目次

  1. 「同人誌は作家の宝物」
  2. 義父の急逝でベンチャーから転身
  3. 営業強化で得られた効果
  4. 製造と営業の壁を取り払う
  5. 「あだち工場男子」が話題に
  6. 捨て猫を「癒し課」に配属
  7. コロナ禍でも積極投資を決断
  8. 創業者の思いを背負って

 「まだ取材まで日があるのでうちの資料を送っておきますね」

 取材を快諾してくれた小早川さんは社史やこれまでの制作物を手配してくれました。それからほどなく届いた宅配物に目を見張りました。梱包用の段ボールはかわいいイラストの入ったオリジナルで、ふたを開ければミラーマットを挟んだ書籍が寸分の狂いなく収まっていました。

 「同人誌は作家にとって宝物であり、梱包も大切な作業です。忙しい時期はわたしも一緒になってこの作業にあたります」

同人誌印刷では全国有数の規模を誇ります(同社提供)

 「突如として後を継ぐことになったわたしには、経営者としての経験もなければ同人誌の趣味もありません。自社サイトの内容すら理解できませんでした」

しまや出版は1968年に創業した文具店がルーツです(同社提供)

 小早川さんは何度かの転職を経て、幹部としてベンチャー企業で働いていた2007年1月に結婚します。その年の4月、妻の父でしまや出版の創業者、金子良次さんが急逝。家族会議に参加した小早川さんは「いい会社だからつぶしたくない」という義母の訴えに応えるべく後継者候補として入社します。

 「逆手にとって打ち出したのが“はじめての方にも優しい同人誌印刷所”というスローガン。クローズドな商売は5年先、10年先を考えたときには尻すぼみです。将来を見据えれば、門戸を開く必要があった。業界の先輩は『手間がかかるばかりでもうけにならないよ』と親身になっていさめてくれましたが、いうなればそこはブルーオーシャン。わたしは思い切って飛び込みました」

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