フィードフォワードとは メリットや実施方法を組織人事コンサルタントが紹介
フィードフォワードは、対話やディスカッションの場で人材育成や課題解決のために活用される手法です。この記事では、フィードバックとは何が違うのか、フィードフォワードのメリットや活用場面とその手法について、組織人事コンサルタントが詳しく解説します。
フィードフォワードは、対話やディスカッションの場で人材育成や課題解決のために活用される手法です。この記事では、フィードバックとは何が違うのか、フィードフォワードのメリットや活用場面とその手法について、組織人事コンサルタントが詳しく解説します。
目次
フィードフォワード(feed forward)とは、未来を見据えて「これからどうすべきか」を追求していく考え方です。
例えば、「どうしたらうまくできるようになるのか」や「どのような行動をすればよいか」など、未来に目を向けて課題を解決していこうとすることを指します。
フィードフォワードを実施すると、周囲を前向きな気持ちにする自律型人材の育成や良好な組織環境の醸成につながります。そのため、フィードフォワードは個人の特性を生かして主体性を引き出し、新しい発想を生み出せる手法として注目を集めています。
なお、一般社団法人フィードフォワード協会では、以下のように定義されています。
◆フィードフォワード
引用:フィードフォワードの定義|フィードフォワード協会
フィードフォワード思考を前提に、「現状にとらわれてしまいがちな部下や後輩、配偶者や子供に対して、コミュニケーションや観察を通して相手の状況を把握し、 相手に起きている出来事やそれにともなって体験している感情を受け止めた上で、その人が自分のゴールに意識を向けて行動できるように促す技術のこと」
◆フィードフォーワード思考
過去や現在よりも未来に目を向け、その未来に働きかけることでより多くの価値、成果、幸せを生み出すことができるとする考え方
フィードフォワード協会ではフィードフォワードを「技術」、フィードフォワード思考を「考え方」と明確に切り分けていますが、本記事では考え方と技術をあわせてフィードフォワードと呼ぶこととします。
フィードフォワードが将来や未来を見据える考え方であるのに対し、フィードバックは過去に目を向け、良い点や悪い点を振り返る考え方です。ほかにも、混同されがちな用語としてティ―チングやコーチングがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。
フィードフォワード |
未来に目を向け、課題解決や目的達成に向けて主体的な行動を促すこと。 効果的な場面:社内ミーティング、育成面談など |
フィードバック |
過去に目を向け、良い点や改善が必要な点を振り返ること。視点が過去に向いている点がフィードフォワードと異なる。 効果的な場面:施策の振り返り、人事評価面談など |
ティーチング |
業務や知識などを教えること。指導者が答えを持って教える点がフィードフォワードと異なる。 効果的な場面:業務の引き継ぎ、OJTなど |
コーチング |
対等な目線で相手と対話し、気付きを促すことで主体性を引き出すこと。問いを繰り返すことで気付きを促す点がフィードフォワードと異なる。 効果的な場面:1on1ミーティング、目標設定面談など |
人材育成においては、これらの手法を場面に応じて使い分けることが大切です。
PDCAサイクルは、Plan(計画)・ Do(実行)・ Check(評価)・ Act(改善)の頭文字をとったものです。生産管理や事業プロセスを円滑に進めるためのフレームワークとして活用します。PDCAの各プロセスを順番に繰り返すことで、継続的なブラッシュアップが可能になり、経営目標を達成しやすくなります。
PDCAサイクルは、過去に目を向けてフィードバックを繰り返すので、実行スピードが遅くなりがちです。一方、フィードフォワードは未来に目を向けて課題解決を促すため、解決までのスピードが早いことが特徴です。
また、PDCAサイクルで振り返る場合「なぜできなかったのか」を見つめるところから始まります。フィードフォワードの場合は「どうしたらできるようになるのか」を先に考えるため、失敗に囚われすぎず、未来に目を向けられるという効果があります。
フィードフォワードのメリットを社員が理解していれば、導入はよりスムーズに進むでしょう。ここでは、主なメリットを三つ紹介します。
フィードフォワードを導入する最大の目的は、人材育成です。人が育つ組織は、組織そのものの持続的な成長を促進します。フィードフォワードをコミュニケーションに用いることで、主体的に物事を考えて実行できたり、目標達成のために前向きに努力する気持ちを高めたりできます。この前向きな気持ちが、自身の成長欲求を高め、目標達成意欲の向上につながります。
フィードフォワードは、相手の欠点を指摘したり、意見や考え方を否定したりしません。そのため、良好な人間関係を構築することに役立ちます。できないことを厳しく指摘ばかりする環境だと、職場の雰囲気がギスギスして人間関係が悪化します。場合によってはハラスメントと受け止められることもあるでしょう。
