目次

  1. ニッチなものづくりを支える技術
  2. 引きこもり状態だった過去
  3. 「親父との関係にケリを」
  4. 「もったいない」からの新規事業
  5. 「下町ボブスレー」で得た仲間
  6. ホームページで研究員とつながる
  7. 父に切り出した事業承継
  8. くだらないものグランプリに参加
  9. 仲間と新たなものづくりへ

 「うちは製造業の中でもわかりにくい、ニッチなものづくりをしている」と尾針さんは言います。

 試験片や試験用治具、試験装置を作るムソー工業は、取引先の約7割がJFEスチール、東京電力、旭化成などの企業、残る3割を大学や公的機関の研究所が占めます。

ムソー工業で製造する試験片

 「試験片とは材料試験用のテストピースです。例えば、車は全体の7割が鉄ですが、サスペンションやブレーキ、ステアリングなどにはそれぞれ異なる性質の鉄が使われます。使い方や構造、機能に合う最適な素材でなければ車の安全性を保てません。そのため開発段階で試験片を用いた材料試験を行います」

 材料試験は衝撃・圧力・時間・温度などあらゆる条件下で行われ、試験片が壊れるかどうか、もしくは壊れる条件を調べます。

 同社は主に金属素材の試験片を製造しています。「試験片で最も大切なのは、どの素材を用いても完成品は全く同じ形状にすること」といいます。

 少しでも形が違えば、正しい実験結果が出ません。しかし硬さや密度などそれぞれ特徴がある金属を全く同じ形状に加工するのは至難の業です。「職人たちは素材の特性を見極め、使う工具や削る速度などを工夫し、同じ形状にする技術があります」

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。