目次

  1. 感謝であふれた問い合わせフォーム
  2. 震災で経営が悪化した家業へ
  3. 営業を任されて売り上げを回復
  4. 迎え入れた社員が離職
  5. コロナ禍で年商が半減
  6. プロジェクト始動後、自身ががんに
  7. 名実ともに4代目に

 「問い合わせフォームといえばクレームが来るものとばかり思っていたから驚きました。そこには感謝の言葉があふれていたんです。わざわざ手紙を寄越してくれるお客さまもいらっしゃるんですよ。言葉を受けとるたび、スタッフともども胸がいっぱいに。みな一様に感謝していると口をそろえられるのですが、むしろわたしどものほうが感謝しています」

 23年7月に「シャンヴルマキ」を立ち上げると、ほどなくNHKの情報番組で取り上げられます。ホームページをオープンしただけのひっそりとした幕開けでしたが、おかげで現場が混乱するほどの注文が入りました。

 「シャンヴルマキ」は、脱毛に悩むがん患者のための帽子です。下請けで培ったというこだわりは、生地選びからパターンにいたるまで隅々に息づいています。

デザインも凝っているシャンヴルマキの帽子(サトー提供)

 清潔に保つ必要がある生地は洗えるものだけを選び、肌触りをよくするためになるべく縫製を必要としないパターンを編み出しました。

 同じく肌触りを考えてスベリを排除。スベリとはフィット感を高めるための裏地のパーツです。代わりにぐるりと巻いたテープやSMLのサイズ展開で対応できるようにしました。

 無駄を省くことで軽量化も実現します。一般的には100グラムを超えることも珍しくないなか、シャンヴルマキのそれは50〜70グラムです。

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