目次

  1. 手塚作品とコラボしたハンコ
  2. 「ガルパン」人気を震災復興に
  3. 「初心者に優しい同人誌」で成長
  4. アルコール消毒液に「ブラック・ジャック」
  5. 「たべっ子どうぶつ」のキャラ戦略
  6. 「岩下の新生姜」のマーケティング

 大阪市淀川区のハンコメーカー岡田商会は、かわいらしい猫をデザインした「ねこずかん」というハンコを大ヒットさせ、手塚治虫作品やポケモンといった人気キャラクターとコラボしたハンコも手がけています。仕掛けたのは2代目で常務の岡山耕二郎さんです。後継ぎとして失敗を経験しながらも赤字が続いた家業をV字回復させました。

鉄腕アトムやブラック・ジャックなどのハンコ「手塚ずかん」(岡田商会提供)

 茨城県大洗町で1887(明治20)年から続く割烹旅館・肴屋本店は、同町が舞台の人気アニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)で、「戦車に突っ込まれた宿」として知られています。先代の父が亡くなり31歳で経営を引き継いだ7代目・大里明さんは東日本大震災の影響で開店休業状態に陥りながらも、ガルパンを追い風に、アニメファン向け宿泊プランやキャラクターの等身大パネルを制作。ファンと地域経済との結びつきを深めました。

アニメファンに支えられた大里さん。左側に置いてあるのはガルパンのグッズです

 しまや出版(東京都足立区)は同人誌印刷では全国トップクラスで、年間およそ8千件の注文を受けている会社です。ベンチャー企業出身で3代目の小早川真樹さんが、妻の父で創業者の金子良次さん夫妻の後を継ぎました。同人誌制作の門戸を初心者に開いて事業規模を拡大し、営業と印刷現場の壁を壊して多能工化も推進。「あだち工場男子」など話題の自社制作物も次々と送り出しています。

同人誌印刷では全国有数の規模を誇ります(同社提供)

 手塚治虫の名作医療漫画「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールが発売されました。仕掛け人は、酒の輸出を手がける貿易業の2代目です。自粛生活のなかで「ブラック・ジャック」に出会い、版権を管理する手塚プロダクションに電話で提案したところ、5分で承諾されました。

「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールを企画した貿易商社の「ジェムインダストリーズ」2代目岡田祐樹さん

 「たべっ子どうぶつ」や「アスパラガス」などで知られるギンビス(東京都中央区)。3世代目となる社長の宮本周治さんは、米国のニューヨークミリタリーアカデミーを卒業するという異色の経歴を経て、家業に入りました。若者とのタッチポイントを増やしてファン層を拡大すべく、キャラクターのグッズ化やコンビニでの販売にも注力しました。

ギンビス社長の宮本周治さん

 「岩下の新生姜」で知られる岩下食品(栃木県栃木市)は、1990年代にCMで話題になりましたが、1998年をピークに売り上げが年々下がりました。4代目社長の岩下和了さんは父から後を継いで、前時代的だった組織を改革。新生姜ミュージアム開設などの斬新なマーケティング手法で消費者のハートをつかみました。

岩下食品は初代の岩下源次郎氏が1899(明治32)年、乾物・野菜類の小売業として創業し、戦時中、軍納品として漬物製造業に着手。1955年に株式会社化し、86年に現在の岩下食品に社名変更。87年に発売した「岩下の新生姜」がロングセラー商品になり、「岩下のピリ辛らっきょう」も人気になった。4代目の岩下和了さん(写真)は2004年に社長就任。15年に「岩下の新生姜ミュージアム」を開館するなど、大胆なマーケティング戦略を進めている(写真はミュージアム内で撮影)