目次

  1. 合理的配慮の提供とは
  2. 合理的配慮の具体例
    1. 物理的環境への配慮(例:肢体不自由)
    2. 意思疎通への配慮(例:弱視難聴)
    3. ルール・慣行の柔軟な変更(例:学習障害)
  3. 合理的配慮の提供義務に反しない例
  4. 合理的配慮に必要とされる対話

 内閣府によると、日常生活で提供されている設備やサービスでも、障害者にとっては利用が難しく、活動が制限されてしまう場合があります。こうしたときに求められるのが「合理的配慮」です。

 具体的には、行政機関や事業者が、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときに社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮が求められるというものです。

 合理的配慮は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つを満たすものだと内閣府のリーフレットは紹介しています。

  1. 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られる
  2. 障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものである
  3. 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない

 「合理的配慮の提供」は、これまで行政機関は義務、事業者は努力義務とされていましたが、改正障害者差別解消法により、2024年4月1日から事業者も義務化されます。

 合理的配慮は、障害特性やそれぞれの場面・状況に応じて異なります。また、障害のある人への対応が「不当な差別的取扱い」に該当するかどうかも、個別の場面ごとに判断する必要があります。事業者は個々の場面ごとに柔軟に対応を検討することが求められます。

合理的配慮の具体例(内閣府のリーフレットから https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html)

 内閣府のリーフレットでは、事業者が検討しやすいよう障害特性や合理的配慮の具体例を紹介しています。ただし、合理的配慮の内容は個別の場面に応じて異なることに注意が必要です。

 このほか、内閣府の公式サイトでは「合理的配慮等具体例データ集」も紹介していますので対応に悩んだときは参考にしてください。

 飲食店で障害者からの「車椅子のまま着席したい」という申し出に対し、飲食店側は机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保したと紹介しています。

 難聴のため筆談によるコミュニケーションを希望したが、弱視でもあるため細いペンや小さな文字では読みづらい、という申し出に対し、太いペンで大きな文字を書いて筆談を行ったと紹介しています。

 文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへ参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができないという申し出に対し、書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などで、ホワイトボードを撮影できることとしたと紹介しています。

 一方で、次のような例は合理的配慮の提供義務に反しないと考えられます。

  • 飲食店において食事介助を求められた場合に、その飲食店は食事介助を事業の一環として行っていないことから、介助を断る(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られるため)
  • 抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが難しいことを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、対応を断る(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであるため)

 また、合理的配慮は過重な負担とならない範囲で対応するものとされており、以下の例も合理的配慮の提供義務に反しないと考えられます。

 小売店で、混雑時に視覚障害のある人から店員に対し、店内を付き添って買い物を補助するよう求められた場合に、混雑時のため付き添いはできないが、店員が買い物リストを書き留めて商品を準備することを提案する

 合理的配慮は個別の場面ごとに判断する必要があり、大切なことはできる・できないの二択にするのではなく、障害者と事業者との間の建設的対話を通じて相互理解を深め、対応可能で納得の得られる対応案をいっしょに検討していくことが重要です。

 逆に、「前例がありません」「特別扱いできません」「もし何かあったら…」「○○障害のある人は…」といった言葉で、一律な対応を取り、建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意しましょう。