目次

  1. 雇用調整助成金とは
  2. 2023年4月以降の不正事案の公表基準
    1. 不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合
    2. 不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円未満の場合
    3. 社会保険労務士や代理人が不正に関与した場合
  3. プロルート丸光の支給決定取消及び返還通知の概要
  4. プロルート丸光、おわびと対策を発表

 厚生労働省の公式サイトによると、雇用調整助成金とは、新型コロナの影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、労使間の協定に基づき、雇用調整(休業)を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものです。

 雇用調整助成金をめぐっては、不正受給が社会問題となっており、2022年12月末時点で総額187億8000万円に上っています。

 これまで不正防止のため、厚労省は積極的に公表してきましたが、2023年4月以降は、不正事案の公表基準を公開し、自主申告・返還を促しています。

 2023年4月以降の不正事案の公表基準は以下の通りです。

 不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合は、原則として公表対象になります。ただし、労働局の調査前に不正受給について自主申告を行い、かつ、返還命令後1ヵ月以内に全額納付した場合であって、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大または悪質でないと認める場合は公表しないことができると定めています。

 不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円未満の場合は、原則として公表対象外となります。ただし、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大または悪質であると認める場合は公表対象となります。

 社会保険労務士や代理人が不正に関与した場合は金額、返還の有無にかかわらず公表対象となります。

 今回の不正受給は、プロルート丸光の公式サイトで経緯を公表しています。

 プロルート丸光の発表によると、一部で休業日に出勤している従業員がいるにもかかわらず休業をしたとし、また、短時間休業をしていない従業員がいるにもかかわらず短時間休業をしたとして雇用調整助成金を受給していました。

 大阪労働局の調査で本来助成金の申請対象にならないはずの時短勤務後の就業や休業日の出勤の一部についても申請対象としていたことが不正受給と認定され、返還金額2億6329万3056円の通知を受け取ったといいます。

 同社のサイトでは、弁護士による内部調査で、申請担当者が虚偽の説明をしていた経緯も明らかになっています。

2022 年9月 13 日付で不正の意思を持って申請を行ったわけでない旨の調査結果報告書を提出しました。
しかしながら、その後も大阪労働局が独自で当社社員へのアンケートやヒアリングを実施するなどの調査が続き、その過程で当初はヒアリング対象者が、内部調査の際には、勤怠打刻時間の修正はできない旨を弁護士に供述しており、それを弁護士も信頼して検証することはせず調査結果を出しましたが、大阪労働局に勤怠のログデータを提出したところ、勤怠打刻時間の修正を行っていることが判明しました。その後、大阪労働局に対しては、少しでも多くの助成金を得ることができるよう申請担当者が勤怠打刻時間を改ざんするなどの行為を行っていたことを明らかにしたため、最終的には、休業日に出勤している従業員がいるにもかかわらず休業をしたとし、また、短時間休業をしていない従業員がいるにもかかわらず短時間休業をしたとして受給したため、不正受給にあたるとの判断がくだされました。

第三者調査委員会からの調査報告書の受領日程について(PDF方式)

 これらについて、プロルート丸光は「当社の勤怠管理についての認識が不十分であったこと、申請担当者が、自らの一存で少しでも多くの助成金が支給されるようにと考えていたこと、及び当社が助成金申請業務を申請者一人に集中させ、申請に対するチェック体制を十分に構築できていなかったことなどに起因し、一部不適切な申請を行っていたことは事実」とコメントしています。

 プロルート丸光はおわびと対策も発表しています。

 「この度の雇用調整助成金支給決定取消及び返還通知を厳粛かつ真摯に受け止め、すでに社会保険労務士とも協議しながら、勤怠管理の整備に着手しており、勤怠管理への認識を改善し、また、管理業務の適切な分担やチェック体制の構築を行うなどして、再発防止への取組みの一層の強化を図ってまいります」