目次

  1. オリジナルブランドで人気に
  2. 帽子問屋での修業で成長
  3. 修業時代の経験が役立つ
  4. 熟練の職人によるものづくり
  5. 涼しくて軽い帽子を手作業で
  6. 生産は5万個を上限に
  7. 地元愛で直営店を立ち上げ
  8. ユーチューバーと組んで原点回帰

 田中帽子店が1年に作ることのできる麦わら帽子の数はおよそ5万個。2023年は上限に達する勢いです。好調要因はメディアへの露出。ここ数年、ぐっと増えたそうです。

 夏の風物詩と言えば、かき氷、風鈴、麦わら帽子。田中帽子店は数少ない麦わら帽子の工房です。父の英雄さんのころから取材依頼は多かったと言います。

 「ところが父は大のメディア嫌いときた。まず受けることはなかったんじゃないでしょうか。自分が出るのは嫌だけれど、メディアの効用はわかっていた。そこで息子に白羽の矢を立てた。父はわたしを広告塔に仕立てたんです」

 メディアに取り上げられようと思えばオリジナルブランドがあったほうがいい。英雄さんは田中さんへの承継を決めた段階で、「田中帽子店」を立ち上げました。2012年のことです。

 田中さんが修業先から戻ってきた16年には社長の座も譲りました。「社長といっても名ばかりです。実際の経営は父がやっていましたから」

メンズで一番人気の「シモン」(1万1千円)。ボルサリーノと呼ばれる伝統的なデザインです(田中帽子店提供)

 田中さんには継ぐという発想がありませんでした。英雄さんもそのことについて言うことはありませんでしたが、大学を卒業しても定職につかなかったことは許せなかったようです。

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