自己肯定感を高める方法は?低い人の特徴と原因、高める習慣を紹介
「失敗やミスを怖がる」「積極性がない」部下に悩んでいませんか。そこには、自己肯定感が関係しています。部下の自己肯定感を高めることで、自信がなくてもチャレンジする姿勢を促せるでしょう。自己肯定感が低い人の特徴や原因を解説し、自己肯定感を高める習慣について組織開発コンサルタントがわかりやすく紹介します。
「失敗やミスを怖がる」「積極性がない」部下に悩んでいませんか。そこには、自己肯定感が関係しています。部下の自己肯定感を高めることで、自信がなくてもチャレンジする姿勢を促せるでしょう。自己肯定感が低い人の特徴や原因を解説し、自己肯定感を高める習慣について組織開発コンサルタントがわかりやすく紹介します。
目次
自己肯定感を高めるためには、まず自分自身を理解し、どのような場面や環境で否定的な自己評価が生じているのかを知ることが重要です。また、自分のよいところや成功した経験を具体的に言語化して認識すること、自分自身を承認することも有効です。
自己肯定感が高い人は、「自分の今の状態を肯定的に捉える感覚が高い」ので、自信がない状態でもそれを否定しません。「自信がない状態」を肯定しつつも、「やってみよう」という行動をとりやすいのです。
そのため、自己肯定感が高いと自分の能力や働き方に対して、無駄な自己否定に陥らず、仕事の成果に集中できるようになります。心理的な安定感が高まることで、状況への適応力も上がります。また、自身の長所や短所を的確に把握できるので、自分だけでなく、他者や環境を上手に活かすことができ、よい成果につなげられるでしょう。
「自己肯定感が高い人は自信がある人だ」と思っていませんか? 実は、少し解釈が違います。
自己肯定感とは、自分あるいは他者から見たときの自分自身を、肯定的に受け止める自己評価のことです。自己肯定感が高い人は、自分に対して肯定的なイメージを持っているため、ストレスや困難にもうまく対処できる傾向があります。
一般的に、自己肯定感が高い人は、起きたことを成功体験として捉える傾向が強く、低い人はネガティブな面や失敗に注目し、ダメだという決めつけをする傾向があります。
似たような言葉に「自己効力感」があります。自己肯定感と同じく自己評価の概念ですが、意味は異なります。
自己効力感とは、心理学者のアルバート・バンデューラ氏が提唱した社会的認知理論の中核概念のことです。「ある状況を変化させることができる」「自分はなんでもできる」のように、自分の能力や可能性を肯定的に認識している状態のことを言います。また、「達成できるという確信の程度」とも定義されています。自己効力感は、新しいものごとに取り組む際の考え方、感じ方、動機付け、行動に影響を与えると考えられています。
たとえば、新しい仕事の担当になったとき、自己効力感があり、自己肯定感が高い人は「チャレンジしてみよう」と思いますし、仮に失敗をしても失敗を受け止めてチャレンジを続けます。
続いて、自己肯定感が低い人に現れやすい特徴とその原因を見ていきます。
自己肯定感が低い人(自己評価を低くしてしまう人)は、自分についての肯定的な情報が少ない傾向にあります。自分を否定的に捉える場面が多くなるとネガティブな感情や抑うつが強くなり、体調にまで影響が及ぶこともあります。
上司として理解をしておきたいのは、誰にでも自己肯定感が低いときがある、ということです。「この部下は自己肯定感が低いタイプだ」と決めつけず、「今、困っていることがあるのかな?」というサインとして活用してください。
自己肯定感が低い人の特徴を4つ紹介します。
「失敗したくない」「嫌われたくない」「変な奴・バカな奴と思われたくない」といった防衛的な思考から、自ら積極的な言動をとらない傾向があります。また否定的な発言が多くみられるのも特徴的です。自分自身を批判したり非難する考えに偏ったりして、自分自身の弱点や欠点にばかり着目していきます。ものごとを否定的に捉える一面もあります。
他者にリクエストしたり、自分の考えや意見を主張したりすることに苦手意識を持っています。難しく感じることを避ける傾向があります。また「ごめんなさい」とすぐに謝ることがよく見られます。うつむきがちで目を合わせない、声が小さい、言い切らないなどのコミュニケーション傾向があります。
【自信のない態度が目立つ人の特徴】 |
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・自分の可能性を信じていない ・新しいことから逃げる ・他者からの承認を退ける |
