目次

  1. パソコンの購入費用に用いる勘定科目
    1. 10万円未満の場合
    2. 10万円以上20万円未満の場合
    3. 20万円以上30万円未満の場合
    4. 30万円以上の場合
  2. 購入パターン別の仕訳方法
    1. 複数台購入する場合
    2. 購入代金の他に設定料金を支払う場合
    3. パソコンの関連用品を購入する場合
    4. パソコンと同時にOSソフトも購入する場合
    5. パソコンの購入と同時に長期保証に加入する場合
  3. パソコン購入時の消費税の取扱い
    1. 税抜経理方式
    2. 税込経理方式
  4. パソコンの費用を会計処理をするときの注意点
    1. 償却資産税に注意する
    2. 特例を受ける場合は、税務申告書で必要な別表を付す
    3. 個人事業主の場合
  5. パソコンの仕訳には取得価額に注意する

 パソコンの購入費用に用いる主な勘定科目は、工具器具備品、一括償却資産、消耗品費、減価償却費です。ただし、1台あたりの取得価額によって選択できる勘定科目が異なってきます。まずは、一覧で紹介します。

取得価額 勘定科目 適用条件 主な処理方法
10万円未満 ①工具器具備品
②一括償却資産
③消耗品費
②一括償却資産として減価償却を行う
③消耗品費として会計処理を行う
①耐用年数で減価償却を行う
②費用処理を行う
10万円以上20万円未満 ①工具器具備品
②一括償却資産
③減価償却費
②一括償却資産として減価償却を行う
③青色申告書を提出する中小企業者等であり、消耗品費など費用処理を行う
①耐用年数で減価償却を行う
②3年間で減価償却を行う
③費用処理を行う
20万円以上30万円未満 ①工具器具備品
②減価償却費
②青色申告書を提出する中小企業者等であり、消耗品費など費用処理を行う ①耐用年数で減価償却を行う
②費用処理を行う
30万円以上 工具器具備品 耐用年数で減価償却を行う

 パソコンは複数年に渡って使用することのできる資産であり、年数を重ねるごとに価値が下がっていくため、会計処理では減価償却資産といいます。

 また、どの金額でも使用できるのは工具器具備品ですが、他の勘定科目の方が税法上のメリットを得られます。

 1台当たり10万円未満のパソコンを購入した場合は、法人税法施行令133条により、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入を適用することができます。条件は、損金経理をすることですので、仕訳で「消耗品費」など費用とする必要があります。多くの会社では、10万未満の減価償却資産にはこの方法を採用しています。

 その他に、一括償却資産として処理することや固定資産として計上することも、誤りではありません。その場合は、一括償却資産、工具器具備品の勘定科目で仕訳をします。

 例:業務用のパソコン1台を99,000円で購入し、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入を適用する。

借方 貸方
消耗品費 99,000 未払金 99,000

 取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、3つのパターンがあります。①一括償却資産として処理を行う、②少額の減価償却資産の取得価額の損金算入特例の適用、③工具器具備品です。

 ①一括償却資産とは、減価償却資産が20万円未満の場合に、取得価額をその事業年度の月数÷36カ月(3年)で減価償却することができる処理方法です。法人税法施行令133の2で規定されています。下記の例だと、取得価額198,000円÷36カ月×12カ月(1年分)=66,000円が減価償却費となります。

 また、②少額の減価償却資産の取得価額の損金算入特例とは、青色申告書を提出する中小企業者等(常時使用する従業員の数が500人以下の法人等)が30万円未満の減価償却資産を取得した時は、年間300万円までは損金経理をしてよいという特例です。これは租税特別措置法67条の5などで規定されています。

