精密加工に必要な工場の温度管理、1万円未満のスマートリモコンで実現
プラスチック製品を量産するための「金型」を製作している一成モールド(新潟県三条市)は、金型の加工精度に影響しないよう工場内の温度を一定に保つため、販売価格1万円未満のスマートリモコンを活用しています。導入から3年がたち、微調整を繰り返しながらもコストパフォーマンス良く対応できており、さらに体調を崩すスタッフが減るといった副次的な効果も生まれています。
プラスチック製品を量産するための「金型」を製作している一成モールド(新潟県三条市)は、金型の加工精度に影響しないよう工場内の温度を一定に保つため、販売価格1万円未満のスマートリモコンを活用しています。導入から3年がたち、微調整を繰り返しながらもコストパフォーマンス良く対応できており、さらに体調を崩すスタッフが減るといった副次的な効果も生まれています。
スマートリモコンを活用して工場内の温度管理を始めたのは2代目後継ぎで、技術営業部長の氏田遼佑さんです。移転で工場が1.5倍の広さになったのをきっかけに、2020年10月ごろに導入しました。
「金型を削り出す工作機械は金属製なので、温度変化の影響を受けやすく伸び縮みします」
自動車部品の金型などを手がける一成モールドは、金属加工で0.01mm単位の精度が求められます。しかし、冬場は機械の立ち上げ時と、運転を継続して暖まってきたときでは、加工時に0.01mm単位の誤差が生じてしまいます。
0 .001mm単位の高精度な加工をする場合、恒温室を設ける工場もありますが、工場移転にかかった費用との兼ね合いのなか、なるべくお金をかけずに温度管理をするのはどうすればよいか……。
氏田さんが思い付いたのが、家電をスマートフォンから操作できるスマートリモコン「Nature Remo」でした。温度・湿度・照度・人感センサーを搭載している機種があり、たとえば、28度になったらエアコンをオンにするといった起動条件も設定できます。
工場に設置してあるエアコンがたまたま4台中、2台が赤外線リモコンで操作できるタイプだったので実現したといいます。
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氏田さんは、冬なら以下の条件でエアコンを設定しています。
22度を上回って、暖房を切らずに送風に切り替えることで急な温度変化を生まずに、およそ室温を2度以内の範囲で調整できているといいます。
ただし、スマートリモコンが設置されている壁際と、工場中央部では温度差があるため、検知温度を補正したり、工場中央部でも別途温度を測ったり、窓の隙間をできるだけ埋めたりと細かいな調整もしています。うまく動作しないことがあっても、ソフトウェアのアップデートが充実しているため都度改善されているといいます。
冬は底冷えし、工作機械の土台は温度による影響を受けやすいため、氏田さんは扇風機なども使いながら空気を循環させ、工作機械の精度に影響が出ないよう調整しています。
氏田さんは「精密な作業が求められるけれど、恒温室を作れない工場では、スマートリモコンを活用した温度管理もコストパフォーマンスが良いので、一つの選択肢になると思います。機種によっては光、人感、位置などのセンサーもあるので、必要に応じて起動条件はさらに細かく設定もできます」と話しています。
工場の移転前後で電気代は10%ほど増えましたが、電気代の単価が上がっていること、工場拡張による照明が増えたこと、工作機械も1台増設した要因の方が大きいといいます。氏田さんは「温度管理ができたことで、逆に空調設備の無駄な運転は抑えられている」と感じています。
影響があったのは、加工精度だけではありません。氏田さんは「快適な温度で作業ができるようになったこともよい影響でした」と話します。60代の職人がいるなど、作業し続けるためには体調管理も大切な要素です。
夏は暑く、冬は寒い新潟県。温度管理をしないと、冬は0度、夏は40度近い作業環境にもなってしまいますが、スマートリモコンで温度管理することで体調を崩す人は少なくなりました。
「もちろん作業場所や個人によってちょうどよい温度は様々なので、誰にとっても快適な温度にするのは難しいのですが、それでも底冷えや手がかじかむことがなくなったのは大きな変化です」
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