目次

  1. 新規開拓はどう進める?
  2. 営業の引継ぎはどうやればいい?
  3. 営業プロセスの「仕組み化」とは
  4. グループワークで情報交換も
  5. 次回勉強会は11/28に名古屋で開催

 イベント前半では、製袋メーカー・シコー(大阪市)の白石忠臣社長、企業の営業支援を手掛けるカイロスマーケティング(東京都渋谷区)の佐宗大介代表取締役を迎えて、パネルディスカッションを実施しました。中小企業が抱える営業の悩みに両者が答える形で、ディスカッションは進んでいきました。

 最初の悩み相談は、「営業担当、とくにベテランは、既存顧客ばかりを回ってしまいがち。新規顧客の開拓をどう進めればよいか?」というもの。

 シコーの白石さんは自社での経験をふまえ、「既存顧客ばかりまわっている営業担当に新規もまわれと言うのは、ちょっと現実的ではないですよね。私はわりきっていて、営業担当に新規を回れと特別言ったりはしません」と悩みに理解を示しました。

カイロスマーケティングの佐宗大介代表取締役(中央)と、シコーの白石忠臣社長(右)

 それでは、シコーはどのように新規開拓をしているのか。白石さんによると、業界特有の商習慣に加えて、自社のホームページを通じた引き合いが新規案件の受注につながっているといいます。2015年ごろから環境を整え、現在は月に5件ほど、ホームページ経由での引き合いがあるそうです。

 「営業担当者がなんで新規に行かないかって、そりゃ行ったらだいたいは嫌がられるからですよね。でもホームページを見て問い合わせしてきてくれたところは、その段階で興味はもってくれているわけですから、行っても嫌がられません。すると、経験のあるベテランの営業担当が、相手の困りごとに対する提案を的確にやってくれます」

 営業担当のスキルを的確に生かせるよう、可能性のある回り先を用意することが大事だといいます。

 カイロスマーケティングの佐宗さんも、「新規案件の成約は既存の10倍難しい」と悩みに共感。そのうえで「新規受注をがんばれば、市場のことがわかって会社の競争力も強くなる。既存だけでは取引先の状況に引っ張られるのでリスクが大きい」と述べ、新規開拓の重要性を強調しました。

 カイロスマーケティングでは、営業で役割分担をし、新規を開拓する担当と、契約まで進める担当を分けているそうです。新規担当はアポをとれたら、そこから先は別の担当に案件をパスするしくみです。社員の評価の際は、このパスの数も指標とすることで、売り上げにつながりにくい新規担当者が正当に評価されるようにしているといいます。

 中小企業でありがちなのが、「営業担当者が辞めるときに、きちんと後任に引継ぎをしてくれない」という悩みです。

 こうしたケースが「直近でもあった」という白石さん。重要なのは「きちんとした引継ぎが何なのかを、社内でちゃんと言語化すること」だと述べました。

 「たとえばお米の袋のビジネスの場合、農家さんとの関係性のため2年は一緒にまわらないとあかんという人もいれば、書類さえきちんと用意してくれたらそれでいいという人もいる。そこをちゃんと言語化して、引継ぎを進めていければいいのかなと考えています」

 とはいえどのような形がベストか、現在進行形で探っているところだといいます。

営業の悩み相談に答えるカイロスマーケティングの佐宗大介代表取締役(中央)と、シコーの白石忠臣社長(右)

 一方の佐宗さんは「うちはベンチャーだし辞める人もいるけれど、あんまり困っていない」と答えました。営業を分業し、自社のツールを使って「仕組み化」しているおかげで、「そもそもあまり引継ぎが発生しない」のだそうです。

 カイロスマーケティングは、売上アップを仕組みで実現するCRM「Kairos3」を提供しています。「Kairos3」では、

  • Kairos3 Marketing…見込み客をネット上で抽出し良質なアタックリストを作る
  • Kairos3 Sales…日々の商談の対応を記録して可視化する
  • Kairos3 Timing…日程調整を効率化してワンクリックでアポをとる

