工場・事務所の夏の電気料金を20万円削減 藤沢製本の省エネと働き方改革
製本業「藤沢製本」(滋賀県大津市)は、2023年7月の電気料金が約32万円と前年同月と比べて4割(約20万円)削減することに成功しました。電気代削減の秘訣は、「デマンド契約」で最大需要電力を抑えつつ、補助金を活用して照明をLEDに変えたこと。そして何より、残業や土日出勤を大きく減らす働き方改革が大きく影響しました。詳しい取り組みを代表取締役の藤沢佳織さんに聞きました。
製本業「藤沢製本」(滋賀県大津市)は、2023年7月の電気料金が約32万円と前年同月と比べて4割(約20万円)削減することに成功しました。電気代削減の秘訣は、「デマンド契約」で最大需要電力を抑えつつ、補助金を活用して照明をLEDに変えたこと。そして何より、残業や土日出勤を大きく減らす働き方改革が大きく影響しました。詳しい取り組みを代表取締役の藤沢佳織さんに聞きました。
滋賀県にある藤沢製本は1963年創業。以来、一般書籍、学生参考書などを専門としてきた製本会社です。
工場には製本のための大型機械が並んでいます。本の検品が必要なので、蛍光灯は120本。それでも明るさが足りず手元に照明スタンドが必要でした。空調設備もありましたが、あまり涼しくなりません。毎夏になると汗の止まらぬ工場で働くスタッフたちが“激やせ”してしまうほどでした。
そんな工場・事務所の電気料金は2021年7月で46.7万円でした。
「毎月の出費を10万円でも抑えたい」と考えた藤沢さんは、滋賀県が開催しているセミナーに出て、国が実施している「省エネ診断」を知り、申し込むことにしました。工場内の診断に来た専門家からは補助金を使った省エネのほか、電気料金抑制のためには、最大需要電力(デマンド値)を下げる工夫をしてはどうかと提案を受けました。
工場には、電力会社が30分最大需要電力計(デマンド計)の組み込まれた電子式電力量計が取り付けられています。デマンド計は、30分間の電気の使用量を計測し平均使用電力(kW)を出し、1ヵ月の中で最大値が、電気料金の基本料金に影響します。
藤沢製本の場合、2021年7月までの過去1年間の最大値は107kWでした。ここから省エネの取り組みが始まりました。
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藤沢さんがまず取り組んだのは、このデマンド計に表示される最大需要電力を減らすことです。消費電力の大きくなる機械の立ち上げのタイミングをずらしたりすることで、その後は過去1年間の電力需要の最大値を96kWまで抑え、電気料金の基本料金を1.5万円下げることができました。電力使用量も月あたり約1500kWhを減らすことに成功しました。
しかし、2022年7月の電気料金は53.2万円。コロナ禍明けの世界的な原油需要の増加や、ロシアのウクライナ侵攻で電気料金の単価が上がっていたためでした。
そんなとき、藤沢さんは、滋賀県の省エネ・再エネ等設備導入加速化補助金の補助率が1/3から1/2へと引き上げられたことを知ります。
そこで、300万円かけて蛍光灯120本をLEDに切り替え、空調設備を新調する決断をします。
LEDを導入したのは2023年1月14日。
藤沢さんは「LEDに交換すると、まぶしいとさえ感じるほどでした。工場の雰囲気も一気に変わりました。この日は忘れられない日になりました」と話しました。工場内が明るくなったことで、本を検品する作業も改善されました。
藤沢さんの改革はさらに続きます。
深夜残業や休日出勤している限り、電力使用量を減らすのは限度があります。元々は出版社から依頼された仕事はすべて受けるという方針でしたが、藤沢さんは「深夜まで働いたり、休日出勤してもらったりと明らかにキャパオーバーでした」と振り返ります。働く人たちの負担も大きく、利益率も決して良くなりません。
そこで、藤沢さんは「会社の方針として、残業も休日出勤もやりません」と伝え、仕事量の調整をしてもらうよう申し入れます。合わせて短納期になりがちなスケジュールに余裕をもって対応してもらうようにもお願いしました。
その結果、7月の残業は事業所単位で50時間と大幅に減らすことができました。
電気料金の単価は上がり続けており、猛暑だったにも関わらず、2023年7月の32.1万円まで下がりました。前年同月よりも20万円近く下がっています。
2023年7月までの過去1年間の最大需要電力は94kWですが、2022年12月以降は60~70kWまで下がっているため、今後ますます基本料金は下がりそうです。月あたりの電力使用量も1年前よりさらに約7000kWh減っていました。
何より藤沢さんがうれしく感じているのが、工場が明るくなって検品する40~50代のスタッフの負担が減ったこと、そして夏の時期に体調を崩しにくくなったことです。
「若い人も会社に入ってきてくれています。夏が暑い会社だと長続きしないですよね。今後の採用にもよい影響がありそうです」
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