目次

  1. 創業1910年 日本最古の靴クリームメーカー
  2. 靴クリーム屋の息子と呼ばれて嬉しかった
  3. カタログもホームページもなし 時代が止まっていた
  4. 「売り方・売り先・製品」3つ改革 気づいた魅力は「日本最古」
  5. 先代も含め社員の大半からの反発に合う
  6. 製品の裏にある“ストーリー”を打ち出す
  7. 100年培ってきた手作りの技法を活かす
  8. 自治体や公共機関の制度やサポートを積極活用
  9. 最小限のリスクチャレンジをどれだけ実行できるか

 今から100年以上前、日本にも革靴が入ってくるようになりました。その流れで、ケア製品である靴クリームも輸入されるようになります。

 墨田区や台東区は革産業が盛んだったこともあり、靴クリームの需要が伸びるだろうと1910年、谷口化学工業所は誕生します。日本で初めての靴クリームメーカーでした。そして創業から113年経った現在でも、靴クリームを作り続けています。

現在も自衛隊員が愛用している靴クリーム「イーグルメダル」

 「墨田区という土地柄、自分と同じように家が商売をしている友だちも多く、子どものころは靴クリーム屋の息子、と言われていました。ただ自分のアイデンティティのようで、嬉しかったことを覚えていますね」

 将来は家業を継ぐだろうと何となく思っており、大学では経営学を専攻します。一方、両親から継いでほしいとの話がなかったこともあり、継ぐ、継がない、の判断は社会人になってから決めようと考えていました。

 そこで、基幹システムを扱うIT企業に営業として就職します。仕事は楽しく充実しており、5年ほど経つとさらに成長したいと福岡への異動を検討します。

 すると両親は、「自分の人生は自分で決断すればいいけれど、少しでも家業を継ぐ気があるのならば、今ぐらいの年齢が適齢かも知れないね」との言葉が返ってきました。

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