 例:業務用のパソコン1台を198,000円で購入し、3年で減価償却できる一括償却資産を適用する。

【購入時】

借方 貸方
一括償却資産 198,000 未払金 198,000

【決算時】

借方 貸方
減価償却費 66,000 一括償却資産 66,000

 取得価額が20万円以上30万円未満の場合の選択肢は、2つです。

 中小事業者等で青色申告を選択している場合は、少額の減価償却費の取得価額の損金算入特例を適用することができます。その際は、まず固定資産として工具器具備品の勘定科目で計上します。その後、減価償却費を計上します。

 それ以外の場合は、固定資産として耐用年数で減価償却を行うことになります。

 例:業務用のパソコン1台を298,000円で購入した。少額の減価償却資産の取得価額の損金算入特例を適用する。

【購入時】

借方 貸方
工具器具備品 298,000 未払金 298,000

【決算時】

借方 貸方
減価償却費 298,000 工具器具備品 298,000

 取得価額が30万円以上の場合は、固定資産として工具器具備品の勘定科目で会計処理を行います。その他の選択肢はありません。

 例:385,000円のパソコンを購入した。

借方 貸方
工具器具備品 385,000 未払金 385,000

 事業用にパソコンを買う際には、さまざまな購入パターンが想定されます。ここでは実務上想定されるパターンとともに会計処理を確認します。

 パソコンを同時に複数人の従業員分を購入した場合は、総額を購入台数で割り、1台当たりの単価を求めて、その価格に則った会計処理を行います。下記の例では、990,000円÷10台=1台あたり99,000円のため、10万円未満の処理方法を適用します。

 例:パソコン10台を990,000円で購入した(1台あたり99,000円)。

借方 貸方
消耗品費 990,000 未払金 990,000

 会社で大量にパソコンを購入し、購入先の業者にパソコンの設定も併せてお願いすることがあります。この設定料金は、パソコンを使えるようにするために必要な費用となることから、パソコンの取得価額に含める必要があります。

 例:本体代金99,000円のパソコンを購入し、設定料金22,000円も併せて支払った。合計が10万円以上のため、一括償却資産を適用する。

 パソコンは大きくノート型とデスクトップ型の2つに分かれます。ノート型であれば、ディスプレイやキーボードがついていることから、パソコンの関連用品は必要最小限で使い始めることができます。しかし、デスクトップ型パソコンでは、ディスプレイ、キーボード、マウス等がないと使い始めることができません。そのため、これらの用品も取得価額に含める必要があります。

 例:デスクトップ型のパソコン一式を購入した。パソコン本体70,000円、ディスプレイ30,000円、キーボード5,000円、マウス2,000円で、合計が10万円以上のため、一括償却資産を適用する。

【購入時】

借方 貸方
一括償却資産 121,000 未払金 121,000

【決算時】107,000円÷36×12カ月=35,667円

借方 貸方
減価償却費 40,334 一括償却資産 40,334

 OSとはWindowsなどのパソコンを動かすためのオペレーティングシステムの略です。これをパソコンと同時に購入し、組み込んで納品してもらうことがあります。

 OSはパソコンを動かすために必須のソフトウェアになりますので、パソコンと一体のものとして取得価額に含めます。たとえば、本体代金99,000円のパソコンにOSソフトを11,000円で購入したときは、合計額が110,000円となり、10万円以上20万円未満のため、一括償却資産を適用します。

 なお、OSを購入しても複数台にダウンロードすることができるような場合は、パソコンの取得価額には含めず、ソフトウェアとして別に計上する必要があります。その場合の仕訳は、次のようになります。

 例:本体代金99,000円のパソコンと複数台にダウンロードできるOSソフトを11,000円で購入した。それぞれ10万円未満のため、消耗品費で処理する。

借方 貸方
消耗品費 99,000 未払金 99,000
消耗品費 11,000 未払金 11,000

 パソコンを購入した際に、長期の保証に加入することがあります。この長期保証は、ほとんどの場合、加入時に保証料を支払います。しかし、支払った際に全額を費用にすることはできない点に注意が必要です。時間の経過に応じて費用にします。

