目次

  1. 離婚が金銭的打撃に
  2. 経営者ならではの離婚リスク
    1. 個人事業主の場合
    2. 法人の経営者の場合
  3. 離婚と雇用関係は別
  4. 離婚に至らないケースとは
  5. 相続がもたらす経営リスク
    1. 後継者が直面したトラブル事例
    2. 遺言書がトラブルを招くことも
    3. 相続トラブルを防ぐには
  6. 不安の種にPDCAで対策を

 後継ぎの皆さんは、離婚が経営に危機をもたらすかもしれないことをご存じでしょうか。まずは筆者が離婚経験のある男性経営者から直接聞いた話を紹介します。

 「髙橋さん、離婚後はすっからかんだよ。会社も家庭もうまくいっていると思っていたんだけどね。妻も会社の役員をしていたから自社株を持っていて、離婚のときに大変だったよ。もっと早く知っていれば対策もとれたんだけどね」

 「事業の万一に備えて役員報酬の一部を積み立てていたんだけど、経理をしていた妻から離婚の際に、それも財産分与の対象と言われてね。会社の万一に備えたものだから見逃してもらえないかと思ったけど、妻は全部わかっていたからね。顧問弁護士からもしょうがないですねと言われて、半分渡したよ……」

 このように、経営者や後継ぎ世代が万一に備えて準備していたことが、思わぬリスクになってしまうこともあります。その一つが離婚なのです。

 相談された皆さんは、想定以上に金銭的な打撃が大きかったといいます。時間をかけて離婚協議を重ねれば違った結果になったのかもしれませんが、話がまとまらずもめる時間やその際の労力を考えると、早く妥協して前に進みたいという気持ちになったからだともいいます。

 厚生労働省が公表している「令和3(2021)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、21年における婚姻件数は50万1116組で、離婚件数は18万4386組でした。離婚予備軍も考えると、後継ぎにとって対策は必須とも言えます。

 2019年の司法統計によると、男女ともに離婚理由のトップは「性格の不一致」でしたが、筆者が男性経営者から離婚理由を聞くと、7位にランクされた「家庭を顧みない」と言われたケースが多かったです。

 経営者にとって配偶者との離婚には、想定外のリスクが伴います。夫婦の一方が経営者の場合、一般家庭の離婚とは異なる点がいくつかあるということです。次章から順を追って解説します。

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