商圏とは?調べ方から活用するポイント、注意点まで簡単に解説
店舗経営をされる人にとって、商圏分析は重要です。商圏分析は複雑な印象がありますが、無料で簡単に実施できる方法があり、誰もが商圏分析を実際のビジネスへ生かすことができます。これまで200社以上の中小企業のコンサルティングをしてきたマーケティング&PRコンサルタントが解説します。
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目次
商圏とは、自店舗を利用する顧客が住んでいる、または働いている範囲を指します。どの店舗も同じ商圏ではなく、業態、競合の有無、移動のしやすさなどで変わるのが特徴です。
そんな商圏には三つの種類があり、距離によって分類されます。ここでは、商圏の種類と商圏の使い方に関して解説します。
商圏には大きく分けて三つの範囲(一次商圏、二次商圏、三次商圏)が存在します。これらの範囲は、店舗からの距離で分類されています。また、商圏の範囲によって移動手段が異なり、商圏範囲が狭ければ徒歩や自転車、商圏範囲が広ければ自動車や電車での移動となります。
一次商圏とは、顧客が店舗まで徒歩10~15分で到着する範囲を指します。距離に換算すると、徒歩であれば800~1200m程度であり、最寄品商圏とも呼ばれます。最寄品とは、日用品や食料品など、日常の生活行動圏内で購入する商品のことです。
また、一次商圏に含まれることが多いものに、足元商圏という、店舗まで徒歩5分程度で到着する範囲を指す商圏もあります。距離に換算すると300~500m程度となり、コンビニエンスストアなどの業態がわかりやすい事例です。
二次商圏とは顧客が店舗まで自転車で10~15分で到着する範囲を指します。距離に換算すると、3~10km程度であり、中間品商圏とも呼ばれます。
三次商圏とは顧客が店舗まで電車や車で30~40分で到着する範囲を指します。距離に換算すると、車であれば12~16km程度(400m/minで計算)、電車であれば30~40km程度(1km/minで計算)であり、専門店商圏とも呼ばれます。
商圏とは何かが明確になったら、次は商圏の効果的な使い方を理解することが大切です。店舗運営には、どのくらいの範囲を対象に、どのような顧客層を狙って、どのくらいの投資を行うべきかの判断が必要となります。このとき商圏を分析すると、店舗運営に必要な戦略が見えてきます。
立地を決める際に商圏を分析して、市場と競合の状況を把握することが重要です。対象の商圏にどのような人がどのくらいいるか、どのような競合がいるのか、このような市場と競合の状況が、出店後の売上を左右するためです。
例えば、小学生向けの体操教室を学生街に出店しても見込み客が少なく、集客が期待できません。また、一度特定の場所に出店するとプロモーションとは異なり、簡単に変更することができません。そのため、新規出店の際には十分な事前調査が必要となります。
販促エリアを決める際に、商圏を分析して、販促が効果的なエリアを把握することが重要です。見込み客が多い商圏にて十分な販促を行わないと、機会損失となります。また、商圏外にて販促活動を行っても無駄な投資となってしまいます。
例えば、「コンビニがオープンします」というチラシを、電車のつり革広告で見ることはありません。コンビニは足元商圏であり、電車での移動範囲は商圏外であるためです。このように商圏に合わせて販促活動を行うことが大切です。
戦略は闇雲に決めるのではなく、商圏分析によるデータを元に決めていくことが重要です。どのような顧客層がターゲットになるのか、ターゲットとする顧客層によって販売促進の施策は変わってきます。
例えば、レストランを運営する際に、若者向けとファミリー向けでは商品、内装、チラシの表現方法などすべて変わってきます。
また、商圏分析を元に売上を予測することによって、適切な金額で投資を行うことができます。このように、店舗の戦略は商圏分析によるデータを元に決めていくことが重要です。
「みなさんの店舗ではどこまでの範囲が商圏になりますか?」
「そこにはどのくらいの人が住んでいますか?」
フランチャイズ店では、このような商圏データを把握していることが多いものです。しかしながら、中小企業においては、これらの商圏データを把握せずに店舗を運営している方が大勢います。このような場合、どうしても店舗の戦略に差がでてきてしまいます。
店舗戦略を練るうえで重要な役割を担う商圏は、誰でも調べることが可能です。ここからは、商圏を調べる方法を解説します。
最初に必要なのは、商圏範囲の目安を知ることです。商圏範囲を決めるときは半径〇mの円を描くことが多いため、まずは商圏の距離を特定する必要があります。商圏の距離は各店舗の地理的な状況や競争環境で変化しますが、概ね下記のような目安があります。
施設 | 商圏範囲の目安 | 移動手段 |
---|---|---|
コンビニエンスストア | 500m以内 | 徒歩 |
飲食店(個人経営の定食屋など) | 500m以内 | 徒歩 |
ファミリーレストラン | 2~3km | 車 |
ドラッグストア | 2~5km | 車 |
デパート・百貨店 | 10~20km | 車 |
商圏範囲の目安がわかったら、次は人口や世帯数を把握しましょう。これらのデータを把握するためのツールにはさまざまなものがありますが、ここでは誰でも無料で使える地図でみる統計(jSTAT MAP)を紹介します。
jSTAT MAPは、総務省統計局が整備しているポータルサイトである政府統計の総合窓口(e-Stat)で見つけることができます。
jSTAT MAPを用いることによって、対象の場所から半径〇mの円を描き、その範囲内の統計データを抽出することができます。ここでは一例として、東京都の子育て世帯が住みやすい街として知られている清澄白河駅を選択し、1kmで円を描きました。
