目次

  1. ダイハツ工業とは 2016年に上場廃止しトヨタ傘下へ
  2. ダイハツ工業で発覚した認証不正 対象車種一覧
    1. 現行生産/開発中の車種・エンジン
    2. 生産終了車種・エンジン
  3. 国交省、順次出荷停止を解除
  4. ダイハツ工業の部品メーカーなど8136社に影響か
    1. 都道府県別の最多は愛知県
    2. 業種では「自動車部分品・付属品製造業」が最多

 ダイハツ工業は、1907年(明治40年)3月に設立した「発動機製造」が発祥となっています。

 東京商工リサーチによると、2023年4月1日時点の単体の従業員数は連結ベースで4万5795人(3月末時点)。国内主要事業所は、本社の大阪府池田市ダイハツ町のほか、国内工場は大阪や京都、滋賀、大分、福岡などで、海外生産拠点はインドネシアとマレーシアの2拠点あります。2016年7月に上場廃止し、8月にトヨタ自動車の完全子会社となりました。

 ダイハツ工業によると、主要子会社はダイハツ九州など5社。連結子会社は自動車製造4社、部品製造13社、自動車販売35社、その他8社の計60社に上ります。ダイハツ工業の2023年3月期の単体業績は売上高1兆4,930億円、当期純利益770億円でした。

 ダイハツ工業は2023年4月、内部告発を受けて、海外市場向けの4車種の側面衝突試験の認証申請で不正行為を確認したと発表しました。

 ダイハツ工業の公式サイトによると、以下の車両の側面衝突試験で、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部に不正な加工をしており、側面衝突試験の手順・方法に違反があったといいます。

代表車名 生産開始時期 生産国
トヨタ ヤリスエイティブ 2022年8月 タイ/マレーシア
プロドゥア アジア 2023年2月 マレーシア
トヨタ アギア 2023年6月予定 インドネシア
開発中のため非開示

 社内での点検を進めるなかで5月、ダイハツ・ロッキーおよびトヨタ・ライズのHEV車のポール側面衝突試験(UN-R135)に関する認証手続きの不正が判明したと発表。対象車種の出荷・販売を停止しました。

車種 販売開始
ダイハツ・ロッキーHEV 2021年11月
トヨタ・ライズHEV 2021年11月

 さらに内部調査委員会に加え、独立した第三者委員会で調査を進めていたところ、12月20日、製造する64車種・3エンジンの認証試験で、174個の不正が発覚したと公表。当面は出荷停止とすることになりました。

 ダイハツはトヨタ自動車の子会社でもあり、トヨタやSUBARUにOEM供給していた車種についても不正が発覚しています。

 対象の64車種のうち、国内生産されている車種は以下の通りです。

名称 ブランド 販売開始
ミラ イース ダイハツ 2017/5
ピクシス エポック トヨタ
プレオ プラス SUBARU
タント ダイハツ 2019/7
シフォン SUBARU
タフト ダイハツ 2020/6
ムーヴ キャンバス ダイハツ 2022/7
コペン ダイハツ 2014/6
トヨタ 2019/10
ハイゼット カーゴ(デッキバン含む) ダイハツ 2021/12
アトレー(デッキバン含む) ダイハツ
ピクシス バン トヨタ
サンバー(バン) SUBARU
ハイゼット トラック ダイハツ
ピクシス トラック トヨタ
サンバー トラック SUBARU
ロッキー ダイハツ 2019/11
ライズ トヨタ
レックス SUBARU 2022/11
トール ダイハツ 2016/11
ルーミー/タンク トヨタ
ジャスティ SUBARU
グランマックス ダイハツ 2020/9
タウンエース/ライトエース トヨタ 2008/2
ボンゴ マツダ 2020/9
プロボックス/サクシード トヨタ 2014/8
ファミリア バン マツダ 2018/6
開発中車種

 1KR-FE原動機(エンジン)…搭載車種:ダイハツ トール/トヨタ ルーミー/SUBARU ジャスティ

 生産終了仕様(現在生産しているモデルでは使用していない仕様)は以下の通りです。

名称 ブランド 販売開始~生産終了
ミラ イース ダイハツ 2017/5~2018/8
ピクシス エポック トヨタ
プレオ プラス SUBARU
コペン ダイハツ 2014/6~2019/9
ロッキー ダイハツ 2019/11~2021/10
ライズ トヨタ
トール ダイハツ 2016/11~2020/8
ルーミー トヨタ
ジャスティ SUBARU

