目次

  1. 家族連れが目立つ展示会に
  2. バナナ9千本を配った3代目
  3. 美濃和紙のファンを広げる
  4. 板金会社がアウトドア製品をPR
  5. 伝統工芸の仲間が共同出展
  6. 次回のフェアは24年10月開催

 今回の「GOOD LIFE フェア」には、425社・団体から473ブースが出展し、規模も前回の倍以上となりました。バイヤーや企業関係者が中心に集まる多くの展示会とは異なり、家族連れやカップルの姿が目立つのが特色です。

会場は家族連れの姿も目立ちました

 会場内には、SDGsを意識したアパレル製品やキッチングッズ、家具、生活雑貨をはじめ、しょうゆや野菜、海産物、スイーツといった食品が並び、試食などで行列ができるブースもありました。子ども向けの体験コーナーや、クラフトビールやクラフトコーラが味わえるスペースも人気でした。

人だかりができたクラフトコーラのブース

 会場内でひときわ人だかりができていたのが、東京・大田市場でバナナの仲卸を手がける松孝(東京都大田区)のブースです。エクアドル産のバナナを約9千本用意し、1日3回に分けて来場者に無料で配る大盤振る舞い。甘く熟した黄色い房を求めて、手が次から次へと伸びていました。

 松孝3代目の吉村誠晃さん(49)も陣頭指揮を執り、バナナを配っていました。「飽きが来なくて何本でも食べたくなる味。『今まで食べたバナナで一番おいしい』と言われるのがうれしかったです」

 1951年創業の同社は、主に高級スーパーやデパートなどにバナナを卸しています。全国でも限られた自社製の「ムロ」という設備でバナナを貯蔵し、一般的なものよりも2日間長い9日間熟成させて、甘みを引き出しています。良質なバナナを育てる海外の生産者との関係を築くことで、SDGsにも貢献しているといいます。

松孝の若手スタッフにとって、エンドユーザーの反応に触れる貴重な機会となりました

 一般消費者向けの大規模展示会に出展したのは今回が初めて。吉村さんは「普段は一般の方の声が伝わらないので、(商売が)自己満足になってしまう恐れがあります。エンドユーザーが求めているものを実感できるインナーブランディングも出展の目的でした」と話します。同社の若手スタッフが、笑顔でバナナを配る姿が印象的でした。

 会場では地方の老舗企業の出展も目立ちました。中でも、かわいらしいキャラクターを前面に出したポップなブースで、若い女性らの足を止めていたのが、岐阜県美濃市の古川紙工です。

ポップなデザインで印象付けた古川紙工のブース

 同社は1835(天保6)年に創業し、伝統の美濃和紙を作り続けています。15年前に8代目の古川慎人さん(52)が後を継ぎ、美濃和紙を手に取りやすいサイズにした「そえぶみ箋」などの一般向け商品を発売。かわいらしいキャラクターが人気を博し、何千種類も発売してコレクターも生まれるほどのヒット商品になりました。

 今回は「そえぶみ箋」などを会場で販売して「GOOD LIFE フェア」オリジナルの商品も用意。子どもたちの体験コーナーも設けました。

 「美濃和紙は高級なイメージがありますが、身近な商品を作ることで紙文化のファンがたくさん生まれています。おかげさまで固定ファンはつくようになりましたが、もっと広げるために東京に出展しました」

「そえぶみ箋」を手にする古川紙工8代目の古川慎人さん(編集部撮影)

 古川さんの就任後、社員は大幅に若返って平均年齢は30代を切り、公式インスタグラムのフォロワー数は4万4千人を数えます。「ジェンダー平等」を掲げるSDGsの観点から「現在、従業員70人の8割を女性が占めています。和紙は女性が活躍できるビジネスとしての可能性があります」と話しました。

 精密板金加工会社の馬場製作所(神奈川県綾瀬市)もブースを設け、3代目で代表取締役の細川静夫さん(67)、4代目で取締役の峻さん(38)親子が、初の自社製品となる、組み立て式コンパクト焚き火台と固形燃料タイプコンロなどのPRに努めました。

馬場製作所代表取締役の細川静夫さん(左)と息子で取締役の峻さん(右)

 1973年に創業した同社は下請け加工が中心ですが、焚き火台とコンロなどを開発・販売しました。アウトドアのほか防災用としての活用を期待しています。「主力製品ではありませんが、中小企業のものづくりを知っていただくために出展しました」(峻さん)。

板金加工技術を生かして作られた馬場製作所のアウトドア用製品

 ブース内では、ストラップ・ネックレスのものづくり体験も企画し、子どもたちが熱心に手を動かしていました。

 相模原市職員から家業に転じた峻さんは将来の継承を見据え、「消費者向け商品を多くして販路を開拓したい」と意気込みます。今回の出展がその第一歩となりそうです。

 「SEKIO Traditional Crafts」は、島根県の石央地域の伝統工芸品をつくる職人が地元商工会の後押しで出展したブースです。きらびやかで技術の粋を尽くした工芸品の数々が、来場者の目を引きました。

「SEKIO Traditional Crafts」のブース入り口は、鮮やかな刺繍が施された郷土芸能の衣装が目を引きました

 重要無形文化財の石州半紙を扱う西田和紙工房(島根県浜田市)8代目の西田勝さん(37)は、二条城などの文化財修復や住宅の内装などを手がけています。ブースでは和紙を実際に触ってもらったり、うちわなどを並べたりして地域の魅力をPRしました。

 西田さんは「同じ地域の仲間同士で出展できるのはうれしい。この何年かでデザイン会社からの引き合いが増えており、(石央地域の)仲間と海外の販路開拓も目指しています」と話しました。

西田和紙工房8代目の西田勝さん

 ツギノジダイはフェアのメディアパートナーとして、ビジネスデザイナー・今井裕平さん、マクアケ執行役員・松岡宏治さんによるセミナーをそれぞれ開き、SDGs商品をビジネスとして成長させるためのヒントを話していただきました。

 当日来られなかった方に向けて、セミナーの動画を近く公開する予定です。

マクアケ執行役員・松岡宏治さん(右端)を招いて開いたセミナー

 また、記事で取り上げたほかにもたくさんのSDGs関連商品が並び、体験コーナーも盛り上がりました。リンク先の写真特集で会場の様子を紹介します。

 3回目となる「GOOD LIFE フェア」は、24年10月25~27日、東京ビッグサイト(南1~4ホール)で開かれることが決まりました。規模は今回よりさらに拡大し、600ブースの出展を見込んでいます。次回の詳細は「GOOD LIFE フェア」公式ページをご覧ください。