目次

  1. 完熟いちごへのこだわり
  2. 父の目を見て復興を決意
  3. 「ただ元に戻すのはつまらない」
  4. IT導入でいちごの品質が安定
  5. 「いち氷」が看板商品に
  6. 新しいことは「まずやってみる」
  7. 念願の常設店でさらなる成長へ

 燦燦園は約1.5ヘクタールの栽培面積を誇り、ハウスで年間約150トンのいちごを生産しています。約9割がとちおとめで、新品種の栽培にも挑んでいます。深沼さんは「水道水の塩素はいちごの酸化を早めるため、活水機を通して水を軟水にしています。栄養剤に殺菌効果のある酢の成分を入れているのも特徴です」。

 いちごは通常、60〜70%熟した状態で収穫しますが、燦燦園では完熟したものを穫り、翌日までに届くエリアにのみ流通させています。取引先は仙台三越、高島屋などの百貨店、銀座ウエストといった有名菓子店など約50社にのぼります。従業員は約30人、年商は2億円弱です。

燦燦園の完熟いちご(同社提供)

 燦燦園のルーツは50年以上前に開いた深沼農園で、深沼さんの祖父が野菜や果物の栽培を始めました。その後、山元町がいちごの一大産地を目指すと、深沼農園もいちご生産に特化します。

 子どものころの深沼さんは、農家になりたかったわけではなく「長男なので、周りから当たり前のように継ぐと思われるのが嫌でした」。

 高校卒業後、家業は手伝い程度でアルバイトをしながら過ごしますが、社会と関わるうち、両親が働く姿にすごみを感じるようになりました。

 「当時、ほぼ家族だけの農園で直売所を開いているところは周囲にありませんでした。甘いだけでなく味の濃いいちごを作ろうと、父は水や土、ハウス内の環境などにこだわっていました。その姿を見て『農家っていいな』と思ったのです」

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