目次

  1. VRIO分析とは 読み方は「ブリオ」
    1. VRIO分析で評価する4つの視点
  2. VRIO分析のメリット
    1. コア・コンピタンスを明確にできる
    2. 自社の強みだけでなく弱みも把握できる
    3. 経営戦略の構築や見直しに活用できる
  3. VRIO分析の手順
    1. 分析の目的を明確にする
    2. 分析対象となる競合他社を選定する
    3. VRIO分析の4つの視点についての評価を行う
    4. 競争優位性を参考にして経営戦略を立てる
  4. 自社にVRIO分析を導入する際の注意点
    1. 導入にある程度時間がかかる
    2. 定期的な分析が求められる
    3. 比較先の競合他社の選定に注意する必要がある
  5. VRIO分析の事例
    1. 地方のバイクガレージ経営
    2. 個人弁護士事務所
  6. VRIO分析を行って自社の強みを再確認しよう

 VRIO分析とは、自社の経営資源の競争優位性を明確にするためのフレームワークのことです。

 「VRIO」は「Value(経済的価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の頭文字を並べた言葉で、読み方は「ブリオ」です。

 自社の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」が、競合他社に比べてどれほど優位性があるかを分析するために用いられます。

 VRIO分析の評価結果には以下の5つがあります。
 ・持続的競争優位(VRIO)
 ・潜在的競争優位(VRI)
 ・一時的競争優位(VR)
 ・競争均衡(V)
 ・競争劣位(VRIOのいずれもない状態)

 「VRIO」のすべてにおいて他社より優れた状態である「持続的競争優位」を築くことが、企業の成長と存続につながる最終到達目的です。

 VRIO分析を行う際には自社の経営資源について、下表のように4つの視点から評価を行います。

視点 具体的な評価内容 当該視点がない場合に生じるリスク
Value(経済的価値) 自社が取り扱っている商品・サービスに、顧客や消費者が継続的に購入・契約のためにお金を支払ってくれるだけの経済的価値があるのかを評価する 自社の商品・サービスに経済的価値がないと、いずれは需要がなくなって市場自体が縮小し、収益を上げ続けることができずに事業存続は難しくなる
Rarity(希少性) 自社の商品・サービスはもちろん技術やサプライチェーンなどといった経営資源に、競合他社と比較して希少性があるのかを評価する 経済的価値がある会社でも、希少性がなければ競合他社によっていずれ淘汰されてしまう
Inimitability(模倣可能性) 自社の経営資源が他社にとって模倣しやすいかどうかを評価する 商品・サービス、独自技術や販路などが競合他社によって簡単に模倣されるものならば、コスト面で優れる競合他社によってシェアを奪われる可能性がある
Organization(組織) 自社の経営資源を十分に活用し続けるだけの組織力があるかどうかを評価する どれだけ経済的価値の高い商品・サービスを扱っていて、模倣されにくい希少技術を持っていても、継続的に運用できるだけの会社組織になっていなければ、持続的な優位性は築けない

 VRIO分析を行って自社の現状分析をすることには、大きく3つのメリットがあります。

 VRIO分析を行うことで、自社の経営資源のなかで中核となる強みである「コア・コンピタンス」を明確にできます。

 コア・コンピタンスとは、他社に模倣されにくい自社独自の強みという意味のビジネス用語です。グローバル化などによって市場の変化が激しいなかでは、自社のコア・コンピタンスを軸とした経営を行わなければ、変化に対応できなくなります。

 「VRIO」という4つの視点で振り返ることで、自社の経済的価値を高めているのが、商品・サービスなのか? それとも独自技術なのか? 他社にはないサプライチェーンなのか? など、さまざまな視点で深掘りできます。

 VRIO分析を行うことで競合優勢性の状態がわかるため、自社に足りていない弱みも把握できます。

 企業が継続的に成長・存続するためには、持続的競争優位性を持つことが不可欠です。独自技術があったとしても、特許取得できていなければ模倣される恐れがあります。現時点で経営状態が良好でも、キーマンの退職などによって組織運営が成り立たなくなる可能性もあるでしょう。

 VRIO分析は弱みについても考える機会になるため、経営方針の修正にも役立てられます。

 自社の強みや弱みがVRIO分析によって明確にできれば、経営戦略の構築はもちろん、定期的な見直しにも活用できます。

 経営戦略は、中長期的に自社がどういった活動をするかを明確にするために欠かせません。戦略立案には判断基準と根拠が必要なため、自社の強みや弱みを見える化できるVRIO分析が役立ちます。

 VRIO分析は以下の手順で進めます。

  1. 分析の目的を明確にする
  2. 分析対象となる競合他社を選定する
  3. VRIO分析の4つの視点についての評価を行う
  4. 競争優位性を参考にして経営戦略を立てる

 フレームワークの効果を高めるには分析実施前の準備も必要なので、参考にしてみてください。

 まずは、VRIO分析を行う目的と自社の経営方針策定にどう役立てるかを明確にします。

 VRIO分析を行う際には現場に詳しい社員の参加が望ましく、分析を実施する前にその目的を定めたうえで共有することが重要です。

 次に、特に「Rarity」や「Inimitability」に大きく関係する、分析対象となる競合他社の選定を行います。

 VRIO分析では市場以外にも競合他社について調査する必要がありますが、選定した企業によって分析結果も大きく変わります。これまでVRIO分析の経験がないならば、まずは同地域・同規模の競合企業に絞るなど、分析目的を達成できる最小サイズの競合を選ぶことも大切です。

