目次

  1. EFOとは
  2. EFOの重要性
  3. 【EFOのために知っておきたい】フォーム離脱の理由
    1. 入力項目の多さや煩雑さ
    2. 技術的な問題やエラー
    3. 不明確な利益や目的
    4. モバイル非対応
  4. EFO対策の基本的な進め方3STEP
    1. STEP1.データの収集と分析
    2. STEP2.入力フォームの最適化
    3. STEP3.テストと改善
  5. 施策を効果的に進めるためのEFOツールと主な三つの機能
    1. 入力支援
    2. 分析・レポート
    3. 運用サポート
  6. EFOツールを活用するメリット
    1. データ分析の効率向上
    2. ユーザーフィードバックの収集
    3. 離脱個所の特定に対する時間短縮
  7. EFOツールのデメリット
    1. コストの問題
    2. 企業内のナレッジシェアへの労力
    3. 特定のニーズにのみ適している場合
    4. プライバシーとセキュリティの懸念
  8. EFOに役立つおすすめのEFOツール3選
  9. Webサイト運営にとってのフォーム入力は顧客体験の基礎中の基礎

 EFO(Entry Form Optimization)とは、Webサイトやランディングページなどで利用される入力フォーム(入力欄)のデザインや機能を最適化するプロセスを指します。EFOの主な目的は、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させ、入力フォームの記入率や変換率を最大化することです。UXとはユーザー体験と直訳され、ユーザーがサイトを通して得る体験(例えば商品を注文することや予約を取ることなど)を指します。

 入力フォームは、ユーザーが自身の個人情報を入力することで、会員だけのコンテンツ閲覧や商品購入などにたどり着くための重要な要素です。

 入力フォームを使ったWebサイトを運営している企業にとって、入力フォームは企業の売り上げに直結する重要なものです。SEO対策や広告により自社サイトを訪問するユーザーの数が増えれば増えるほど、その重要度は増します。このため、EFOは常に取り組まなければならない施策ともいえるでしょう。

 一方で、入力フォームまでたどり着いたユーザーが入力を完了させることなく離脱する割合は平均で50%前後、高い場合は70%とされています(参照:〈調査報告〉ECサイトのカゴ落ち率は平均は約64.7% |イー・エージェンシー)。EFOが重要であるとされながら、実施できていないケースが少なくないのです。これはEFOに力を入れれば、競合他社よりも優位に立てる可能性が高いことを示しています。その意味においても、EFOは非常に重要な施策といえます。

 入力フォームの離脱理由は多岐にわたりますが、ここでは重要な四つの理由を紹介します。

 入力項目が多かったり、見た目が複雑だと思われたりすると、瞬間的に面倒さが勝り、ユーザーはその時点で離脱してしまいます。冗長な情報収集はユーザーのイライラを引き起こす要因となるため注意が必要です。

 また、最近ではパスワード強化のために「英数文字の組み合わせ」や「英大文字を含む」など複雑な要求が増えています。多くのユーザーにとってパスワードを考える手間が増えたことも、離脱が起きる理由の一つと認識すべきでしょう。

 入力フォームが正しく動作せず、エラーメッセージが表示される場合、ユーザーはストレスを感じて離脱することがあります。些細なところでは「半角・全角の指定(ユーザーは半角を入力したが、システムは全角しか受け付けないためにエラーメッセージが表示される)」も、ストレスの一つといえるでしょう。

 入力フォームには、多くの場合、名前や住所、電話番号など個人情報を入力します。企業が提供する価値や、入力した情報の活用方法が不透明な場合、ユーザーは疑念を抱き、離脱することがあります。

 入力フォームがモバイルデバイスで適切に表示されず、操作が難しい場合、離脱の可能性は高まります。総務省の調査によると、Webサイトを訪れるユーザーの約8割がスマートフォン経由だとわかります(参照:令和4年通信利用動向調査ポイント p.3|総務省)。そのためモバイルユーザー向けに入力フォームを最適化することが重要です。

