目次

  1. 改善基準告示とは 改正はいつから?
    1. 拘束時間とは
    2. 休息時間とは
  2. 改善基準告示改正の経緯とポイント
    1. トラック運転手の改善告示基準
    2. タクシー・ハイヤー運転手の改善基準告示
    3. バス運転手の改善基準告示

 厚労省によると、脳・心臓疾患による労災支給決定件数は、運輸業・郵便業がすべての業種のなかで最多となるなど、長時間・過重労働が課題となっています。

 自動車運転者の長時間労働を防ぐため、トラック、ハイヤー・タクシー、バスなどの自動車運転者の拘束時間の上限、休息期間について「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」が設けられています。

 改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた1997年以降、改正されていませんでしたが、2022年12月に自動車運転者の健康確保などのため見直され、拘束時間の上限や休息期間の改正が2024年4月1日から施行されます。

 拘束時間とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間、すなわち、始業時刻から終業時刻までの使用者に拘束されるすべての時間をいいます。

 休息時間とは、勤務と次の勤務との間にあって、拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者のまったく自由な判断に委ねられる時間をいいます。休憩時間や仮眠時間などとは本質的に異なるものです。

 働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定され、2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。自動車運転の業務などはこの適用が猶予されていましたが、2024年4月からは上限規制が適用になります。

 厚労省の公式サイトによると、自動車運転者の時間外労働の上限は、2024年4月から原則月 45 時間・年 360 時間、臨時的特別な事情がある場合でも年 960 時間となります。これも踏まえて、改善基準告示も見直されました。

 厚労省は改善告示基準の改正についてQ&A(PDF方式)も公表しています。

トラック運転手の改善告示基準のリーフレット(厚生労働省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html)

 2024年4月からのトラック運転手の改善基準告示は以下の通りです。予期し得ない事象や特例、休日労働などの細部については、厚労省の公式サイトで確認してください。

拘束時間

 1年3300時間以内、1ヵ月284時間以内。ただし、例外として、労使協定により、1,2を満たせば、1年:3400 時間以内、1ヵ月310 時間以内(年6ヵ月まで)まで延長できます。

  • 284時間超は連続3ヵ月まで
  • 1ヵ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める

1日の拘束時間

 13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安)。例外として宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、16 時間まで延長可(週2回まで)。

1日の休息期間

 継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9 時間を下回らない。例外として宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続 8 時間以上(週2回まで)。休息期間のいずれかが 9 時間を下回る場合は、運行終了後に継続 12 時間以上の休息期間を与える必要があります。

連続運転時間

 4時間以内。運転の中断時には、原則として休憩を与える必要があります(1回おおむね連続10分以上、合計30分以上)。10分未満の運転の中断は、3回以上連続しないことが必要です。

 例外としてサービスエリア、パーキングエリアなどに駐停車できないことにより、やむを得ず 4 時間を超える場合、4時間30分まで延長可。

タクシー・ハイヤー運転手の改善告示基準のリーフレット(厚生労働省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html)

 2024年4月からのバス運転手の改善基準告示は以下の通りです。予期し得ない事象や特例、休日労働などの細部については、厚労省の公式サイトで確認してください。

1ヵ月の拘束時間

 日勤なら288時間以内、隔勤なら262時間以内です。ただし、隔勤の場合、地域的その他特別な事情がある場合、労使協定により270時間まで延長可(年6ヵ月まで)

1日の拘束時間

 日勤の場合、13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)。隔勤なら2暦日の拘束時間は、22時間以内、かつ、2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内となります。

1日の休息時間

 日勤の場合、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないこと。隔勤なら2暦日の休息期間は、継続24時間以上与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない必要があります。

バス運転手の改善告示基準のリーフレット(厚生労働省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html)

 2024年4月からのバス運転手の改善基準告示は以下の通りです。予期し得ない事象や特例、休日労働などの細部については、厚労省の公式サイトで確認してください。

1か月(1年)、4週平均1週(52週)の拘束時間

 以下の①②のいずれかを選択する必要があります。

①1か月(1年)の基準…1年:3,300時間以内、1か月:281時間以内。例外として、貸切バス等乗務者の場合、労使協定により、1年:3400時間以内、1ヵ月:294時間以内(年6か月まで)、281時間超は連続4か月まで延長可。

②4週平均1週(52週)の基準…52週:3300時間以内、4週平均1週:65時間以内。例外として、貸切バス等乗務者の場合、労使協定により、52週:3400時間以内、4週平均1週:68時間以内(52週のうち24週まで)、65時間超は連続16週まで延長可。

1日の拘束時間

 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)

1日の休息期間

 継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない必要があります。

運転時間

 2日平均1日:9時間以内、4週平均1週:40時間以内。例外として貸切バス等乗務者の場合、労使協定により、4週平均1週44時間まで延長可(52週のうち16週まで)。

連続運転時間

 4時間以内(運転の中断は1回連続10分以上、合計30分以上)。高速バス・貸切バスの高速道路の実車運行区間の連続運転時間は、おおむね2時間までとするよう努める。