補助金です。

 2022年度補正予算案に盛り込まれた今後の方針によれば、一部の事業で、事業終了時に事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上であれば、補助上限額を600万円から800万円へと引き上げられます。

2022年度補正予算案に盛り込まれた事業承継・引継ぎ補助金のリーフレット。中小企業庁の公式サイトから引用 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/

 次に賃上げに役立つ助成金を紹介します。補助金は、国や自治体の政策目標に向けて支援するものですが、審査があるので、「申請したら必ずもらえる」というものではありません。

 一方、助成金は要件を満たせば受給できる可能性が高いという特徴があります。ただし、補助金も助成金も申請のための要件が細かく定められており、要件を満たしていないと支給されません。

 公募要領が公表されたら、自社の目的に合っているか、要件を満たしているかを細かくチェックしましょう。

 業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げ、機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練など設備投資をした場合に、その費用の一部を助成するものです。

 2022年度補正予算案では、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを拡充する方針が示されました。

 働き方改革推進支援助成金とは、生産性を高めながら労働時間を縮減するなど働き方改革に取り組む中小企業や小規模事業者、事業主団体への助成金です。

 2022年度補正予算案では、企業規模30人以下の事業主が賃上げした場合に「賃上げ加算」をさらに増額する方針が示されました。

2022年度補正予算案に盛り込まれた働き方改革推進支援助成金の概要(厚労省の公式サイトから引用 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html)

 キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを後押しするため、正社員化、処遇改善に取り組んだ事業主に対して助成金を支給する助成金です。2022年度補正予算案では、賃上げの支給要件が厳しくなる一方、正社員化コースや賃金規定等改定コースを拡充する方針が示されました。

2022年度補正予算案に盛り込まれたキャリアアップ助成金の概要(厚生労働省の公式サイトから引用 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html)

 特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)は、就職困難者の賃上げを伴う労働移動等の実現に向け、一定の技能を必要とする未経験分野への労働移動を希望する者を雇い入れる事業主に助成するものです。

 2022年度補正予算案では、就労経験のない職業に就くことを希望する就職困難者を雇い入れ、人材育成計画を策定し、人材育成を行ったうえで賃金引上げを行う事業主に対して、高額助成(通常コースの1.5倍)を行う方針が示されました。

 従来との違いは、現行の成長分野以外の分野も対象に追加することです。ただし、一定の訓練期間・時間数を満たす訓練を実施する場合に限ります。

2022年度補正予算案に盛り込まれた特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)の見直し。厚労省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html

 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース<仮称>)は、労働者のスキルアップを在籍型出向により行う場合に、労働者を送り出す事業主に対して助成することにより在籍型出向を推進し、企業活動を促進するものであり、雇用機会の増大等雇用の安定を図ることを目的としています。

 2022年度補正予算案では、労働者のスキルアップを在籍型出向により行うとともに、当該出向から復帰した際の賃金を出向前と比して5%以上上昇させた事業主(出向元)に対し、当該事業主が負担した出向中の賃金の一部を助成する方針です。

2022年度補正予算案に盛り込まれた産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)(仮称)厚労省の公式サイトから引用 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html

 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)とは、事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者の早期再就職の実現を図るため、当該労働者を早期に雇い入れた事業主に対して助成を行うものです。

 2022年度補正予算案では、離職を余儀なくされた者の早期再就職を支援する労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)について、前職よりも賃金が上昇する再就職に対して上乗せ助成をする方針です。

2022年度補正予算案に盛り込まれた労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)の見直し 厚労省の公式サイトから引用 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html

 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)とは、中高年齢者等の多様な就労機会の確保や賃金引上げによる分配強化を図るため、中途採用の拡大と賃金上昇等を行う事業主に対して助成し、転職・再就職者の採用機会の拡大を図ることを目的としています。

 2022年度補正予算案では、45歳以上の賃金を前職より引き上げる中途採用を推進するため、要件を追加する見直しを行う方針です。

2022年度補正予算案に盛り込まれた:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の見直し。厚労省の公式サイトから引用 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/index.html