 入力フォームの最適化に向けて適切なステップを踏まないと、効果的なEFOにはなりません。ここで解説する基本的な三つの手順を意識してEFOを進めていきましょう。

  1. データの収集と分析
  2. 入力フォームの最適化
  3. テストと改善

 なお、以下で紹介するステップはEFOツールを導入することでより効率化できるため、後述する内容と合わせてご覧ください。

 まず、EFO対策のためのデータを収集し、分析します。

①ユーザー行動の分析

 Webサイトやアプリ内でのユーザーの行動をトラッキングし、入力フォームに訪れるユーザーの挙動を理解します。どの項目がクリックされているか、どの段階で離脱が発生しているかなどを分析します。

 ユーザー行動の分析でよく活用されるツールとしては以下があります。

アクセス解析ツール
(Googleアナリティクス)
ユーザーがサイトにどういうキーワードで訪れたのか、どの程度の時間滞在したのか、1人のユーザーがどのページを見たのかなど、サイトのアクセス状況を定量的に把握するために使用する。
ヒートマップツール サイトに訪れたユーザーのマウスの動きを追跡し、そのマウスのログからヒートマップを作り出し、どこまで読み込まれているかを暖色・寒色で可視化できる。定性的にサイト改善の課題発見のために使用する。

②アンケートやフィードバックの収集

 ユーザーに対してアンケートやフィードバックを実施し、入力フォームの利用に関する洞察を得ます。ユーザーがなぜ離脱するのか、どの部分が使いにくいと感じられているかを把握します。

 ユーザーへの使いやすさに関するアンケートを実施する方法のほか、社内関係者でフォームを実際に使ってもらうことによって、具体的なフィードバックを得る方法があります。特に後者は、事業に対する一定の理解があるため、少数のサンプルでも有効な声になり効果的です。

 次に、分析結果をもとに入力フォームの改善をおこないます。

①デザインの改善

 入力フォームのデザインを洗練し、ユーザーが直感的に理解できるようなシンプルで使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を導入します。UIとは利用者にとっての見やすさのことで、サイトデザインやボタンの操作性、文字・フォントの大きさなどの見やすさを指します。デザインを改善することで視覚的な障壁を減らし、ユーザーの離脱を防ぎます。

②入力項目の最適化

 必要最小限の情報収集に留め、入力項目を簡素化します。ユーザーがストレスを感じることなく、効率的に情報提供ができるような入力フォーム設計を心掛けます。

③モバイルフレンドリーな設計

 モバイルデバイスからのアクセスにも対応したレスポンシブデザインを採用し、モバイルユーザーがスムーズに入力フォームを利用できるようにします。

 改善は、一度おこなっただけで終了ではなく、比較分析や定期的な調整が必要です。

①A/Bテストの実施

 A/Bテストとは、特定の要素を変更した異なるバージョンの入力フォームを作成し、どのバージョンが最も効果が高いかを比較する分析手法です。EFO対策におけるA/Bテストでは、例えば以下の要素を比較しましょう。

項目 比較検討の内容例
ボタンの色 青色か緑色か
コピーの文言

「注文手続きをする」とするか、
「注文の手続きはこちら」とするか

特にボタン内に入る文言が重要
ユーザーの心理負担を配慮しつつ、誤解のない進行を目指す

フォントサイズ/太字 すべて統一サイズとするか、一部重要な箇所のサイズを大きく(もしくは太字に)するか
列の型 入力する箇所(例えば氏名)を1列にするか、苗字と名前を横並びに2列にするか
確認事項の有無

パスワードやメールアドレスを2回入力させるか、1回だけにするか

パスワードの場合は記憶させることが目的となり、メールアドレスは誤入力を防ぐことが目的となる

入力方式

選択式か直接入力式か

生年月日や都道府県など、入力するよりも選択した方が早い場合に使う

入力必須項目

入力は任意か必須か

事業側としては取得したい生年月日や性別も、ユーザーにとっては入力をためらうことが想定される場合に「任意」とすることで離脱を防ぐ

 細かな変更であってもユーザーに与える印象は変わり、入力率は変動します。A/Bで改善を繰り返すことが大切です。

②定期的なユーザーテスト

 ユーザーテストを通じて、実際のユーザーが入力フォームを使用する際の問題や課題を発見します。そのフィードバックをもとに入力フォームを改善していきましょう。

③データの継続的なモニタリング

 入力フォームの変更を実施した後も、ユーザーの行動データを継続的にモニタリングして、入力フォームのパフォーマンスを確認します。必要に応じて調整をおこない、ユーザーのニーズに合った最適な入力フォームを提供し続けます。

