目次

  1. 生成AI(ジェネレーティブAI)とは
  2. 生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方
    1. 生成AIが社会にもたらすインパクトは?
    2. 生成AIがデジタル人材育成やスキルに及ぼす影響は?
    3. 生成AI時代に必要な3つのスキル
  3. 生成AI、デジタルスキル標準とITパスポート試験に追加
    1. デジタルスキル標準(DXリテラシー標準)の改訂
    2. ITパスポート試験のシラバス改訂

 政府が設置した委員会の資料(PDF方式)によると、生成AI(ジェネレーティブAI)とは、コンテンツやモノについてAIがデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習の手法だと定義しています。

 たとえば、文章でいえば、ChatGPTのように、大規模なテキストデータを事前に学習させることで、いくつかの指示を出しただけで、文章生成、質問応答など様々な言語処理タスクを解くことを可能とする「大規模言語モデル(LLM)」が発達しています。

 経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」は、「生成 AI、中でも大規模言語モデルは、言葉がベースとなるため、利用にあたってのハードルが低く、年代を問わずに利用できるという特徴がある」と指摘しています。

 このほか、画像についても、「Stable Diffusion」などのように、2021年ごろから言語で指示にあった画像を生成するAIが相次ぎ登場しています。

 こうしたなか、経済産業省は、デジタル時代の人材政策に関する検討会での議論を踏まえ、「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」を取りまとめました。

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方(概要版)経産省の公式サイトから(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230807001/20230807001.html)

 生成AIは、大量データの要約や分析、提案を出すといった業務について高い能力を発揮することから、経産省は「ホワイトカラーの業務を中心に、幅広い業界/企業における、様々な業務の生産性向上等に寄与し、様々な社会課題の解決に資することが見込まれる」と紹介しています。

 とくに、事務サポートや法務など決まったルールや過去の事例に基づく業務を自動化できる割合が大きいとみています。

 企業の視点では、現時点では、情報収集・壁打ち・アイデア出しなどに限られた業務に限定されている生成AIですが、「組織全体におけるビジネスプロセスや組織の変革に利用することが本質的には重要である」として、経営者のコミットメント、社内体制整備、社内教育が必要となると指摘しています。

 さらに、多くの会社が生成AIを活用し始めると、サービスや製品がより似通ってくる可能性も考えられるため「顧客価値の差別化を図るデザインスキル」も必要だといいます。

 生成 AI により多くの作業が代替されれば、業務における意思決定や関係構築等の重要度が相対的に増していく。ホワイトカラーの仕事全般においても、定型作業が大幅に削減され、課題設定・解決策の検討や品質確認・レビューなどの業務に重きが置かれることが考えられます。

 そのため、人間ならではのクリエイティブなスキルや能力(起業家精神等)が一層重要となり、ユーザーやビジネスに近い役割であるビジネスアーキテクトやデザイナーのスキルを身につけることも重要となると予想しています。

 一方で、生成 AI に頼りすぎると、社会人が業務を通じて経験を積み重ね成長する機会が失われうるため、新卒社員など経験が浅い社会人に与える影響が大きいと指摘しています。

 「経営者などは、人材育成の観点から、そのような影響がありうることを認識し、経験を積む機会の代替などの対応を検討していく必要があると考えられる」と付け加えています。

 こうした状況を踏まえて、経産省は、生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキル(リテラシーレベル)について、次のように整理しました。

  1. マインド・スタンス(変化をいとわず学び続ける)やデジタルリテラシー(倫理、知識の体系的理解など)
  2. 言語を使って対話する以上は必要となる、指示(プロンプト)の習熟、言語化の能力、対話力(日本語力含む)
  3. 経験を通じて培われる、『問いを立てる力』『仮説を立てる力・検証する力』

 経産省の取りまとめをうけて、IPAはデジタルスキル標準(DSS)とITパスポート試験のシラバスについて生成AIの記載を追加しました。

 ITパスポート試験で生成AIが取り上げられるのは、周知・学習期間を踏まえ、2024年4月の試験から開始する予定です。また、生成AIに関するサンプル問題を8月下旬以降に公開する予定です。

デジタルスキル標準(DXリテラシー標準)の改訂
ITパスポート試験におけるシラバスの一部改訂

 IPAは、デジタルスキル標準の一部である「DXリテラシー標準」を改訂しました。DXリテラシー標準は、働き手一人ひとりがDXリテラシーを身につけることで、 DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目的に策定されています。

 今回の改訂では、生成AI利用で求められるスキル、リテラシー習得の必要性について、説明や例示を追加しました。

 その項目の一つ、「マインド・スタンス」では、次のような形で追加しました。

生成AI利用において求められるマインド・スタンス(2023年8月改訂補記)

・生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」等のビジネスパーソンとしてのスキルと掛け合わせることで、生産性向上やビジネス変革へ適切に利用しようとしている
・生成AI利用において、期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であることを理解している
・生成AIの登場・普及による生活やビジネスへの影響や近い将来の身近な変化にアンテナを張りながら、変化をいとわず学び続けている

IPAのニュースリリース

 ITパスポート試験のシラバスは今回、AIに関する既存の記載に生成AI関連の記載を拡充し、法務やセキュリティに関する項目にも生成AI関連の記載を新たに追加しました。

 例えば、ITパスポート試験の「ストラテジ」分野における「ビジネスシステム」の項目では、「AIの活用領域及び活用目的」の記載箇所に「生成AIの活用(文章の添削・要約、アイデアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成など)」を追加しました。

「AIを利活用する上での留意事項」の記載箇所に「AIの出力データにおける、誤った情報、偏った情報、古い情報、悪意ある情報(差別的表現など)、学習元(出典)が不明な情報が含まれる可能性」などを追加しました。

「著作権法」の項目では「AI が学習に利用するデータ、AI が生成したデータについて、それぞれ著作権の観点で留意する必要があること」を追加しました。