来場者が足を止める展示会ブースのデザインとは 事例から見る工夫
来場者が足を止める展示会ブースには、どんなデザインの共通点があるのでしょうか?数多くのブースデザインを手がけてきた空間デザイン会社「SUPER PENGUIN」代表の竹村尚久さんに、これまでのデザイン事例を聞くと、キャッチコピーの位置やLED投光器の活用など来場者視点で工夫していることがわかりました。
来場者が足を止める展示会ブースには、どんなデザインの共通点があるのでしょうか?数多くのブースデザインを手がけてきた空間デザイン会社「SUPER PENGUIN」代表の竹村尚久さんに、これまでのデザイン事例を聞くと、キャッチコピーの位置やLED投光器の活用など来場者視点で工夫していることがわかりました。
東京ビッグサイトで2022年6月に開催された日本最大のコンテンツビジネス総合展「コンテンツ東京」に、20代のクリエーター3人が共同出展しました。
3人が確保したブースは、メイン通路から外れた通路沿い。人通りはそれほど見込めない位置でした。そんなブースのデザインを依頼された竹村さんがまずこだわったのは側面の壁でした。
一面蛍光ピンクの壁に「映像制作・写真 届け方は100,000,000通り。」と題したキャッチコピーを大きく掲示しました。なぜなら、メイン通路からブースの内部は見えないのですが、壁だけは視界に入ることがわかったからです。
20代は若さゆえのエネルギーがある一方、信頼度が弱いと考えるクライアントもいます。そこで、若者らしさを蛍光ピンクで表現しつつ、それ以外の配色は、グレーで統一し、スマートさも表現しました。それ以外の場所は、モノトーンの壁紙を貼り分けることで、コストは掛けずにデザイン性を保っています。
奥の壁の前にある「ベンチ」は出展社の待機用と「ラフさ」、「若者としての自由さ」を表現し、自由に機材を置いたり、多目的に使える場としてデザインしました。
ブースの梁(はり)からLED投光器で壁を照らすことでブース全体を明るく見せています。壁に光を当てると、ブース全体が明るくなり、周りのブースより目立ち、目に留まりやすくなります。
竹村さんは「LED投光器は多くの設営会社で1つ1万~1.2万円でレンタルできます。3m×3mの1小間だと、2~3灯。2小間だと5~6灯あるといいでしょう」と話します。
東京ビッグサイトで2022年7月に開催された総合展示会「ライフスタイルWeek」に、洗い流さないシューズシャンプー「ROSY LILY」を運営するeel合同会社が初出展しました。
白を基調としたブースをさらに明るく見せているのが、2本の梁に設置したLED投光器です。竹村さんは「LED投光器で光が届くのが奥行き3m前後。2コマの広いブースで展示する場合は、梁を2本通して壁全体に光が届くように工夫しました」と話します。
人の頭の上の高さにキャッチコピー「水を使わない、靴のシャンプー」が書かれています。この位置だと、遠くにいる来場者の目線にちょうど合うのだといいます。歩いている来場者がブースに目を留めるのはわずか数秒。そのため、何を扱っているかを短く、わかりやすく書くのがポイントだと竹村さんは紹介します。
店舗で取り扱う商品の買い付けをするバイヤーさんに向けた展示なので、ブースは取引したいバイヤーの店の雰囲気をイメージしています。
ただし、商品一つひとつは、ぱっと見て価値が伝わるよう、商品の説明パネルも置きながら「きちんと見せる」陳列を心がけました。
2019年のスポーツ・健康産業に関する国際的な総合展示会「SPORTEC」に出展したTOSCOMは、ピンと張ったタペストリーで展示ブースを構成しています。
シワなく張れているのは、タペストリーの上下を袋縫いにして塩ビパイプを通したためです。ブースの間仕切りより一回りだけ小さくし、塩ビパイプの中を通したひもでつるしています。さらに左右もヒートカットすることでほつれが出ないよう工夫しました。
このブースでもタペストリーの上部からLED投光器で照らしたことで、蛍光色が際立っています。
受付の台は中が空洞になっており、展示物の搬入・撤収も便利なデザインとなっています。
東京インターナショナル・ギフト・ショーには例年、石川県内の企業が集まって共同出展しています。石川県産業創出支援機構(ISICO)が、県内中小企業の新製品を首都圏で販路開拓するために続けている事業です。白を基調としたブースは、バイヤーが読んでいそうな高級雑誌をイメージしているそうです。
2022年は28社が出展し、前年より6社増えました。さらに、展示会1カ月後に商談で契約に至った金額は2524万円と前年比で約3倍にまで伸びました。
竹村さんは「2021年を詳しく分析すると、共同出展のエリア内にはたくさん来場していましたが、個別に見ていくと、集客できていない企業ブースがありました」と話します。
見つかった課題の一つが、商品の陳列方法。出展社からすると、あれもこれもバイヤーに見て欲しいところですが、なるべく数を絞って陳列し、興味を持ったバイヤーには、さらに引き出しのなかから商品を見せるようにしました。
各社の什器に写真パネルの背景を設置するなど一目で商品がわかる工夫も加えました。さらに、ブースデザインだけでなく、バイヤーさんに送る招待状は透明の封筒にして目に付きやすくしたり、当日、展示会での立ち位置をアドバイスしたり、改善を繰り返すことで成約率を高めることに成功しました。
「会場に立つと、毎回発見がある」と話す竹村さん。最も大事にしていることは来場者目線だといいます。まず、展示会で誰と商談を進めたいのかをイメージし、特定の店のバイヤーの場合はその店の雰囲気に合わせた展示にすることで、自社製品が店に置かれたときの様子を具体的にイメージしやすくなるといいます。
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