 VRIO分析の4つの視点の「Value」から順番に「YES(有)/NO(無)」で評価し、競争優位性の状態を確認します。

 VRIO分析を行う際には、以下の表を参考にしながら「V→R→I→O」の順番で競合他社との相対評価を行いましょう。

V R I O 競争優位性
YES YES YES YES 持続的競争優位
YES YES YES NO 潜在的競争優位
YES YES NO 一時的競争優位
YES NO 競争均衡
NO 競争劣位

 「V」が無ければ、その時点で「競争劣位」と評価され、自社の商品・サービスなどの経済的価値を見直す必要があります。「V」があれば次に「R」を評価し、無ければ「競争劣位」と評価され、希少性があるならば次に「I」の評価を行います。

 このように順番に評価を行っていき、「NO」と評価された時点でそれ以降の評価結果は競争優位性に影響しません。ただし、持続的競争優位性の構築には将来的にすべての要素を満たす必要があります。自社の現状を把握するためにも、評価自体はすべての項目で行うことをおすすめします。

 VRIO分析によって自社の競争優位性が把握できたら、評価結果を参考にして経営戦略を立てます。

 経営戦略を立てる際にも、優先順位は「V→R→I→O」を意識しましょう。経済的価値や希少性を高めるには、新しい商品・サービスの開発、ターゲット層の見直し、販路の拡大や絞り込みなど、さまざまな戦略が取れます。

 VRIOの4つの視点で「NO」の評価がついた項目は、将来に向けて改善が必要です。

 たとえば、「IO」がないと仮定しましょう。「Inimitability」について特に重要なのは、独自技術を守るための特許出願です。また、他社と協業してクロスライセンス(複数の起業で特許権などの知的財産権の行使を互いに許諾すること)を結ぶなどの対策もあるでしょう。「Organization」については、組織再編や社員の育成、中途採用などによる人材確保など、中長期目線での計画立案が必要になります。

 VRIO分析は、経営戦略を立てるために広く使用されるフレームワークですが、導入の際には注意すべきポイントが3つあります。

 VRIO分析を実施したことがない企業にとっては、自社に浸透させるにはそれなりの時間が必要です。

 競争優位性を把握するためのフレームワークなので、自社の主観的な評価だけでなく、競合他社を含めた客観的な評価が不可欠です。また、何をもって「YES/NO」と評価するかの判断基準に決まりがあるわけでないため、最初は実施自体に時間がかかるでしょう。

 自社独自のノウハウとして蓄積していくという意識を持って、粘り強く行う必要があります。

 VRIO分析は、定期的に行わなければ効果を発揮できません。

 グローバル化やITの進化によって、市場の変化はもちろん、競合他社の入れ替わりも激しくなっています。そのため、VRIO分析をはじめとする経営分析は、中期経営計画の立案時などから3年ほどの周期で定期的に行い、自社の競争優位性を確認することが必須となります。

 VRIO分析では相対評価を行うため、比較対象となる競合他社を選ぶ際には注意が必要です。相対比較を行う競合他社の範囲を広げ過ぎれば、それだけ分析に時間がかかる恐れがあるのはもちろん、競争優位性の評価結果が大きく変わってしまう可能性もあります。自社の商品・サービスや参入しているマーケットと同じ業種であることを前提に、企業規模や地域を絞り込むなど、ターゲット層の選定には注意を払いましょう。

 ここでは、VRIO分析によって経営改善を行った地方の中小企業の事例を2つ紹介します。

 地方の駐車場経営では、都市部と違って利用人数自体に差があるため、立地によっては契約者を確保するために必要以上に値下げすることも少なくありません。

 地方のとあるバイクガレージは、公共交通機関の駅から遠く、車で横付けしてバイクを搬入できないという不利な立地で経営をしていました。しかし、その地域では珍しい大型二輪向けのガレージで、個別ボックスに照明や電源設備を備えているという魅力がありました。

 VRIO分析によって「VR」がすでにあるという結果が得られ、ターゲット層に直接刺さるような広告戦略をとることで、契約を増やすことに成功しています。

 弁護士事務所は、個人事務所でも大手事務所が直接的な競合になり、特許などで守る技術がないことから、持続的競争優位性を築くのが難しい業界です。

 とある地方の個人弁護士事務所では、VRIOのうち「Value」については事業内容として十分でしたが、「Rarity」が不足しているため収益性の確保に苦慮していました。そのため、収益性の高い事案への対応実績を積み、該当地域での希少性を高めることに注力することで差別化を図り、少人数でも継続的な収益確保ができるようになりました。

 VRIO分析は競合に対する自社の優位性を分析し、コア・コンピタンスを明確にするためのフレームワークです。

 市場や競合の変化が激しい世の中では、自社の強みを認識したうえで中核となる事業で収益を確保することが欠かせません。

 株式上場などを考えていない中小企業の場合は、持続的競合優位性が必要とは限らないため、「VRIO」のすべての項目で優位性を築く必要はないでしょう。ただ、事例にあるように「VR」は収益性を高めるために欠かせない要素です。

 まずは、VRIO分析を行って自社の強みに着目し、それを活かすための指針を経営戦略に落とし込むことから始めてみましょう。