目次

  1. 「平和の鐘」「復興の鐘」を製造
  2. スポンサーなしの自力再建を図る
  3. 「下っ端とはいえ責任がある」
  4. 機械鋳物への再挑戦を任される
  5. リーマンと震災で新規事業を断念
  6. 機械鋳物の下地がZEMONに

 高岡市は「高岡銅器」の名で知られる良質な鋳物の産地です。この地にある老子製作所は銅製の美術鋳物に強みを持ち、寺院などで使われる釣り鐘市場では全国シェア7割を占めています。現在の従業員数は10人で、年間売り上げは約1億3千万円です。

 老子製作所の手がけた美術鋳物は有名スポットに置かれた物が少なくありません。例えば、広島市の「平和の鐘」のほか、新潟県佐渡市の「佐渡日蓮聖人大銅像」、岩手県釜石市の「復興の鐘」など、数多のモニュメントを全国で手がけています。

老子製作所が製作した岩手県釜石市の「復興の鐘」

 しかし、その経営は苦しいものでした。釣り鐘や銅像といった美術鋳物は、市場が極めてニッチなうえ、めったなことでは壊れないので受注が先細る一方です。また、美術鋳物は受注単価がとても高額ですが、突発的な需要がほとんどを占め、タイトな資金繰りが常態化していました。

 このため、老子製作所は1960年ごろから、大型の切削機械の鋳造事業に着手した過去があります。しかし、産業機械の小型化が進む流れの中で、90年代には機械の鋳造事業から撤退しました。

 負債を積み重ねながらも、老子製作所の歴代社長は経営努力を続けてきました。しかし、コロナ禍による景気の冷え込みが最後の一打となり、2021年、老子製作所は民事再生法の適用を申請します。当時の負債総額は約10億6千万円。現在15代目の老子さんが、スポンサー無しの自立再建を図っています。

 会社の現状について老子さんは「借金のプレッシャーが軽くなったので、美術鋳物の売り上げだけでも経営が成り立つようになりました。今のところ再生計画に沿った業績をあげることができています。しかし、銀行からの借り入れができない状態なので、苦しい資金繰りが続いています」と語ります。

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