後編 インクジェット技術が切り拓く脱炭素 環境課題とコスト削減の両立と向き合う ものづくり企業の矜持
(最終更新:)
低消費電力・省資源化を実現したエプソンのインクジェットプリンター・複合機は、脱炭素化を目指す企業にとって、有効な対策の一つ。環境配慮型のオフィスに適したプリンター・複合機が選べるサービス「エプソンのスマートチャージ」に、このほどビジネスシーンでの使い勝手をさらに充実させた〈LM〉シリーズが新たに加わりました。その特徴とエプソンが掲げる環境ビジョンについて、エプソン販売 DX推進部・部長の子田吉之氏に伺いました。
人と地球を豊かに彩るものづくりを目指して
――エプソンでは、「『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る」というパーパスを掲げていらっしゃるそうですね。
はい。創業以来、私たちエプソン販売を含むセイコーエプソングループは、環境負荷低減への取り組みを重視してきました。「省・小・精」の技術による、より効率的で、より小さく、より精密な製品やサービスでお客様の困りごとを解決し、それによって地球環境を守り、人々の暮らしを豊かにしたいと思っています。
このことは、2008年に策定した環境ビジョン2050でも明文化。脱炭素が大きな社会課題となってきた2020年には、具体的な達成目標を設定するなど改訂も行いました。長期ビジョン「Epson 25 Renewed」にも「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と明記。2025年に向けて「環境」と「DX」、そして「共創」に重点を置いた企業活動を考えているところです。
――日本政府は2030年の温室効果ガス削減目標として、2013年度比で46%減を打ち出しています。このような状況の中、エプソン販売は脱炭素社会の実現に向けて、どのように取り組んでいくお考えですか。
エプソンと言えば、インクジェットプリンターというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。私達には「Heat-Free Technology」と呼ばれるインクジェット方式に関する独自技術があります。これは熱を使わずにインクを吐出することで印刷を可能にするというもの。この技術を搭載したプリンターを使えば、レーザープリンターよりも印刷時の消費電力量を抑えることができるため、CO2排出量を低減できます。脱炭素社会の実現が強く求められるようになった今、ものづくり企業として私たちが社会貢献をするためには、この環境負荷の低いインクジェット技術を全面に打ち出していくことが必要だと考えています。
インクジェット技術でオフィスから世の中を変えたい
――インクジェットプリンターには家庭用のイメージが強いように思いますが、オフィスでの使用状況はどうなっているのでしょうか。
確かに日本のオフィスで使われているプリンターや複合機には、インクジェットよりもレーザーが多いのは事実です。でも、技術の進歩によってインクジェットの性能は確実に上がってきています。実際、今では家庭用だけでなく、産業用もインクジェットが主流です。インクジェットは、印刷段階での消費電力やCO2排出量が少ないだけでなく、レーザーに比べて構造がシンプルなので、製造段階で使用される電子部品の数が少ないのも特徴です。つまり、全体的に見て省資源・省エネルギーな製品だと言えます。
これまでのインクジェットプリンターは一度にプリントできる枚数が限られていたり、プリントのスピードが遅かったり、本体の大きさが大き過ぎたりなどの欠点が確かにありました。でも、今ではレーザー方式のプリンター・複合機に匹敵する印刷速度と高画質を実現しています。そのことを是非知っていただきたいですね。エプソンでは、2014年からプリントやコピーの使用状況に合わせて最適なプランとプリンター・複合機が選べる「エプソンのスマートチャージ」というサービスを始めています。2023年2月に新たに〈LM〉シリーズが加わったことで、ラインアップが大幅に拡充。オフィスのど真ん中で使っていただけるようになりました。
――新たにラインアップに加わったという〈LM〉シリーズの特長を教えてください。