e-Statにログインし、リッチレポートを作成することによって、上記で指定した清澄白河駅1kmでの年齢別の人口を確認することができます(右図赤枠)。また指定したエリアでの人口構成比を、区や東京都の比率と比較することも可能です。統計データの抽出方法は、下記見出しの①統計データの抽出方法で解説していますので、参考にしてください。
この人口構成比の図によって、本エリアでは25~44歳の人口が東京都や江東区全体の比率より高いことがわかりました(左図赤枠)。このように、無料のツールでも、地域特性を簡単に調査することができます。
ここからは、統計データの具体的な抽出方法を解説します。
(1) e-StatにログインしてjSTAT MAPを開きます。
(2) 左上のメニューから「統計地図作成」をクリックし、「レポート作成」を選択します。
(3)「シンプルレポート」と「リッチレポート」が選択できるので、リッチレポートを選択します。
(4)リッチレポート作成の画面が表示されるので「次へ」をクリックします
(5)左側に表示される「設定」から、設定したいエリアの半径を選択し、地図上で任意の場所を選択します。
(6)地図上で選択した場所に円が描かれます。
(7)「リッチレポートを作成する」をクリックするとレポートが作成され、統計データを抽出することができます。
次に、実際に歩いてみる(フィールドワーク)ことによって、データだけではわからない「商圏バリア」「人の変化」「競合の店舗」などを確認しましょう。
商圏バリアとは、お客様が来店する際に妨げになるものです。例えば、大きな河川や線路などによって遠回りする必要がある場合が挙げられます。このような場合、地図上の距離よりも歩行距離が長くなってしまうため、実際に歩いて確認することが有効です。
曜日や時間帯による、人の変化を観察することも大切です。該当エリアでは、平日と土日でどのような変化があるのか、朝昼夜ではどのような人がどのくらいの数いるのかを確認することで「土日のランチで集客できそうなのか」「昼と夜ではターゲット層を変えるべきなのか」などを事前に把握できます。
また、競合の存在は集客に大きく影響する要素なので、出店前に把握しておきましょう。どのような商品を扱っているのか、どのような顧客層が来店しているのか、強みと弱みは何か、可能であれば実際に競合の商品を購入して体感しましょう。
実際に購入することで、例えばランチであれば、味、店内の雰囲気、提供スピード、スタッフの対応、来店している顧客層などを確認できます。
綿密に商圏分析ができたとしても、それだけでは自己満足で終わってしまいます。ここからは、商圏分析を実際にビジネスに活用するためのポイントを解説します。
e-Statなどの統計データおよびフィールドワークによって地域特性がわかったら、次は、地域特性に合わせた戦略をたてることが大切です。
例えば、「年齢別人口」のデータによってファミリー層が多いことがわかった場合、ターゲットをファミリーに拡大して、商品やチラシのメッセージの変更を検討することができます。
また、「人員別世帯数」のデータによって一人世帯が多いことがわかった場合、居酒屋などの飲食店は、夜の定食メニューを作るといった戦略を検討できるでしょう。このように、商圏データを活用すれば、思いつきや流行りではなく、根拠をもって地域特性に合わせた戦略をたてることができます。
商圏の範囲によって、プロモーションの方法は異なります。商圏の範囲によって、顧客の行動範囲が異なるためです。そのため、商圏に合ったプロモーション方法の選択が必要になります。
例えば、近年SNSでの集客が流行っていますが、商圏が狭くなるほどSNSでの集客効果は弱くなる傾向にあります。SNSなどインターネットを用いた仕組みは、情報を広く届けることに強みがあるためです。
狭い商圏においては、人が集まる場所にリーフレットを置いたり、看板を設置したりすることが効果的です。このように、商圏の範囲に合ったプロモーションを選択することが重要となります。
チラシ配布などのプロモーションを実施した後は、商圏内の統計データと顧客分布データを元にPDCAを回すことが大切です。プロモーションを実施しても、一度で理想の状態に到達することは難しく、何度も改善を繰り返すことによって効果を発揮するためです。
例えば、商圏内で人口分布と顧客分布を比較することによって、人口の割に顧客が少ないエリアがわかります。このようなケースでは動線から外れている場合があるため、例えば「該当のエリアで集中的にチラシを配布する」といった改善策を実施することができます。
最後に商圏範囲を決めるときの注意点として「時勢による商圏範囲の変化」「顧客の理解」を解説します。
世の中の流れの変化に伴い、商圏の範囲が影響を受ける場合があります。商圏範囲を決める際には、これらの変化を捉えることが重要です。
例えば、ネットショッピングの普及で遠くに出かけなくても欲しい商品が入手できるようになったため、商圏範囲は狭くなっています。
同様に、人口の高齢化や若者の車離れなどによって、商圏の範囲が影響を受ける場合があることも留意しておきましょう。
商圏データを最大限に生かすためには、統計データだけではなく、どのような人が、どのような課題感をもって、なぜ当社の商品を購入したのかなど、具体的な顧客像を理解することが大切です。そのためには、顧客をしっかりと観察し、ときにはヒアリングを行うことも必要です。
顧客像の理解なしで商圏データだけを分析しても意味がありません。顧客をしっかり理解したうえでこそ、商圏データの分析は効果的なものとなります。
商圏分析は、戦略を構築する際の土台となります。商圏分析によって、誰もがデータを元に根拠をもって戦略を構築することができるからです。
また、データを活用することによって、たとえ失敗したとしても、成功するまで改善を続けることができます。
この記事では無料の分析ツールをご紹介していますので、ぜひ試してみてください。
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