 生産終了車種は以下の通りです。

名称 ブランド 販売開始~生産終了
ミラ トコット ダイハツ 2018/6~2023/12
ブーン ダイハツ 2016/4~2023/12
パッソ トヨタ 2016/4~2023/9
キャスト ダイハツ 2015/9~2023/6
ピクシス ジョイ トヨタ 2016/8~2023/6
ムーヴ ダイハツ 2014/12~2023/6
ステラ SUBARU
ムーヴ キャンバス ダイハツ 2016/9~2022/6
ハイゼット (カーゴ) ダイハツ 2020/9~2021/11
ピクシス バン トヨタ 2020/9~2021/11
サンバー (バン) SUBARU 2020/9~2021/11
ムーヴ コンテ ダイハツ 2013/7~2017/1
ピクシス スペース トヨタ
iQ トヨタ 2008/11~2016/3
ハイゼットトラック ダイハツ 1999/1~2011/11
2014/8~2020/8
ピクシス トラック トヨタ 2014/8~2020/8
サンバー トラック SUBARU 2014/8~2020/8
アプローズ ダイハツ 1989/7~2000/4
  • 1KR-FE原動機(エンジン)…搭載車種:ダイハツ ブーン/トヨタ パッソ
  • EF型原動機(エンジン)…搭載車種:ダイハツ ミラ/ダイハツ ムーヴ/ダイハツ オプティ
  • HD型原動機(エンジン)…搭載車種:ダイハツ アプローズ

 国交省は2024年1月から順次出荷停止を解除しています。1月19日、トヨタ・プロボックス/マツダ・ファミリア バン、ダイハツ・グランマックス カーゴ/トヨタ・タウンエース バン/マツダ・ボンゴ バンの5車種について、道路運送車両法の基準に適合していることが確認されたとして、出荷停止の指示を解除しました。

 さらに1月30日には、以下の10車種の出荷停止を解除することになったと公表しました。

車種 ブランド 区分
ミラ イース ダイハツ 軽乗用車
ピクシス エポック トヨタ
プレオ プラス SUBARU
ハイゼット カーゴ※ ダイハツ 軽商用車(バン)
アトレー※ ダイハツ
ピクシス バン トヨタ
サンバー(バン) SUBARU
ハイゼット トラック ダイハツ 軽商用車(トラック)
ピクシス トラック トヨタ
サンバー トラック SUBARU

※デッキバンを含む

 1月30日、国土交通省の立会試験などの結果、道路運送車両法の基準に適合していることが確認されたといいます。以下の10車種について、2月26日から生産再開することになりました(未出荷車両の出荷は2月19日から再開)。

 帝国データバンクが調べたところ、部品メーカーなどダイハツ工業のサプライチェーン企業(売上高の1%以上を依存している企業)は、国内に推計8136社あるといいます。直接取引のあるTier1は921社、二次下請けであるTier2が4945社、Tier3が2114社と続きました。

 サプライチェーン企業は47都道府県すべてに分布し、各企業の売上高依存度は、平均4.2%。派生する売上高は合計2兆2110億円にも上ると推計しています。

都道府県 社数 派生する売上高の合計
愛知県 2084 5674億円
大阪府 1043 2607億円
東京都 562 2006億円
静岡県 449 500億円
兵庫県 334 2175億円
群馬県 333 358億円
神奈川県 330 503億円
岐阜県 288 276億円
広島県 253 357億円
三重県 251 182億円
滋賀県 187 903億円
大分県 89 4800億円

 サプライチェーン企業の所在地を都道府県別に見ると、愛知県が最も多く、2084社。派生する売上高は推計5674億円に上るといいます。本社工場のある大阪府が1043社で2607億円、東京都が562社で2006億円と続きました。

 工場のある滋賀県や、子会社であるダイハツ九州が拠点を置く大分県では、県内企業に派生する売上高が大きく、滋賀県が187社で903億円、大分県が89社で4800億円と続いています。

 出荷停止が長引けば、こうした都府県への経済的な影響が大きくなる可能性があります。

業種 社数
自動車部分品・付属品製造業 630
金型・同部分品・付属品製造業 468
一般貨物自動車運送業 408
金属プレス製品製造業 344
工業用プラスチック製品製造業 330
労働者派遣業 187
自動車駆動・操縦・制動装置製造業 176
各種機械・同部分品製造修理業 168
工業用ゴム製品製造業 148
受託開発ソフトウェア業 147

 業種細分類別では「自動車部分品・付属品製造業」が630社、次いで「金型・同部分品・付属品製造業」の468社など製造業が上位を占めています。

ただ、部品等を搬送する「一般貨物自動車運送」(408社)や「労働者派遣業」(187社)、車両の電子化が進む中で「受託ソフトウェア開発」(147社)なども多いといいます。