〈LM〉シリーズは40〜60枚/分(※注釈1)の印刷速度帯を持つA3カラー複合機です。サイズもかなりコンパクトになりました。エプソンの「省・小・精」の技術を駆使した、まさに“真打ち”の登場だと自負しています。
一つ目の特長は、低消費電力設計でCO2排出量を大幅に抑えることができるため、脱炭素社会に向けた取り組みに貢献できること。二つ目が機体内部の構造を大幅に変更したことで小型化・省資源を実現したことです。消耗品や定期交換部品も少ない構造なので、メンテナンスにかかる手間と時間の削減にも貢献できます。そして、三つ目が本体パネルで消費電力量を数値で確認することができることです。キャプラン・石田社長との対談でもお話しましたが、環境対策に取り組む上で、現状の“見える化”はとても大切です。今週と前週の消費電力量の数字を比較するなど、環境活動の取り組みのきっかけにもなります。
既存のプリンターを、〈LM〉シリーズに置き換えた場合、消費電力量やCO2排出量を62〜66%削減(※注釈2)することが可能です。
これまではオフィスで使うプリンター・複合機はインクジェットよりもレーザーの方がいい、という考えが当たり前だったと思いますが、その当たり前を変えていかないと、オフィスも社会も変わっていかないのではないでしょうか。脱炭素社会の実現に向けて、オフィスの当たり前を私達エプソンの製品で変えることで、世の中を変えていきたいと考えています。
――環境負荷の低いインクジェットプリンター・複合機に置き換えることで、企業側にはどれくらいのメリットが生まれるのでしょうか。
オフィスの使用電力量の約10%(※注釈3)を占めるプリンター・複合機の使用電力量を低減できれば、当然電気代が減ってコスト削減になります。燃料費高騰の今、企業にとってはこの点もかなり大きなメリットだと思います。
さらに、〈LM〉シリーズをはじめ、エプソンの「Heat-Free Technology」を採用したオフィス複合機の高速印刷、低メンテナンスなどの特徴は生産性アップにもつながります。印刷が速いので作業時間は短くなるでしょうし、インク容量が大きくインク交換の回数が少なくて済むため、時間も手間も削減できます。働き方改革にも寄与することができます。そして、インクの交換回数が少ないということはゴミの量も減らせる。そういう面でもお役に立てると思います。
――オフィスのプリンター・複合機をすべてインクジェット方式に置き換えるのが難しいケースはないのでしょうか。
もちろん、レーザーにはレーザーの良さがあります。肝心なのは適材適所でプリンター・複合機を配置することだと思います。場所によっては、あまり使われていないプリンターもあるかもしれません。だったら、それは置き換えよりも撤去したほうがいいはずです。そういう状況を知っていただくため、エプソンではプリンターや複合機などの出力機器からデータを収集し、専門家が分析・レポートを提供する「出力環境アセスメント」(※注釈4)というサービスを行っています。いわば出力環境の“見える化”です。これを踏まえれば、環境に配慮したオフィスを作る上で最適なプリンター・複合機の配置を知ることができます。
実際に「出力環境アセスメント」を経て、プリンター・複合機の入れ替えを実施した企業の例をご紹介しましょう。
例えば、使用台数が多い医療機関では、レーザーをインクジェットに変えるだけで消費電力量を約85%も削減することができました。CO2排出量も大幅に減らせるため企業の脱炭素対策としては大きいと思います。
環境課題を考えると、やはり消費電力量やCO2排出量の少ない製品を使うべきではないでしょうか。これまで私達エプソンもレーザープリンターを扱ってきましたが、2026年を目標に新規販売するオフィスプリンター本体をすべてインクジェットに変更することを決めました。脱炭素社会の実現を目指すのであれば、「環境貢献度」が、オフィス製品を選ぶ際の最大の基準になると思います。
環境課題に共に取り組み、より良い未来に
――脱炭素社会の実現に向けて、エプソンではこれからどのような取り組みを続けていくお考えですか。
基本的には環境に配慮したものづくり、社会課題解決に貢献できるものづくりをこれからも続けていくことだと思います。