自己肯定感は気持ちにも影響を与えます。不安や恥ずかしさ、恐れなどのネガティブな感情を感じることが多い、または気持ちが不安定なときなどは、自己肯定感が低くなっている可能性が高いでしょう。
【ネガティブな感情が強い人の特徴】 |
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・挫折や失敗をきっかけに落ち込む ・他人からの批判に弱く、敏感に反応する ・ネガティブで感情的な反応が多い |
ネガティブな感情は、不快な感覚として体にも現れます。無気力のほか、疲れやストレスを感じやすくなります。過緊張から睡眠に影響を与える場合もあります。
このような特徴が見られる人は、新しいことや当人が難しいと感じることには、チャレンジすることができず、進歩や成長が阻害されます。
では、なぜ自己肯定感が低くなるのでしょうか。
自己肯定感には、2つの視点があります。自分について評価をしようとする「認識」の視点と、他者や周囲から自分がどのように見られているかを理解し、判断しようとする「解釈」の視点です。
どちらの視点も、子どもから大人へ育つ過程での体験や環境が影響すると考えられています。その過程で感じた感情や体の感覚が、視点にバイアスをかけます。すると、バイアスからものごとを捉える傾向が強くなり、ネガティブで偏った捉え方が定着し、自己肯定感が低くなるのです。
次のような経験があると、否定的なバイアスがかかりやすくなります。
常習的に不適切な扱いを受けると、人の脳はその現状を納得させるための歪んだ解釈を作り出します。本当は非はないのに、「自分に非があり、不当な扱いを受けるのが当然である」という間違った思い込みをしてしまうのです。
たとえば、新卒で入社したばかりでスキルが浅い頃なのに、パワハラ傾向のある上司や先輩に理不尽に怒られる、などのケースです。何をやってもうまくできていないと思い込まされたり、失敗や欠点ばかりを取り上げられ、他者と比較されたりすると、自分にはできないという間違った評価が生まれます。
個人単位だけでなく、家族やグループが属している社会から不当な扱いを受けることでも、無意味な劣等感が生まれます。
チャレンジとなる小さな行動への抑制は、積み重なると「やらなかった」ことの正当性を高める心理作用が働きます。無自覚に、「自分はダメなんだ」という自身を貶める思い込みが強くなっていきます。
自己肯定感が低い人の口ぐせは、自分を否定するような言葉です。そして、着眼点も否定的であることが特徴です。自分のうまくいった体験に対しても「たまたまだよ」「ラッキーだった」など無意識に自分を咎めています。
自己肯定感を高めるための習慣として、以下のようなものが挙げられます。
普段の生活の中で、不安や恐れ、妬みなどの否定的な感情が出てきたり、緊張や疲れやすいなどの体の反応を感じたりしたら、そのことを書き出しましょう。感じた背景を言語化することで、客観的に自分を捉えることができます。
まずは、時系列で書き出してみることが大切です。認知行動療法や行動分析といわれる手法で、認知や認識を捉え直す客観的視点を養うトレーニングです。思い込みの程度にもよりますが、数カ月で認知が変化していきます。
成功体験を振り返って自分自身を承認することで、「自分は価値のある人間である」という信念が強くなります。やってきたことものごとを具体的に書き出しましょう。また、その体験を通して成長できた点や頑張ったことを認めてください。やってきたことを話したり、書いたりすることは、ポジティブな体験を記憶する力の強化につながります。そして、強く記憶された情報は、意識しやすくなります。
やりたいことや好きなことをまずは、やってみることが大切です。日常の小さなことから、何でもよいので意識してみることから始めましょう。好きなことがわからないときは、嫌いなことや、苦手なことを具体的に書き出してください。嫌いなことには、理由があります。その理由から比較して、好きなことや得意なことが何かを考えてみてください。また、日常で何かを判断するとき、「好き」「嫌い」を意識することも大切です。
新しいことにチャレンジする際は、不安や恐れなどのストレスがあります。応援や、支えてくれる他者の存在や環境を作ることも不可欠です。支えてもらったり、助けてもらえたりするようになることも、相手と自分を信じる練習の1つです。他者の視点を借りて自分のよいところをたくさん認識していきましょう。
