目次

  1. 「いつかこの旅館を継ぐ」
  2. 父が亡くなり31歳で社長に
  3. 東日本大震災で売り上げが激減
  4. 一人客に用意した「応援プラン」
  5. 周囲にも勧めたアニメ関連プラン
  6. アニメファンから大洗のファンに
  7. 人とのつながりで地域のハブに

 肴屋本店は、海水浴場で有名な大洗町の中心にある老舗旅館です。県内外や国外から年間4千人の宿泊客が訪れ、5人の従業員で切り盛りしています。

 2012年放映開始の「ガルパン」は、大洗町を舞台に「県立大洗女子学園」の生徒たちが戦車を使った武道「戦車道」を極めるストーリーです。放映を機に町全体でファンを受け入れ、大里さんもガルパンファンのニーズに合わせ、柔軟でスピード感のある企画に取り組みました。アニメ放映が終わり、シリーズの続編が展開する今も、旅館や大里さん自身のファンになった客が定期的に足を運びます。

肴屋本店は町中心部の「曲がり松商店街」に位置しています

 長男の大里さんは、幼いころから旅館で過ごす時間が長かったといいます。板場に立って調理し、従業員をまとめ、接客し、買い付けをする。そんな祖父や父の姿が輝いて見え「いつかはこの旅館を継ぐんだ」という意識が芽生えます。

 両親や仲居さんらと布団を敷いたり、掃除したり、宿泊客に遊んでもらったり。大里さんにとって旅館は身近な場所でした。

 県内の大学を卒業後、父もお世話になった八芳園グループの職人の元で板前修業に入ります。師匠は引退目前でしたが「全部面倒を見てやる」とノウハウをたたきこまれます。同じ板場の先輩にも師事し、修業開始から4年でフグの調理師免許も取りました。

 Uターンを決意したのはこのころです。「祖父の体調が悪く、フグの調理師免許も取れたタイミングもあり大洗に戻ろうと決めました」

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