インクジェット方式へのプリンター・複合機の置き換えは、企業にできる環境対策の中でもかなりハードルが低いと思います。そのメリットと実例をしっかり伝えていきたいですね。「一緒に社会課題の解決につなげませんか」という姿勢で、オフィスの脱炭素化に取り組みたいと考えているお客様を私たちの製品やサービスできちんと支援をしていきたい。プリンターを置き換えるだけでなく、その先のペーパーレス化の提案も一緒にやっていくつもりです。
――2023年、企業がGX(グリーン・トランスフォーメーション)(※注釈6)の取り組みを加速するために必要なことは何でしょうか。そして、エプソンはそこにどのように関わっていきたいとお考えですか。
GXは地球環境を守るための対策であり、サステナブルな社会を作り上げていくためには欠かせないアクションだと考えています。私達はこれまでもこれからも、「一緒に環境という社会課題の解決に向けて動きませんか」というスタンスでお客さまを支援していきたい。環境貢献度の高い製品を選びたいと考える人達に応えられる製品やサービスを提供していくことが、ものづくり企業である私たちエプソンの使命だと考えています。
(※注釈1)A4横片面の場合。詳細はエプソンのホームページをご確認ください。
(※注釈2)「エプソンのスマートチャージ」対応〈LM〉シリーズのTEC値とENERGY STAR®画像機器基準Version3.0にて定められたTEC基準値(A3複合機カラーWi-Fi® 対応40ppm機)で比較した場合の削減比率。詳しくはこちらをご覧ください。https://www.epson.jp/products/bizprinter/smartcharge/ecology/
(※注釈3):エプソン調べ。SOMPOリスケアマネジメント株式会社への委託調査に基づく(2018年3月)。
(※注釈4)「出力環境アセスメント」…詳しくはこちらをご覧ください。
https://pd.epson.jp/greenmodel/lp_form/shutsuryoku_kankyou_assessment
(※注釈5)・提案当時(2020年)のデータとなります。・お客様の印刷環境を刷新するご提案の一部であり、機種同士を比較するものではございません。推定消費電力量、並びに推定CO2排出量はTEC値を基にしたシミュレーションとなるため、実態の削減効果とGAPが出る可能性があります。・また対象台数や機器構成により削減効果は異なります。上記の詳細(既存機種、提案機種等の情報)は開示しておりません。
・【年間推定消費電力量】:出力機器の総TEC値×52週で算出。
出力機器のTEC値については各製品のホームページもしくは国際エネルギースタープログラムへの登録情報を参照ください。
公開されている参考値の単位がkWh/週でない場合は、下記値に変換して計算。
①単位がkWh/年である場合は、52週で割った値をTEC値として扱う。②単位がkWh/hである場合は、公開値×24時間×7日をTEC値として扱う。
機種においてTEC値が公表されていない場合は、国際エネルギースタープログラムのプリンター基準、複合機基準もしくはデジタル印刷機基準における最大標準消費電力量の基準値を機器のTEC値として使用。複写機は複合機として扱っています。
・【年間推定CO2排出量】:消費電力のCO2排出係数を0.416kg- CO2 /kWhとし、年間推定消費電力量×CO2排出係数で算出。
(※注釈6)「 GX(グリーン・トランスフォーメーション)」…脱炭素社会の実現に向けて、クリーンなエネルギー中心の経済・社会、産業構造へと変革を図る取り組み
子田 吉之
こだ・よしゆき
1999年、エプソン販売株式会社入社。法人営業に従事。2019年から販売推進本部にてビジネスプリンター、ペーパーラボのマーケティングを担当。22年 より現職。企業の脱炭素化への取り組みや働き方改革を支援し、環境貢献活動を推進している。
ラインアップ大幅拡充で脱炭素社会の実現を加速!「エプソンのスマートチャージ」対応〈LM〉シリーズ3機種新登場
- 優れた低消費電力設計で消費電力量とCO2を削減 -
エプソンは、プリントやコピーの使用状況に合わせてプランや機器を選べる「エプソンのスマートチャージ」の新商品として、A3カラーインクジェット複合機『LM-C6000』『LM-C5000』『LM-C4000』の3機種を2023年2月10日より発売。
※「エプソンのスマートチャージ」対応〈LM〉シリーズの詳細はWEBでご覧ください。