 専門的なことがわからなくても、EFOツールを用いることで入力フォームの作成や分析が容易になり、ユーザーに使いやすいサイトを効果的に提供できるようになります。

 EFOツールには、ユーザーの入力フォーム離脱を防ぐために主に三つの機能が備わっています。ここでは、それらの機能について詳しく解説します。

 EFOツールのメイン機能として、ユーザーの入力にかかるストレスを減らす「入力支援」があります。郵便番号から「検索」ボタンを押すだけで住所を自動入力したり、残りの入力項目数を表示してユーザーに完了までの経過をお知らせしたりする機能が入力支援にあたります。

 また、最近ではSNSの個人情報と連動してメールアドレスや氏名が入力反映される機能や、入力の誤記入があるとリアルタイムで教えてくれる機能なども一般化してきています。

 ほかにも、入力支援には以下のような機能があります。

主な機能項目 機能説明
ガイドナビゲーション 入力フォームの残り項目数をリアルタイムに通知し、入力の進行状況をナビゲート
リアルタイムアラート ユーザーが入力ミスをしたらその場で通知
住所自動入力 郵便番号を入力すると住所が自動で入力
エラー時背景色設定 必須項目を強調して明示
サブミットブロック 入力中、送信ボタンを別画像に差し替え、ミス送信をガード
入力が終わると送信ボタンが出現
入力モード自動変換 最適な入力モードに自動切替(PCのIE・Firefoxのみ対応)
初期表示文言設定 入力サンプルを例示
離脱ブロック 離脱しようとするとメッセージを表示し、操作ミスによる離脱を防止
初期項目フォーカス カーソルが最初の項目に自動で移動
入力形式事前指示 入力中の項目の形式を明示
ふりがな自動入力 任意の項目のフリガナを自動表示
半角・全角自動変換 英数字を自動で全角・半角に変換
入力時背景色設定 入力中の項目の背景色を変え強調
入力成功サイン 入力の成功を項目ごとに明示
メアドサジェスト よく使われるドメイン候補を表示
送信ボタンデザイン 送信ボタンの見た目や文言をカスタマイズ
スマホキーボード変換 スマホの入力キーボードを最適化
Facebook自動入力 Facebookのユーザー情報を取得し自動入力
Yahoo!自動入力 Yahoo!のユーザー情報を取得し自動入力
ドメイン存在チェック メールアドレス入力時にそのメールアドレスのドメインが存在するかを判断
会社情報自動入力 会社名を入力するだけで、会社情報を入力フォームに反映

 「レポート機能」では、マーケティングに活用できるさまざまな情報を集められます。レポート機能で閲覧・出力できる項目には、以下のようなものがあります。

  • 期間や項目別に、対象の入力フォームへの訪問数や離脱率
  • 入力フォームの中で離脱が多かった項目やページ
  • 入力フォームの滞在時間

 これらを分析することで、入力フォームの改善すべき点が見つけられます。例えばフォーム入力中の離脱が多いのであれば、入力項目を必要最低限にしてユーザー負担を軽減させることなどが挙げられるでしょう。

 EFOツールの提供元の多くはレポートの分析や入力フォームの改善提案などの運用サポートもおこなっています。

 EFOツールを使いこなすには、入力支援機能がユーザーに与える効果や、レポートが示している内容などを把握・理解する専門知識が必要です。どこまでサポートしてくれるかは提供元ごとに異なりますが、うまく活用すれば基本的には専門知識がほとんどなくても使いこなせるようになっています。

 EFOツールは、入力途中の離脱防止に大いに役立ちます。ここではEFOツールを活用するメリットを三つ紹介します。

 EFOツールを使えば、入力フォームの利用データをリアルタイムで追跡し、分析できます。ユーザー行動の理解や問題点の特定が迅速におこなえるので、改善すべき点を正しく把握できるようになります。

