目次

  1. 自動車産業の一翼を担う「オルタネーター」
  2. リーマン・ショックで芽生えた危機感
  3. 「早く帰国して」と頼まれ社長に就任
  4. 「注文が7割減ります」と告げられ
  5. 納得するまでに半年かかった
  6. 取引を広げてリスクヘッジ
  7. 異業種の可食容器にもチャレンジ
  8. 新たな技術の習得で勝負
  9. ベテランこそマインドチェンジを

 1941年創業の榊原精器は、トヨタ自動車をはじめとする自動車産業の集積地、愛知県の西三河地域にあります。西尾市とタイに工場があり、主要取引先のティア1(一次サプライヤー) として、アルミの切削加工を得意としてきました。鉄に比べてアルミは軽くてやわらかく、熱伝導性が高いことから加工しやすい一方で、加工精度を維持するのが難しいことでも知られます。

 榊原精器の主力商品は自動車部品。なかでもエンジンの回転エネルギーを電気に変換する「オルタネーター」の部品は、世界でもトップシェアを誇ります。2024年1月末時点の社員数は260人、年商は約80億円です。

榊原精器が製作するオルタネーターの部品(同社提供)

 榊原さんは地元の工業高校を卒業後に、社員50人ほどの樹脂成型の会社へ入社しました。ものづくりが身近な西三河地域では、ごく自然なキャリアだったといいます。

 「子どものころから、家業がものづくりの会社だと自覚していました。先代社長の父から『後を継いでほしい』と言われたことはありませんが、私自身は『早く社会に出て自立したい』という思いが強かったです」

 樹脂成型の会社では、「段取り工」として生産現場を支えた榊原さん。取引先への納期に合わせて樹脂部品の生産計画を立て、生産ラインの準備を担当しました。

 「仕事は面白かったですね。いかに早く生産ラインを整えてライン作業者に渡せるかが、その日の生産実績に直結します。自分の創意工夫が数字に表れるところに、大きなやりがいを感じました」

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