目次

  1. シフト制とは
  2. シフト制の留意事項
    1. 労働条件の明示
    2. シフトの作成・変更などに関するルール
  3. 就労・解雇に関する注意点
    1. 労働時間
    2. 休憩
    3. 年次有給休暇
    4. 休業手当
    5. 解雇
  4. シフト制労働者が抱きがちな不満と取組事例から見る対処法
    1. 不満:シフトの決まる日が遅れることが多い
    2. 不満:会社に行かないとシフトが分からない
    3. 不満:急な欠勤が出た時に出勤を求められる

 「シフト制」について厚生労働省は、次のように定義しています。

「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。

厚生労働省リーフレット「『シフト制』労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」

 なお、ここで示す「シフト制」には、三交替勤務のような、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数は決まっていて、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は含まないとしています。

 厚労省は、労使双方におけるシフト制のメリットとして「その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できる」という点を挙げています。

 一方、使用者の都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労働紛争が発生することもあると指摘しています。

 厚労省はこうした労働紛争を未然に防ぐ狙いから、シフト制の留意事項をまとめました。

 厚生労働省がまとめたリーフレットでは、シフト制の留意事項として以下の項目を挙げています。

 労働基準法では、労働契約を結ぶにあたって、使用者が労働者に対して所定の労働条件を書面により明示しなければならないと定めています。

 具体的な項目は労働基準法施行規則において定められています。シフト制労働契約の場合でも、以下の所定の事項を明示しなければなりません。

一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項

労働基準法施行規則が定める労働条件明示事項(厚労省「シフト制」リーフレットより)

 リーフレットでは、シフト制で特に問題となりやすい項目として「始業及び終業の時刻」と「休日」の2つを挙げています。

「始業及び終業の時刻」に関する留意点

 始業及び終業の時刻については、労働契約を結ぶにあたって、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは不十分です。

 すでに始業と終業の時刻が確定している日については、労働日ごとの始業・終業時刻を明記する必要があります。

 または、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要があります。

「休日」に関する留意点

 労働契約の締結時に休日が定まっている場合は、使用者は労働者にこれを明示しなければなりません。

 具体的な曜日などが確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方を示す必要があります。

 労働基準法では、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとされています。休日設定にかかる考え方を示す場合には、最低でもこうした内容を満たす必要があります。

 厚生労働省は、労働紛争防止の観点から、使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくないとしています。その上で、労使間において、シフト作成や変更にあたって次のようなルールを定めておくことを勧めています。

シフト作成・変更に関して定めておくとよいルール(厚労省「シフト制」リーフレットから)

シフトの「作成」に関するルール

 シフト制においては、具体的な労働日・労働時間の割り当てを決めていくことが、労働条件の重要な要素となっています。シフト作成に関わるルールとしては、以下のような項目が考えられます。

  • シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
  • シフトの通知期限 例:毎月○日
  • シフトの通知方法 例:電子メール等で通知

シフトの「変更」に関するルール

 いったん確定したシフトを変更する際のルールとしては、以下のような項目が考えられます。

  • シフト期間開始前に変更する場合、使用者や労働者が申し出る期限や手続
  • シフト期間開始後に変更・キャンセルする場合、その期限や手続

 なお、いったん確定した労働日や労働時間の変更は、基本的に労働条件の変更に該当します。そのため、変更には使用者と労働者双方の合意が必要である点に留意が必要です。

労働日・労働時間の設定に関する考え方

 上記のルールに加えて、労働者の希望に応じて以下の内容についてあらかじめ合意することも考えられます。

・一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
 例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する

・一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
 例:1ヵ月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務

・一定の期間において最低限労働する日数、時間数
 例:1ヵ月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る

 労働時間や休憩時間、年次有給休暇などに関する規定は、シフト制以外の労働者に対するものと同様です。

 労働時間の上限は原則1日8時間、1週40時間であり、この上限を超えて働かせるには36協定が必要です。

 1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、勤務時間の途中で与えなければなりません。

 所定労働日数、労働時間数に応じた日数の年次有給休暇が発生します。原則として労働者の請求する時季に年次有給休暇を取得させなければならず、「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。

 使用者の責に帰すべき事由で休業させた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要です。

 シフト制労働者と有期労働契約を締結している場合、期間中はやむを得ない事由がなければ解雇できません。期間の定めがない場合でも、客観的に合理的な理由等がなければ解雇できません。

 厚生労働省は、シフト制で働く人が抱きやすい不満と、不満にどう対処すればよいかを取り組み事例をもとに紹介しています。それに対する取組事例をまとめたリーフレットを出しています。

 厚生労働省「『シフト制』の円滑な運用のための取組事例 2023年3月版」(PDF方式)のリーフレットをもとに、働く人が抱える不満と対処事例を紹介します。

•シフトの決まる日が遅れることが多い

•遅い時には決まるのが勤務日の前日、ということも

•予定がある日にシフトが入れられてしまうなど、 希望がとおらないことがある

取組例:従業員の希望に合わせて、シフトを自動で作成・決定するためのアプリを導入。
改善されたこと:スマホで希望日を申請できるようになり、予定のある日にシフトを入れられることが減った。シフト表の出来上がる時期も早まった。

取組例:事前に2か月分のシフトを作成して掲示した上で、1か月前に再度従業員が確認。
改善されたこと:先のシフトが仮入れされ、従業員同士のシフトの融通などが行いやすくなった。

•シフトが紙で張り出されたり、配布されたりするだけ

•会社に行ったり担当者に聞かないとシフトが分からない

•休みが月末になった場合は、翌月初めのシフトを確認できずに欠勤になってしまうことがある

取組例:シフト共有アプリを導入し、従業員個人のスマホで確認できるようにする。またはメールやSNSで共有する。
改善されたこと:わざわざ事務所まで行って確認しなくてもよくなった。間違って欠勤してしまうことがなくなった。

• 急な欠勤が出た時に、元々休みの予定だった日に出勤しなければいけないことがある

• 特に、前日に「明日来て」と言われると、たまたま行ける時なら行くが、どうしても無理な時もある

取組例:各従業員が出勤できる日・できない日を、事前に把握しておく。
改善されたこと:元々予定がある日に、急に出勤してほしいと言われることが減った。体調不良などで欠員が発生した時の代替要員が、スムーズに見つかるようになった。