目次

  1. 下請法とは
  2. 工機ホールディングスの下請法違反内容
  3. 工機ホールディングス、コメントを発表

 公取委のパンフレット(PDF方式)などによると、下請法とは、下請け会社に対し、発注後に下請代金の額を減らしたり、協賛金・値引き・歩引き名目で発注後に一定金額を下請代金から差し引いたり、事務手続きの遅れなどから下請代金の支払日を遅らせたりすることを禁止する法律です。

 正式には下請代金支払遅延等防止法といいます。親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会から、違反行為を取り止めるよう勧告されます。勧告されると、企業名、違反事実の概要などが公表されます。

 公正取引委員会が認定した事実は以下の通りです。

 工機ホールディングス(2018年に日立工機から社名変更)は、電動工具向けホースカバーセットの製造を下請けの個人事業主に委託していました。単価は10年以上据え置かれた価格だったため、この個人事業主は、原材料価格の上昇などで製造原価割れが起きると考え、2020年12月~2021年1月、工機ホールディングスに対して、単価引上げを求める見積書を出しました。

 一方、工機ホールディングスは、自社の利益を優先し、下請業者の製造原価などを考慮することなく、単に区切りがよいとして設定した金額を提示し、実際には具体的な単価引上げの計画などなかったにもかかわらず、今後、段階的に単価を引き上げる旨を伝えました。

 このとき工機ホールディングスが提示した金額は、これまでより約17%上昇しましたが、個人事業主の見積単価よりも約46%低く、原価割れは解消していませんでした。

 下請業者は、工機ホールディングスから提示された金額では製造原価割れが継続すると認識していましたが、段階的に単価を引き上げるという言葉を信頼し、工機ホールディングスから提示された新単価で見積書を再提出しました。

 その後、個人事業主側の事情でホースカバーセットの製造は別業者に引き継がれることになりましたが、新しい別業者との価格交渉で決まったホースカバーセットの単価は、元の個人事業主との間で決めた新単価の3倍超だったといいます。

 工機ホールディングスは、元の個人事業主に対して、個人事業主が引き上げを求めて提出した見積単価を用いて計算した代金の額と下請代金の額との差額(約302万円)を支払っています。

 これに対し、工機ホールディングスは公式サイトで以下のコメントを発表しています。

本勧告において、当該下請事業者が最初に当社に対して提⽰した⾒積単価を⽤いて計算した代⾦の額と実際の下請代⾦の額との差額は、302万9268円と認定されました。上記差額はすでに当該下請事業者に返還しております。当社は、今回の勧告を真摯に受け⽌め、勧告内容を役員及び従業員に周知徹底するとともに、下請法遵守に関する社内研修を⾏うなど社内体制の再整備を図り、コンプライアンスの強化と再発防⽌に努めてまいります。

公正取引委員会からの下請代⾦⽀払遅延等防⽌法に関する勧告について(工機ホールディングス公式サイト)