価格転嫁とは 交渉方法や事例・役立つツールをわかりやすく紹介

価格転嫁は、原材料・人件費・光熱費などあらゆるモノ・サービスが値上げするなかで中小企業にとって必要な交渉です。中小企業庁や公正取引委員会はコストの上昇分を取引価格に反映することに消極的な企業を実名リストとして公表しています。今後、どのように価格交渉すればよいのか、交渉方法や事例、役立つツールを紹介します。
価格転嫁は、原材料・人件費・光熱費などあらゆるモノ・サービスが値上げするなかで中小企業にとって必要な交渉です。中小企業庁や公正取引委員会はコストの上昇分を取引価格に反映することに消極的な企業を実名リストとして公表しています。今後、どのように価格交渉すればよいのか、交渉方法や事例、役立つツールを紹介します。
目次
価格転嫁(かかくてんか)とは、原材料・人件費・光熱費のコスト上昇分を製品やサービス価格に上乗せすることです。下請取引の公正化や下請事業者の利益保護のための代表的な法律に「下請法」があります。「下請代金支払遅延等防止法」では、下請取引上の親事業者の義務と禁止行為を定めています。
しかし、それでも親事業者と下請け事業者との間の取引では、十分に価格転嫁が進んでいないことが課題となっていました。
価格の改定は、半期に一度、4月と10月に行う企業が比較的多いことから、中小企業庁は、毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に合わせ、受注企業が、発注企業にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。
中小企業庁の公式サイトによると、2024年9月時点の調査の結果は以下の通りでした。
価格交渉が行われた割合が増加するなど、価格交渉できる雰囲気が醸成されつつあり、価格転嫁率は49.7%でした。コストの増額分を全額価格転嫁できた企業の割合が増加しましたが、「転嫁できた企業」と「できない企業」とで二極化が明らかとなっています。
また、労務費の価格転嫁が難しいという課題が元々ありましたが、今回の調査では、価格交渉が行われた企業のうち、7割超が「労務費についても価格交渉が実施された」と回答しました。
一方で、サプライチェーンの段階と価格転嫁の関係については、受注企業の取引階層が深くなるにつれて、価格転嫁の割合が低くなる傾向がみられました。
このほか、政府は下請け企業との価格交渉や価格転嫁に後ろ向きな企業を法律にもとづいて公表しており、調査ごとに注目されています。
それでは、中小企業は価格転嫁の交渉をどのように進めればよいでしょうか?
クラフトバンク総研所長の髙木健次さんは、記事「値上げの交渉力を高める九つのポイント 建設業・製造業向けに解説」のなかで、交渉力を高めるポイントを詳しく解説しています。
さらに、段ボールをベースにしてデザイン性を持たせた美粧箱などの製造工程を担う「大光紙工」3代目社長の江崎高志さんも交渉の過程について、記事「取引先への値上げ交渉 新社長が心がけたデータと覚悟と『歴史を知る』」のなかで明らかにしています。
経済産業省の公式サイトでは、エネルギー価格の転嫁交渉(PDF方式)を解説しています。それによると、価格上昇の根拠を⽰すために、⼀般的には次のような“客観的なデータ”をエビデンスとして提⽰することが求められるといいます。
詳しくは以下の通りです。
基本料⾦だけでなく、電気料⾦に関しては燃料費調整額や再⽣可能エネルギー発電促進賦課⾦も含めた全体のコストを提⽰し、会社全体の売上に対して、エネルギーに係るコスト負担が何%を占めているか、数値によって明確に⽰すことを勧めています。
上昇率(例︓過去1年で○○%増)や、差額(例︓昨年1⽉より○○万円増)を推移表やグラフにして
⾒える化したり、統計情報(LNG輸⼊CIF価格など)の活⽤することを勧めています。
製造拠点、⼯場が独⽴している場合は、製造拠点や⼯場あたりのコストを把握し、できる限りシンプルかつ迅速にデータを算出し、取引先と交渉することを勧めています。
帝国データバンクの調査で、自社の商品・サービスについて多少なりとも価格転嫁ができた理由について尋ねたところ、コスト上昇の程度や採算ラインなど「原価を示した価格交渉」が45.1%と最多でした。
ただし、原価などすべてのデータを開示するのは難しい場合があります。そんな場合に活用できる「価格交渉支援ツール」を埼玉県の公式サイトが提供しています。特徴は次の通りです。
2025年2月からは、労務費の価格交渉にも対応できるよう、労務費データ(業種別現金給与総額、都道府県別最低賃金、男女間賃金格差)を分析できる機能を追加しました。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。