目次

  1. 企業理念とは
  2. 企業理念の作り方 実例を紹介
    1. 工場火災で操業停止1年半 木工メーカー2代目が見つめ直した理念経営
    2. 100年の歴史を棚卸しし、飛騨産業9代目が紡ぎ直した企業理念 
    3. 「助けてくれ」と言われ家業へ 日本橋梁工業3代目が見直した社内体制
    4. 三春情報センターが掲げる「三方良し」ではなく「四方よし」
    5. 壁に貼ってあった「豊かさの実現」を頑張れる共通目標へ
    6. 社員を集めたワークショップで決めた理念

 企業理念とは、企業の存在意義やあり方を明文化したもので、長く発展するためには不可欠です。なにか起きたときに立ち戻り、方向性を確認するものでもあります。経営者だけで決めるのではなく、従業員を巻き込んで作ると良いでしょう。

 企業理念の作り方を実際の企業事例にもとづいて紹介します。

 岐阜県各務原市のエスウッドは、国産の間伐材を板状にしたストランドボードを国内で初めて開発しました。創業者の志を継いだ2代目は火災で1年半の休業を余儀なくされたのを教訓に経営理念を見つめ直し、木工技術を生かしたまちづくりや産業創出に力を注いでいます。

 そのときに生まれたのが、「想いを未来につなぐ」という経営理念、そして「国内唯一の木工技術を生かし、あらゆるモノ、地域、ひと、コトの循環に貢献する“つなぎ手”となる」という「2030年ビジョン」でした。

葦のストランドボードを囲むエスウッドのチーム(左から3人目が長田さん、写真はすべて同社提供)

 岐阜県高山市の家具メーカー「飛騨産業」は創業100年を超えます。日本有数の家具の産地で、2021年に父から引き継いで9代目社長に就任した岡田明子さんは、100年の歴史を棚卸しし、コピーライターの協力を得ながら「匠の心と技をもって飛騨を木工の聖地とする」という「志」(ビジョン)、ミッションに当たる「人を想う」「時を継ぐ」「技を磨く」「森と歩む」という四つの価値観を編み出しました。

飛騨産業のブランディングを担い、9代目社長に就任した岡田明子さん

 道路の橋をつなぐジョイントを製造する日本橋梁工業は2020年8月、3代目の菊地智美さんが父・義弘さんから事業を引き継ぎました。経営理念や行動理念が定められていなかったのですが、社員全員で話し合いながら決めました。

 神奈川県で事業を展開する三春情報センターは元々の不動産事業に加え、飲食、宿泊、美容、鍼灸、保育、介護、アパレルなど異業種に次々に進出しています。そのなかで「四方よし」を目指しています。

 そのなかで、目指しているのが「三方良し」ではなく「四方よし」。四方とは『お客様』『会社』『自分と家族』そして『地域』だといいます。

 長野県諏訪市発祥の中華料理チェーン店「テンホウ」。創業者の孫で3代目社長の大石壮太郎さんは、下がっていた売り上げと従業員の士気を高めるため、1988年に作られていた「豊かさの実現」という経営理念をもとに、健康、心、人、趣味、お金にフォーカスした「5つの豊かさ」も定めました。その結果、反転攻勢のための組織改革に取り組みました。

テンホウが定めた経営理念は店内にも掲示しています

 オレンジ色のパッケージ「梅の花」で知られる、1849年創業の老舗・山本海苔店。7代目にあたる山本貴大・代表取締役社長は「このままではおいしい海苔が消えてしまう」という業界の課題を乗り切るため、会社の理念づくりに挑みました。

 そこで生まれたのが「よりおいしい海苔を、より多くのお客様に楽しんでいただく」。社員を集めたワークショップで決めていったといいます。

山本海苔店の採用ページにも掲載された理念