 また、多くのEFOツールはA/Bテストの機能を備えているため、異なるバージョンの入力フォームを容易に比較可能です。データ分析により発見した改善点と合わせて、実際のデータにもとづく意思決定が容易となります。

 EFOツールはアンケートなどによって、ユーザーの意見や感想を直接かつ、速やかに収集できます。これにより、ユーザー視点からの改善ポイントが得られます。

 EFOツールは入力フォームのどこに非効率なところがあるのか、データ分析やユーザーの声の収集によって離脱個所の特定がわかりやすいため、作業の手間や時間の節約が期待できます。これにより、迅速な実装と反復が可能です。

 EFOツールにはメリットがある一方で、デメリットがあることも理解しておかなければなりません。ここでは主なデメリットを四つ解説します。

 EFOツールのなかには高価なものもあり、小規模なビジネスやプロジェクトでは予算の負担となる可能性があります。月額でおおむね1万円前後から高額になると5万円を超えます。

 EFOツールの操作や最適化手法の理解に際して、特に導入時は、チームメンバーのトレーニングが必要です。導入後は顧客接点部門やマーケティング部門、システム部門がそれぞれ必要なノウハウを共有し、本質的に顧客体験の向上につなげる土台を作っていく必要がありますが、時間と労力がかかります。

 EFOツールによっては、特定の用途や業界に使用する場合のみに適していることがあります。そのため、導入を検討しているツールが自社のニーズに対応するツールであるか確認するようにしましょう。

 入力フォームに含まれる個人情報を扱う場合、EFOツールが適切なセキュリティ対策を備えているかどうかを確認する必要があります。一般的なケースでは、GoogleやYahoo、またはSNSのログイン情報を入力フォームに即座に反映でき、入力の手間が省けます。

 しかしユーザーによっては個人情報が自動で入力されることへの懸念が勝る可能性として考えられます。

 最後に、筆者がおすすめするEFOツールを三つ紹介します。

エフトラEFO(株式会社エフ・コード)
月額30,000円、初期費用30,000円~
設定画面とプレビューが一体となっており、実際の挙動をその場で確認しながら入力フォームを設計できる。分析レポートには反映されない「テスト用」の入力フォームを作れるため、一旦試しに実装して反応を見てみる、といった使い方も可能。
EFOツールを初めて導入する事業者におすすめ
https://f-tra.com/ja/efo/
GORILLA EFO(ブルースクレイ・ジャパン株式会社)
月額9,800円(5フォームまで)、初期費用30,000円
ほかのツールと比較して月額料金が安く、タグを設置するだけで簡単に導入できるのが特徴。フォーム分析機能では期間別・項目別・ブラウザ別など、細かな条件を設定して分析できる。A/Bテストにも対応。
EFOツールを導入済で費用削減を検討している事業者におすすめ
https://gorilla-efo.com/
Gyro-n EFO(株式会社ユニヴァ・ジャイロン)
月額15,000円~、初期費用0円~
Yahoo! JAPAN IDやFacebookに登録されているプロフィールデータと連携して自動入力する機能など、入力アシスト機能が豊富。導入実績が豊富で、導入企業実績は6000以上にのぼる。
マーケティングツールをすでに導入し、EFO機能に特化したツールだけを導入しようと検討している事業者におすすめ
https://www.gyro-n.com/efo/

 EFOツールの導入に迷っている人は、上記三つから選ぶとよいでしょう。

 昨今、5Gといわれるネットインフラの高速化によって私たちはあらゆるデータや情報の取得が素早くなりました。しかしその反面、動作の遅さや不明さに対する拒否反応(感度)が高くなって来ていると感じています。

 今後、フォーム入力においても従来のフォーム形式だけでなく「チャットなどの一問一答式の入力」や「音声認識」による入力サポートなど、あらゆるユーザーにとって使いやすくなる仕組みが進んでいます。

 ユーザーにどのような入力フォームを提供するのが望ましいのかを考えることは、顧客体験の基礎中の基礎として、今後もますます重要な位置付けになると考えられます。