 例:本体88,000円のパソコンを購入した。また、通常の保証とは別に5年の長期保証に加入し、25,000円を支払った。

【購入時】

借方 貸方
消耗品費 88,000 未払金 110,000
長期前払費用 25,000 現金 25,000

【決算時】当期分の保証料(25,000円÷5=5,000円)を費用として処理し、翌年分の保証料を流動資産に振り替える。

借方 貸方
修繕費 5,000 長期前払費用 10,000
前払費用 5,000

 パソコンを購入した際に、自社が採用している消費税の処理方法によっても会計処理や金額の判断が異なってきます。消費税の課税事業者であれば、以下で説明する税込経理方式と税抜経理方式のどちらかを会計方針として選択する必要があります。

 税抜経理方式とは、消費税部分は分けて会計処理を行うことをいいます。

 例えば、本体価格960,000円、消費税9,600円のパソコンを購入した場合、以下の仕訳になります。

借方 貸方
消耗品費 96,000 未払金 105,600
仮払消費税 9,600

 なお、パソコンの取得価額によって会計処理が異なるため、税抜経理方式では、消費税を抜いた本体価格で判断します。

 税込処理方式とは、消費税部分も含めて会計処理を行うことをいいます。なお、消費税の免税事業者の場合は、税込処理しか認められません。

 会計処理の判断は、消費税込みの金額で行います。

 例えば、本体価格96,000円、消費税9,600円のパソコンを購入した場合、以下の仕訳になります。

【購入時】

借方 貸方
一括償却資産 105,600 未払金 105,600

【決算時】105,600÷36×12⁼35,200

借方 貸方
減価償却費 35,200 一括償却資産 35,200

 パソコンに関する仕訳をする際の注意点を紹介します。 

 法人、個人事業主を問わず、事業を行っている場合は、1月31日までに償却資産税の申告を行う必要があります。償却資産税の申告に含めるものが少し複雑ですので、注意が必要です。

 10万円未満で取得時に費用処理をした場合は含める必要がありません。20万円未満で一括償却資産にしたものも含める必要はありません。しかし、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入の特例で費用処理をしたものは償却資産税の申告対象になります。固定資産として計上しないことも多いですが、償却資産税の申告対象にはなりますので、償却資産税の申告書を作成する際には集計から漏らさないようにしましょう。

 そのためには、仕訳を起票する時には適用欄に記入しておくとよいでしょう。

 一括償却資産の適用を受ける際には、会計処理を行ったうえで、法人税の申告書に「一括償却資産の損金算入に関する明細書(別表16(6)」を添付する必要があります。

 また、少額の減価償却費の取得価額の損金算入特例を適用した場合には、法人税の申告書に「少額の減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7)」を添付する必要があります。

 別表を付けることを忘れた場合は、特例が否認される可能性があります。税務申告書を作成の際には気をつけましょう。

 個人事業主の場合でも、処理方法は法人の場合と変わりません。また、青色申告書提出の届出をしている場合は、少額の減価償却費の取得価額の損金算入の特例を利用することができます。

 また、個人事業主の場合は、購入したパソコンをプライベートで使用することもあると思います。その場合は、事業に使った部分を合理的な方法によって算出することとなります。

 よくあるのは、使用時間によって按分する方法です。1日10時間、パソコンを使い、そのうちの1時間をプライベートで使っているような場合は、9/10を費用で計上することとなります。

 ただし、基本的にプライベートで使うパソコンと事業用で使うパソコンは別々に購入することをおすすめします。

 例:個人事業主がパソコン99,000円を購入した。なお、事業用に使用する時間は全体の9/10である。

借方 貸方
消耗品費 89,100 未払金 99,000
事業主貸 9,900

 パソコンに関する仕訳を起票する際には、取得価額によっていろいろなパターンが想定されます。また、消費税の処理方法によっても金額基準が変わってきます。

 そのため、パソコンを購入する際には1台あたりいくらなのかを正しく把握し、適切な仕訳ができるようにしましょう。