という機能を提供しています。

 佐宗さんは仕組み化について「成功体験を横展開すること」と説明します。

 「営業にあてはめると、営業プロセスを標準化するということです。プロセスごとにやるべきことを定めて、一つ一つチェックしてつぶしていく。たったこれだけで、成績はすごく変わります。営業の成果をあげるのは、個々の能力じゃなくて習慣なんです」

営業プロセスの「仕組み化」について話す、カイロスマーケティングの佐宗大介代表取締役(左)

 「例えばトップセールスでめちゃくちゃ売る営業の人にヒアリングしてみると、特別なことや面白いことってなにもやっていないんですよね。当たり前のことを徹底的にやっているだけ。具体的には、顧客管理をちゃんとやるとか、営業でもらった名刺を引き出しの中に入れっぱなしにしないでみんなで共有して活用するとか、そんなことです。我々のツールは、当たり前の取り組みを当たり前以上にできる仕組みを提供しています」

 また佐宗さんは、大企業にない中小企業の強みとして、「意思決定の迅速さ」があると強調。ツールを使って営業プロセスが見える化されれば、意思決定の迅速さに正確な経営判断が加わり、「一点突破の強みになる」と述べました。

 イベントの後半では、参加者が4、5人の班に分かれてのグループワークを実施しました。示された課題に対して自社の取り組みを紹介し、どんな解決方法があるかを話し合いました。

 「取引先・営業先の担当者が代わっても、きちんと情報をもらうためにはどうすればよいか?」という課題に対しては、「新しい担当者を招いて工場見学をおこない、ちゃんと時間をかけて自社の特性などを説明する」といった実践例が紹介されました。

イベント後半で行われた、参加者によるグループワーク

 「自社商品をユーザーに届けるうえで、自社の営業担当や販売店の熱量を同じにしたいとき、ブランドイメージを社内にどう伝えればよいか?」という課題については、「ピッチコンテストに出場して、その商品についてのプレゼンをおこなう」といった提案がありました。

 夜には懇親会も開かれ、悩みやノウハウなどの情報交換が遅くまで続きました。

 プラスチック製品を手掛ける会社の営業担当者は「営業のやり方をもっと効率化したいというのはもともと考えていたが、社内ではなかなか進んでいなかった。『仕組み化』がなぜ重要なのか、今日の勉強会のおかげで明確に言語化できるようになった。社内でもうまく伝えていきたい」と手ごたえを感じていました。

 革製品メーカーの経営者は「自分と似たような立ち位置の経営者と、横のつながりができたのがよかった。どんな悩みを持っているか、またそれをどう解決しようとしているのかを知れて刺激になった。また別のテーマの勉強会があればぜひ参加したい」と話しました。

次回の勉強会は名古屋で開催予定です

 ツギノジダイは2023年11月28日にも、「年商10憶を目指す経営者のための販促営業勉強会@名古屋」(ツギノジダイ編集部主催、カイロスマーケティング協賛)と題した勉強会を開催します。参加は無料。「ホームページはあるのに問い合わせがこない」「デジタル活用を検討したいが何から始めたらよいかわからない」といった悩みを持つ方は、下記サイトからぜひお申込みください。

【日時】
2023年11月28日(火)16時30分~18時40分(開場は16時00分~)+19:00 ~ 21:00 懇親会(こちらは参加任意、実費)

【会場】
大冷工業株式会社 クロスコ
(名古屋市東区東桜2-16-36 大冷工業本社ビル 4F)

【アクセス】
〇地下鉄「新栄町駅」1番出口より徒歩4分
〇地下鉄「栄駅」2番出口より徒歩10分

【登壇者】
石川 貴也氏(側島製罐株式会社 代表取締役)、渡辺 紀幸氏(株式会社シーエムスタッフ 代表取締役)、杉本 崇(ツギノジダイ編集長)、佐宗 大介(カイロスマーケティング株式会社 代表取締役)