新規株式公開(IPO)でみずほ証券が独占禁止法違反のおそれ 公取委が注意
みずほ証券が主幹事を務めた新規株式公開(IPO)の公開価格設定プロセスで、公開価格を一方的に低く設定し、新規上場会社に不当に不利益を与えるおそれがあったとして、公正取引委員会は2023年4月13日、みずほ証券に対し、独占禁止法(優越的地位の濫用)の規定の違反につながる可能性があったとみて注意しました。
みずほ証券が主幹事を務めた新規株式公開(IPO)の公開価格設定プロセスで、公開価格を一方的に低く設定し、新規上場会社に不当に不利益を与えるおそれがあったとして、公正取引委員会は2023年4月13日、みずほ証券に対し、独占禁止法(優越的地位の濫用)の規定の違反につながる可能性があったとみて注意しました。
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新規株式公開(IPO)とは、少数の株主に限られていた株式を、売り出しや新規発行することで株式市場に上場させることを指します。公開された株式は投資家が市場で売買できるようになります。
経営責任が一層重くなり、内部の管理体制も強化する必要がある一方、資金調達しやすくなり、企業としての知名度・信用度も向上するメリットがあります。
中小企業整備基盤機構が運営するポータルサイト「J-Net21」によれば、次のような準備が必要です。
このうち、今回、問題になったのは、新規上場会社の支援や募集、売出しに係る株式の引受を行う証券会社の中で中心となる「主幹事」であるみずほ証券が優越的地位を濫用し、公開価格を一方的に低く設定したのではないかという点についてです。
独占禁止法19条は「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること」を“優越的地位の濫用”として禁止しています。
IPOの公開価格設定プロセスは、推薦審査(主幹事が取引所に上場の推薦を行うために、新規上場会社に上場適格性があるか調査を行うこと)の終了後に行われます。
上場予定日を延期したくない新規上場会社にとっては、主幹事を変更することは難しいため、主幹事は、新規上場会社に対し、優越的地位にあると考えられます。
公取委によると、みずほ証券は、主幹事を務めたなかで、公開価格を一方的に低く設定し、新規上場会社に不当に不利益を与えるおそれがあった事例が2つあったといいます。
2社の新規株式公開案件における初値は、いずれも公開価格を大幅に上回っており、2社は、自らが主張した想定発行価格などで新規株式公開ができていれば、より多くの資金を調達した可能性があった、と公取委はみています。
みずほ証券は、新規上場会社Aから他の証券会社のセカンドオピニオンに基づき十分に検討された想定発行価格の算出方法や水準等について説明を受けていました。
しかし、十分な検討をせずに、A社が主張した価格を下回る想定発行価格を設定し、A社に対し、当該価格を受け入れるよう要請しました。
みずほ証券は、仮条件の設定に当たって、機関投資家から妥当と考えられる新規上場会社Bの株価等に関する意見を電話ヒアリングにより聴取した際、意見を聴取した機関投資家のうち1社が、B社の類似会社との比較に基づき、B社の株価を想定発行価格よりも高く評価していました。
しかし、この機関投資家に想定発行価格が受け入れ可能かどうかを確認し、受入れ可能との回答を得たことのみをもって、想定発行価格と同額が妥当と考えられる株価であるとする意見を得たこととしていました。
また、仮条件を設定するときに参考にできるのは自らが回収した機関投資家の意見のみであるとして、B社が会社説明会において機関投資家と面談した結果を提示されたにもかかわらず、この面談結果を考慮しない理由について十分な説明を行うことなく、B社が主張した価格を下回る仮条件を設定し、B社に仮条件を受け入れるよう要請していました。
公正取引委員会は、みずほ証券の行為は、独占禁止法19条(優越的地位の濫用)の規定違反につながるおそれがあるとして、みずほ証券に対し、今後、公開価格設定プロセスで、新規上場会社と十分な協議するなどして、新規株式公開に関連する取引において、独占禁止法違反となるような行為をしないよう注意しました。
ただし、調査の結果、みずほ証券が2社と協議を行わずに合理性のない価格を設定したとまでは認められず、ただちに独占禁止法違反と認められるものではないと判断し、今回は注意にとどまりました。
みずほ証券の公式サイトは、以下のコメントを発表しました。
「この度の注意を真摯に受け止め、引き続き、法令・自主規制機関の諸規則等に従い、発行体の適切な資金調達機会の確保、投資家保護、市場の健全かつ持続的な発展のバランスを取った合理的かつ適正な公開価格設定プロセスとなるよう、努めてまいります」
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