目次

  1. 青森の野菜を首都圏へ
  2. 国のパイロット事業に参加
  3. 荷主が仕分け作業を分担
  4. 荷主の理解を得られたポイントは
    1. 労働実態をいちから説明
    2. できることできないことを話し合う
    3. 現場での働きかけも大切
  5. ルールを守る会社が残る競争に

 中長運送は、中村さんの父の長一さんが、1961年に設立しました。中村さんは29歳で家業に入り、39歳のころに社長に就任。主な荷主は地元の農協で、青森県産の長いもや大根、ねぎなどを、東京の青果市場に運び続けてきました。従業員数は約35人、大型冷凍車など約37台のトラックを所有しています。

中長運送2代目代表の中村健さん(同社提供)

 中村さんはかねて、ドライバーの労働実態に課題を感じていました。特に、炎天下や凍える寒さの中で、大量の荷物を一つひとつ抱えて荷台に上げ下ろしする作業を目の当たりにし、「この働き方のままでは長続きしない」と考えていたそうです。トラックの側面が開くことで荷下ろしの負担が減る「ウイング車」を導入するなど、少しずつ改善をはかってきました。

 そうした中、中村さんは県のトラック協会に声をかけられ、国土交通省などが2016~17年に実施したパイロット事業に参加します。事業の目的は、荷主と運送事業者が協力する場を設けて、ドライバーの労働時間短縮を目指すものです。中長運送と、主要な荷主である十和田おいらせ農業協同組合、さらに青森労働局など国の職員が参加して、取り組みがスタートしました。

 それまでの繁忙期の中長運送では、青森で野菜を積んで東京の市場で荷下ろしするまで、ドライバーの1日あたりの拘束時間が、17.7時間 ほどまで膨らんでいました。現行の労働基準法は、1日の拘束時間を最大16時間までと定めており、それを超過する水準です(2024年4月以降は最大15時間までとより規制が厳しくなります)。

野菜を運ぶトラックが多く出入りする、東京都の大田市場

 「速度制限もあり、青森から東京までの走行時間はこれ以上短くできないのが実態でした。うちは小さな会社なので、途中でドライバーを交代する中継輸送を行う余裕もありません。拘束時間を短くするには、荷積みと荷下ろしの効率化をはかるしかありませんでした」

 当時、ドライバーは午前8時に農協に向かい、野菜の荷積みを始めていました。しかし荷物は配送先ごとの仕分けができていなかったため、ドライバーが荷物の仕分けもしながら、トラックに積み込む必要がありました。負担が増え、荷積みにかかる時間は最大4時間ほどになっていました。

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