目次

  1. 老舗の板前からも高い評価
  2. 大手にも負けない生産体制
  3. 売り上げの8割を失うピンチ
  4. 手仕事が大手メーカーから評価
  5. 職人仕事が生んだ「ときここち」
  6. 百貨店販売でできた人だかり
  7. 息子たちも生産をバックアップ

 「卵、変えたの?」

 東京・表参道にある江戸前寿司の名店、きどぐちの板前はなじみ客の問いかけに満面の笑みを浮かべました。とろけるようなその玉(ぎょく)に使ったのはいつもの卵でしたが、溶く道具が違いました。

 「『ときここち Pro』を完成させたわたしはその足できどぐちを訪れました。中小企業振興公社がつないでくれたのです。試した板前さんは目を丸くされていました。しかしそれも当然でしょう。10個の卵を30秒で溶くことができて、泡が立たないのですから」(利根さん)

業務用の「ときここちPro」のタペストリー(トネ製作所提供)

 食の世界で卵液づくりは厄介なものでした。大量の卵を一度に溶こうと思えば既存のホイッパーでは力不足であり、溶き終えれば泡の問題に悩まされます。泡立て器というくらいですから、溶き終わったボウルのなかは泡だらけ。そのまま調理すると味も食感も落ち、見栄えも損なわれます。料理人によっては冷蔵庫で一晩寝かすこともあるそうです。

 きどぐちのほか3軒の飲食店で製品テストを行いましたが、軽量化を求める声が一部あったものの、肝心の性能については満点の評価をもらいました。細部にわたって見直すことで20%の減量に成功すると、23年2月に東京で開催された国際ホテル・レストランショーでデビューしました。

 妻の涼子さんは黙っていられないといわんばかりにまくし立てました。

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