自分のことは、わかりにくいものです。また、自己肯定感が低い人は、自分に対する肯定的な情報が少なくなっています。専門家やカウンセラーなどのサポートを受けることも有効です。人が成長する過程には、存在を全肯定してくれる第三者の存在が不可欠だと筆者である私も常々思っています。人と組織の成長を支援する仕事を始めた原点でもあります。1人で抱えこまずに専門家をどんどん活用してください。
ここまで、自己肯定感について詳しく解説してきました。部下の自己肯定感が低いと感じたら、次のような関わり方を意識してみましょう。
部下の存在やふるまい、行動そのものを承認します。すると、部下自身の存在価値の認識が高まります。注意したいのは、「承認」と「褒める」は異なるということです。
褒める行為には上司の「よい」というジャッジが入るため、部下は上司の意見や顔色をうかがう行動を促進させてしまいます。部下が望ましい行動をしているときは、「あなたの行動で、周りが助かっている」のような、よい影響を及ぼしている状況や事実を伝えるポジティブフィードバックが有効です。
傾聴とは、相手の話を聞くだけでなく態度や表情、ふるまいなどの非言語から真意を汲み取っていくことです。傾聴には、「受容的傾聴」「積極的傾聴」「反映的傾聴」があります。
受容的傾聴とは、部下のペースで話せるように、聞く側は受け身的なスタンスをとる傾聴法のことです。話を真摯に聞こうとする姿勢が重要です。
積極的傾聴とは、部下の気持ちや考えを理解しようとする姿勢で聞く技法のことです。話し手が話しやすくなるような相槌や促しも活用します。また、本心や真意を引き出すために、時には聞き手から質問することもあります。
反映的傾聴とは、共感や理解に努める技法のことです。話された内容を要約して伝え返すことで、話し手の客観的理解を促します。
部下は、自分よりも上の立場の上司に対して萎縮してしまったり、話しにくさを感じていたりします。「話しやすい」「相談しやすい」「聞いてもらえている」と感じてもらえるように、普段の傾聴が大切です。
部下の成長を上司が信じることは、能力を発揮できることに影響を与えます。また、どのくらいのことを任せることが部下にとってよいのかなど、適正値を把握することも大切です。
適正値は、本人もわかっていないこともあります。「調整しながらやっていこう」と声をかけ、途中で修正しながら進めましょう。また、ベストな関わり方かどうかを部下に確認することも大切です。任されている、自分を尊重してくれていると感じられることで、部下の自己肯定感が高まります。
部下が挑戦していることや、目標達成を応援する姿勢を積極的に見せてください。応援してくれる、支えになってくれる人の存在は、心強いものです。また、人の期待に応えようとすることが、思いがけない力を発揮する機会にもなります。
部下が挫折や失敗を経験したときには、そのような経験から何を学ぶことができるかを言語化させましょう。自己肯定感が低い人が失敗すると、自分を責める思考により捉われやすくなります。自分を責めても、状況や状態が好転するわけではないことを伝え、次の行動に活かしていくことを認識させると、部下の自己肯定感が高まります。
なお、部下の自己肯定感を高めるときのポイントで注意が必要なのは、上記すべての方法に取り組む際には、部下の納得感が重要だということです。
どのような言葉や態度が承認してもらえていると感じるのか、サポートされていると実感できるかは、聞いていかないと判断できません。部下自身にもどのように関わってもらえると肯定感が高まっていくのかは、わからないかもしれません。関係性を微調整しながらのコミュニケーションを心がけていきましょう。
上司が努めるべきは、部下が持っている能力やスキルを認識し、彼らが挑戦するようなタスクやプロジェクトを適切に設定することです。部下が仕事で達成感を得るためのゴールや目標を共有し、その達成に向けて支援することを意識してください。
そのうえで、部下に「自己肯定感が低い」と感じることがあれば、抱える問題や悩みに寄り添いましょう。当人は自分がネガティブな状態になっていることに気づきにくいものです。上司が第三者として介入し、肯定的な捉え方や新しい視点を共有していくことが重要です。
自分自身を肯定するための方法や方法論を知ると、自分でコントロールができるようになります。前向きな気持ちを育むには、自分についての客観的理解と他者の肯定的な関わりが欠かせません。本記事で紹介した方法を組み合わせて、ぜひチャレンジしてください。
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