バックオーダーとは?発生する原因と対処法、防ぐ仕組みを解説
バックオーダーは、在庫が無い商品の注文を受けることを意味しています。ECサイトの運営においては、バックオーダーが発生する状況が良いのかを判断する必要があります。この記事では、バックオーダーの概要やリスクへの対処法、防ぐ方法を小売業者目線で中小企業診断士がわかりやすく解説します。
バックオーダーは、在庫が無い商品の注文を受けることを意味しています。ECサイトの運営においては、バックオーダーが発生する状況が良いのかを判断する必要があります。この記事では、バックオーダーの概要やリスクへの対処法、防ぐ方法を小売業者目線で中小企業診断士がわかりやすく解説します。
目次
バックオーダーとは、在庫が切れている商品の注文を受け付け、入荷次第、発送する仕組みです。入荷待ちの商品を注文することを指すケースもあります。
アメリカなど海外のECサイトでは一般的に使われており、日本のECサイトにおいても、ファッション業界やスポーツ用品業界などで使われるようになりました。人気商品や限定アイテムなど、需要が高く在庫が追い付かない場合もバックオーダーが活用されます。
なお、日本のECサイト業界では、バックオーダーは日本でなじみのない言葉であり、在庫が無い状態は共通していることから、「予約販売」や「予約注文」などと呼ばれることがあります。
ただし、厳密に言うと、バックオーダーは在庫が切れた商品の注文を受け付ける仕組み、予約販売と予約注文は発売されていない商品の注文を受け付ける仕組みと意味が異なります。
バックオーダーが発生する原因を、「需要側」「供給側」「第三者側」から見ていきましょう。
順にご紹介します
需要側の主な原因は、予期せぬ需要の増加があります。ある商品の人気が急上昇したり、予想以上の注文が発生したりした場合、供給が追いつかずバックオーダーが発生することがあります。
例えば、ソーシャルメディアや口コミ、有名人の影響などで特定の商品が話題になり、需要が急上昇するケースが挙げられます。ファッションを始めソーシャルメディアなどの影響を受けやすい業界で発生しやすい傾向があります。
供給側の主な原因は、2つの在庫管理の問題です。
例えば、売れ残りが発生しないように需要を厳しめに予測し、仕入れ量を絞りすぎた場合、バックオーダーが発生しやすくなります。時期性や季節性のある業種、運転資金に余裕のない出店者で起きやすい原因です。
出店者による仕入れ数量の誤りや需要予測を行っていないなどの理由が挙げられます。ECサイトの運営に人手をかけられない企業で発生しやすく、適切な在庫管理ができていないのが原因です。
第三者側の原因はさまざまあり、多くの業種で発生する可能性があります。
バックオーダーのメリットとデメリットをご紹介します。
ここでは、バックオーダーの仕組みを活用した場合の主なメリットを2つ紹介します。
出品者は在庫数量を最低限に抑えられるため、売れ残りのリスクを低減できます。
在庫切れでも受注を確保してチャンスロスを回避でき、在庫を絞れるためです。理論的には、在庫を一切持たずに仕入れ販売することも可能です。
顧客としては、在庫切れとなった商品を取り寄せ注文できます。バックオーダーのシステムがない場合、顧客は再入荷するまで度々サイトを見に行ったり、出品者に入荷日を問い合わせたりするなどの手間が増えてしまいます。
次に、バックオーダーシステムを導入した場合の注意すべきデメリットを4つ紹介します。
バックオーダーで注文を受ける場合、在庫販売と比べて業務が増えるため、管理を強化しないと間違いが起こりやすくなります。
例えば発注管理です。バックオーダーの注文に応じた商品の発注が必要になりますが、発注管理が不十分の場合、発注過多や発注不足の問題が起こってしまいます。特に発注不足の場合はクレームにもつながるので深刻です。
ほかにも、顧客からの問い合わせに対応するため、顧客ごとの納入予定日の管理も必要になってきます。そのためには商品発送の優先順位の管理も必須です。
バックオーダーでは、仕入れ先の製造や物流など、さまざまな原因による入荷遅延の可能性があります。商品の納入遅延が起こると、顧客満足度が低下してしまいます。
