目次

  1. 蔵見学は年間5万人も 代表銘柄は4年熟成
  2. 年商は20年ほどで12倍へ 無添加・直販が奏功
  3. 木桶の存続に危機感 職人復活プロジェクト立ち上げ
  4. 孫世代に木桶仕込み醤油を残すため
  5. 日用品から嗜好品を目指して
  6. 木桶仕込みの生産量は約1%

 ヤマロク醤油を代表する銘柄は「鶴醤(つるびしお)」。通常の醤油づくりでは4ヵ月から6ヵ月で出来上がる醤油がほとんどですが、鶴醤は濃口醤油を1〜2年熟成し、さらにもろみを加え再び2〜3年熟成させる、通常より手間のかかる製法です。

ヤマロク醤油の蔵内でスタッフの丁寧な説明を聞きながら味比べができる醤油

 年中無休、予約なしで蔵見学を受け入れていることも特徴の一つで、売り上げの3割弱は観光客の直販が占めています。

 木桶仕込み醤油がどう造られているか、現場を見せながら丁寧に蔵案内をしたり、ヤマロク醤油で製造している醤油や醤油加工品の数種類を味比べしたりできることが、数々のメディアで取り上げられることで、蔵見学に訪れる人は絶えず、年間5万人に上ることもありました。

昭和30年ごろのヤマロク醤油
昭和30年ごろのヤマロク醤油(ヤマロク醤油提供)

 山本さんの祖父の代までは、醬油づくりに欠かせない「もろみ」をつくる「もろみ屋」でしたが、小豆島の醤油産業が隆盛を極めていた1949年、自分たちで絞って醤油をつくった方が儲けが出ることに気づき、醤油屋に転身。

 しかし、その後まもなく工業化の時代に入り、木桶から始まった日本の醤油製造は昭和30年代にホーロー、高度経済成長期にはFRP(繊維強化プラスチック)やステンレスに移り変わっていきました。

 当時、ヤマロク醤油は資金不足もあり、木桶のままつくり続けていました。山本さんが家業に戻った2002年ごろは、従業員はおらず、山本さんと父と母の3人だけでした。当時の年商は1500万円。経営状況は芳しくなく、父と母二人が食べていくのでやっとという状況でした。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。