目次

  1. 日本企業の進出先、商都テルアビブ周辺が最多
  2. イスラエルへの進出、研究開発拠点が中心
  3. 日本企業への中長期的な影響は

 イスラエルに進出している日本企業については、帝国データバンクの企業データベースに加え、各社の開示情報などをもとに、工場や事業所・駐在員事務所、サービス・保守拠点などの設備・施設、直接出資などでイスラエルに関連会社などを有する企業の情報を帝国データバンクがまとめました。

 その結果、2023年9月末時点で進出していると判断できたのは92社。2022年の外務省による海外進出日系企業拠点数調査の87社よりやや多い企業数となりました。

 92社のうち、商都テルアビブ市周辺が39社と最多。イスラエル企業を買収した先駆者的な立場で知られる「サン電子」(本社・名古屋市)の海外拠点「セレブライト」はテルアビブ周辺のペタフ・ティクヴァにあります。

 NTTグループは2021年、テルアビブ周辺に現地法人「NTT Innovation Laboratory Israel Ltd.」を設立。Sonyグループも「Sony Semiconductor Israel Ltd.」の拠点がテルアビブ周辺のラーナナにあります。

 そのほかも地中海沿岸部に進出している企業が多い一方、特に被害が大きいガザ地区近隣への進出事例は確認されなかったといいます。

日・イスラエル投資協定(外務省の公式サイトから https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000236611.pdf)

 日本とイスラエルは2017年に投資協定を結んでおり、2022年には、日・イスラエル経済連携協定(EPA)に向けて共同研究を立ち上げることを明らかにするなど、経済的な結びつきを強めています。

 イスラエルの投資コンサルティング会社「ハレル・ハーツインベストメント・ハウス(HIH)」の調査レポート(PDF方式)によれば、2021年の日本の対イスラエル投資額は29億4,500万ドルと、2020年の約3倍に増えています。

 イスラエルに進出している企業は大手が中心です。中小企業については「比較的少数にとどまった」と帝国データバンクは説明しています。

 イスラエルへの進出形態が判明している70社の特徴は、現地での販売拠点や研究施設を含めた「サービス・開発拠点」が7割を占め、特に研究開発拠点の進出が目立つといいます。

 また、先端技術などを持ちイスラエルのスタートアップ企業などと提携するための拠点として進出する企業も多いといいます。その一方、生産拠点となる「製造・流通拠点」は12社と少数でした。

 業種別にみると、「製造業」が最多の4割超で、現地での保守サービスや販売目的での進出が多くみられました。比較的多い「金融・保険業」は、現地ベンチャーキャピタルの組成や出資目的の進出が中心で、グローバル金融拠点としての進出は少数にとどまっているといいます。

 帝国データバンクは、イスラエルとハマスの武力衝突が日本企業に与える影響について「限定的」とみていますが、武力衝突のエスカレートが続けば、イスラエルへの投資意欲減退や、現地拠点の一時的な撤退の可能性あるとみています。

 また、30万人の予備役の招集が始まっており、日本企業の買収先企業や駐在所のイスラエル人社員が軍に召集されるなど、従業員雇用の面で当初の経営計画から想定外となる事態の発生も想定されると指摘しています。

 このほか、地政学リスクのコンサルタントである和田大樹さんは記事「イスラエルとハマスの軍事衝突 日本企業は中東全体の安全保障に注視を」のなかで、中東全体の安全保障に影響を与える潜在的リスクを内在しており、今後拡大する恐れがある前提で考えておくべきだと助言しています。