目次

  1. 26歳で家業へ デスクには灰皿のみに危機感
  2. “タクシーはおじさんがやる仕事”を変える新卒採用
  3. 「デジタル御用聞き」から始まった仕事
  4. 社長に就任 法人と自身の痛み重なる
  5. 「思い切りやってください」と応援する声も
  6. 安全性はそのまま エンタメに徹したサービス続々
  7. TikTokも若手のリクルーティングのためだった
  8. 2024年問題に向けて副業ドライバーも活用検討
  9. 無人運転の普及も想定した次の一手とは

吉川永一さん

よしかわ・ながいち

三和交通代表取締役社長。1977年神奈川県横浜市生まれ。大学在学中より映像制作に携わり、卒業後は音楽プロモーションビデオやウェブなどの制作に従事。2003年に三和交通に入社。複数の営業所に勤務後、29歳で三和交通代表に就任。新卒採用、ユニークなサービス、DX化など、タクシー業界の常識を打破するマーケティングやプロモーションが話題に。

三和交通を率いるのは、3代目代表の吉川永一さん(中央)。三和交通は1974(昭和22)年に創業、神奈川県と東京都に8つの事業所を構え、タクシー・ハイヤー事業を展開。2022年の売上高約83億円、従業員約1500人、保有台数約600台の業界第7位。

 吉川さんは父が代表を務める三和交通に入社したのは、2003年。当時26歳で映像作家として活躍していましたが、父に呼ばれて入社します。

 「幼い頃より祖父から、“おまえが会社を継ぐんだよ”と言われて育ちました」

 しかし、当時はタクシー業界に逆風が吹いていました。デフレ、不景気、マイカーの普及、少子高齢化もあり乗客が減っていました。加えて、2002年の規制緩和で、新規参入事業者が増加。既存の事業者も含め、構造的な業績不良に陥ることになりました。

 「リーマンショック前でしたが、法人利用の減少、乗務社員の高齢化による稼働率の低下はすでに始まっていました。しかし、手をこまぬいてはいられません。会社の中から業界全体を客観的に分析し、課題をあぶりだすところから始めようと思いました」

 危機感を感じたのは、吉川さんが入社した日、デスクに置かれていたのは灰皿のみだったことでした。パソコンやマニュアル化した書類などもありませんでした。

 「資料さえないんです。当時、社会全体は、デジタルに移行しており、1人1台のパソコンが貸与されるのは常識だったのに…」

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