「大変だけどお互い頑張ろう」と切磋琢磨できるのは、良好な人間関係があってこそです。フィードフォワードを導入して良好な対話を生むことは人間関係の構築・ハラスメントの防止にも役立ちます。
フィードフォワードによって前向きな組織風土の形成が進むと、新しいアイディアの創出や業務プロセスの変革を起こしやすくなります。「自分の意見を否定されないことで安心して意見が言える」「チャレンジして失敗しても責められない」という組織風土があれば、新しい挑戦や革新に臆せず踏み込めるためです。
フィードフォワードを導入しようとしても、旧来のフィードバックに慣れている状態では思考が上手く転換できないでしょう。フィードフォワードがうまく根付かなかったり、適切におこなわれるまで時間を要したりする可能性があります。
フィードフォワードを実施しても、指導される側や組織全体の成長には時間がかかります。成果を出すためには継続的な実施が必要です。関係者たちのフィードフォワードへの理解を深めたり、サポートする教育体制を整えたりするなど、継続しやすい環境づくりが必要です。
フィードフォワードを活用できる場面をあらかじめ把握しておけば、より効果的に実践が可能です。ここでは、具体的な場面を二つ紹介します。
フィードフォワードは、月次の定例会やアイディア出しのミーティングなどでも活用できます。過去の失敗にとらわれず、将来に向けた柔軟な発想が生まれる機会が増えたり、停滞した議論が円滑に進むようになったりするなど、限られた時間でおこなわれるミーティングでより良い成果の創出に貢献できます。
1対1の対話場面でもフィードフォワードを活用できます。特に評価面談など、過去を振り返る必要のある場面では「なぜ失敗したのか」「何がいけなかったのか」を考えがちです。フィードフォワードでは「どうすれば成功できるのか」「どのような行動をすればよいのか」という思考を促すため、部下の意欲喚起や問題解決力の向上が期待できます。
また、1on1ミーティングのように部下の成長を目的とする対話でも同様です。安心して話せる場だからこそ、良い対話につながるのです。
ここでは、フィードフォワードを導入する際のポイントを解説します。間違った方法でフィードフォワードを導入しても、期待する効果は得られません。ここで紹介するポイントを意識して、導入の効果を高めましょう。
フィードフォワードを導入するときは、まず相手の許可を得ることが大切です。唐突に何かを指摘されたり、提案されたりすると、どうにも押しつけがましく感じます。「今回の件について話したいことがあるのですが、よいですか?」や「お伝えしたいことがあるのですが、話していいですか?」など、話すことの許可をもらうようにしましょう。
聞き手に安心感を与えるだけでなく、聞き手の聞く姿勢をつくれるので対話が進みやすくなります。伝えにくい内容のときは「あなたにとって耳の痛い話かもしれませんが、少しだけ聞いてもらえますか?」と投げかけると、相手への配慮にもつながります。
フィードフォワードで将来の方向性を見出すためには、現状を具体的に伝えることが重要です。例えば「今月〇〇の作業で、3回同じミスをしているよね」や「今月の目標は〇〇だけど、△△のようだね」など、具体的な事実をもって話をしましょう。「いつも同じミスをしているよね」や「目標に全然足りてない」といった抽象的な表現は、人によって捉え方が変わってしまいます。そのうえ、事実と異なる指摘であれば指摘された人も不愉快に感じます。
フィードフォワードを課題解決に活用するときは、未来志向を意識しましょう。過去の問題を責めるのではなく、未来に向けてどのように解決できるかを投げかけることが重要です。
悪い例 | 良い例 |
---|---|
なぜ、これまで何もしなかったの? | これから何をしていけばいいと思う? |
何回言えばわかるの? | 同じミスをしないようにするためには、どうすればいいと思う? |
なぜスケジュールを守れなかったの? | どうすればスケジュールを守れる? |
オープンな質問により生まれる対話は、相互理解の促進につながります。自分の望む回答と異なる場合でも、根気よく対話を繰り返したり「私はこう思うよ」と意見を提案したりして、理解を深めることが大切です。
時代の変化が激しい現代において、過去を執拗に掘り下げて解決策を見出そうとしても、変化の激しい世の中にはついていけません。フィードフォワードを活用すれば、新たなアイディアや解決方法を創出する前向きな姿勢が養われます。社員一人ひとりが成長するのはもちろんのこと、その行動が組織の成果にもつながることは間違いありません。
直接的な効果が見られるまでには時間を要するかもしれませんが、諦めずに続けることが大切です。この記事を読んで、一人でも多くフィードフォワードにチャレンジをする人が増えることを祈っています。
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