カスタマーレビューに不満の声が書き込みされてしまうリスクだけでなく、遅延によるキャンセル対応やクレーム対応のための人員確保も必要になるケースも考えられます。
バックオーダーは商品が入荷・発送されるまで、顧客を待たせる行為です。待たないと買えない人気商品ではなく、商品が急に必要になった場合や早く手に入れたいという場合、バックオーダー待ちは顧客側の大きなデメリットとなります。
バックオーダーは商品の入荷日が未定な場合や、製造停止などで入荷そのものがなくなるケースがあります。また、商品が不良品であったり、間違った商品であったりした場合、再度のバックオーダー待ちになってしまうこともあります。
そのため、顧客にとっては不確実性の高い発注であるため、商品を入手するまで不安を抱えることになります。
バックオーダーが、予期せず発生してしまった際の対処法を3つご紹介します。
バックオーダーが発生した場合、顧客とのコミュニケーションが非常に大切です。
バックオーダーとなった顧客は、いつ入荷されるか不安に感じます。そのため、入荷予定日を早く連絡し、不安を軽減することが重要です。早急に対応するため、メールの例文を準備しておくのもよいでしょう。
また、入荷予定日が分からないときや、納期が非常に長いときは、類似品や代替品の提案、キャンセルを受け付けるなど、柔軟な対応が求められます。
バックオーダーが発生した場合、仕入れ先へ速やかに連絡し、商品の納期の確認を行います。納期が長い場合は、代替提案をするために、類似品の検討をしましょう。
また、配送についても工夫をし、納期を短くすることも可能です。通常の配送が船便の場合、航空便への変更を交渉することで納期短縮を検討します。
自社でバックオーダーが発生した際の対応方法は、自社の業務在庫管理体制などの見直しです。今後バックオーダーが起きないように、商品の発注管理や受注管理、納期管理などを見直します。
バックオーダーを防止する方法や注意点をご紹介します。
在庫切れを防ぐために、過去の売上データや市場トレンドを分析し、商品ごとの需要変動を把握することで、需要予測を強化しましょう。
ただし、商品の種類が多い場合、すべての需要予測を強化するのは現実的・効率的ではありません。
そこで、商品を売上金額でグルーピングする「ABC分析」をご紹介します。ABC分析は、商品総額の80%を、A品目20%で占めているという状態を前提にした考え方です。
バックオーダーを発生させないために、需要予測をもとに在庫管理を最適化し、需要に対応するための適切な在庫レベルを維持しましょう。安全在庫や仕入れリードタイムを考慮し、適切な発注量や入荷スケジュールを管理します。
例えば、上記のABC分析で定めたA品目の場合、「定期発注方式」が考えられます。管理のポイントをご紹介します。
下記の条件において、図をもとに、9/1に発注すべき量を計算すると1,700になります。
【計算式】 |
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発注量 =(9/1~10/15の需要予測量+安全在庫)-(9/1時点の在庫量+発注残) =(2,500+200)-(1,000+0) =1,700 |
需要予測の方法は、こちらの記事で解説しておりますので参考にしてください。
仕入れ先の原因でバックオーダーの発生が頻繁に起こる場合は、仕入れ体制の見直しを検討しましょう。
仕入れ先との関係を強化し、サプライチェーンの改善を図ります。それでもバックオーダーが頻繁に発生する場合は、新たな仕入れ先を検討し、信頼性の高い仕入れ先を見つけ、リスク分散を図ります。
ECサイトの運営において、バックオーダーの発生予防と発生したときの対処法は簡単ではありません。もし、起こった場合は、顧客をはじめとした関係者との綿密なコミュニケーションや、管理の強化が必要です。
とはいえ、バックオーダーを抑えるために在庫の量を増やした場合、売れ残りのリスクが増大します。
そのため、バックオーダーが発生する原因を理解し、適正な在庫量を見極められるように管理体制を整えましょう。
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