目次

  1. 出荷停止となったフォークリフト
  2. 販売済みのディーゼル式ではリコールも
  3. フォークリフトエンジンで法規違反の可能性がある行為
  4. 豊田自動織機のフォークリフト販売実績
  5. 国交省は立ち入り検査 経産省も取引先への情報提供を指示

 出荷停止となったフォークリフトは、ディーゼルエンジン2機種とガソリンエンジン1機種の計3機種。経年劣化による排出ガス国内規制値の超過と、排出ガス国内認証に関する法規違反の可能性があるといいます。

 2020年後半に、北米向けガソリンエンジンの2021年用年次認証申請をするなかで、申請済のデータに懸念をもち、外部弁護士による調査を自主的に開始したことをきっかけに発覚したといいます。

 出荷停止となったフォークリフト用ディーゼルエンジンは次の通りです。

概 要   1ZS型 1KD型
認証申請年   2014年 2014年
排気量 1,795cc 2,982cc
搭載フォークリフト(積載能力) ジェネオ(1.5~3.5t)※ ジェネオ(3.5~8.0t)
2021年度販売台数 8000台 1400台
累計販売台数(2023年2月末時点)   6万600台 1万700台
劣化耐久試験での法規違反
排出ガス規制値超過

 ※「ショベルローダー」にも搭載

 出荷停止となったフォークリフト用ガソリンエンジンは次の通りです。

概 要   4Y型
認証申請年   2009年
排気量 2,237cc
搭載フォークリフト(積載能力) ジェネオ(1.0~3.5t)※
2021年度販売台数 7100台
累計販売台数(2023年2月末時点)   8万8300台
劣化耐久試験での法規違反
排出ガス規制値超過

 ※「ショベルローダー」にも搭載

 ディーゼルエンジン1KD型は、建設機械用として外販しています。これについても法規に定められた手順・方法に従っていなかったため、出荷を停止すると発表しました。

 フォークリフトの出荷停止期間中について、豊田自動織機は「ご使用中の機台への円滑なメンテナンスサービスや、お客さまの物流現場の状況に応じたご提案等を通じ、稼働への影響を最小限に留めるよう注力してまいります」とコメントしています。

 販売済みのディーゼルエンジン式フォークリフトは、経年劣化により排出ガス規制値を超過するため、リコールの準備を進めているといいます。「ご使用の継続にあたり、市場措置等に関するご連絡を差しあげるまでの間は、お客さまに何らかのご対応をいただく必要はございません」と説明しています。

 公道走行するディーゼルエンジン式フォークリフトを対象に「特殊自動車排出ガス規制(第1次規制)」が適用されました。2006年10月からの第2次規制では、ガソリンエンジン式フォークリフトならびに公道走行しないオフロード車に対しても適用されました。

 こうした規制が進む一方で、豊田自動織機では以下のような法規違反の可能性が見つかったといいます。

フォークリフト用ディーゼルエンジン

 排出ガスの成分の実測値を使用せずに推定値を使用していました。試験中に排出ガス中のPM値が高くなったため、燃料噴射装置の改良を行い、その後試験をやり直さず、改良品を装着した場合の推定値を試験結果としていたといいます。

 また、試験の運転モードをエンジン側の制御ソフト変更により成立させていました。本来、設備(試験ベンチ)側にて、試験で求められるエンジン運転条件を成立させるべきところを、設備の仕様上それが困難であったため、エンジン側の制御ソフトの一部を変更して試験を行っていました。

 建設機械用ディーゼルエンジンでも同じような行為があったといいます。

フォークリフト用ガソリンエンジン

 試験中に部品の交換を行いました。試験中に排出ガス中のNOx値が高くなったことから、O2センサ(燃焼状態を測定するセンサ)の影響を確認するため、一時的に仕様の異なるO2センサを使用してNOx値を測定し、試験を継続していました。

 また、排出ガス成分の実測値をそのまま使用していませんでした。一部の測定値を異常値としてそのまま使用せず、同型エンジンの別の耐久試験の測定値を試験結果としていました。

 2021年度の豊田自動織機のフォークリフト販売実績は4万4900台。このうち、エンジン車が1万7400台と全体の39%を占めています。出荷停止となったフォークリフトは1万6500台に上ります。

エンジン機種 台数
ガソリン車
超小型 WG972型 100台
小型 4Y型(出荷停止) 7100台
中型 1FS型 200台
ディーゼル車
小型 1DZ型 500台
1ZS型(出荷停止) 8000台
中型 1KD型(出荷停止) 1400台
大型 J08E型 100台
エンジン車 1万7400台
電動車 2万7500台

 国土交通省は3月20日、豊田自動織機の本社(愛知県刈谷市)へ立ち入り検査に入り、関係者から事情を聴いています。また、豊田自動織機に対し、次のような指示を出しています。

  1. 過去のエンジンを含めた事案の全容の解明と再発防止策を策定する
  2. リコールの必要なものは速やかに実施する
  3. ユーザーへの丁寧な説明や対応に努める

 経産省も次のような指示を出しています。

  1. 事実関係の究明
  2. 情報提供など顧客・取引先への適切な対応
  3. 問題の経緯や今後の対応についての十分な対外説明
  4. 原因の徹底究明、再発防止策の実施