目次

  1. ベア(ベースアップ)とは 定期昇給との違い
  2. 財務省の調査概要
  3. ベア・定期昇給、中堅・中小企業でも増加
  4. 人件費の価格転嫁「できていない」企業が半数
    1. 「転嫁できた・ある程度転嫁できた」
    2. 「転嫁できていない・転嫁が十分ではない」
    3. 「転嫁していない(必要ない)」
    4. 「同業他社の動向」/「消費者の理解が得られない」
    5. 「原材料費の転嫁を優先している」
    6. 「取引先・消費者の理解が得られない」

 財務省によると、ベア(ベースアップ)とは、賃金表などの改定により賃金水準を引き上げることを指します。

 一方、定期昇給とは、毎年一定の時期を定めて、その企業の昇給制度に従って行われる昇給のことを指し、毎年時期を定めて行っている場合は、能力、業績評価に基づく査定昇給なども含みます。

 財務省の公式サイトによると、2024年3月中旬~4月中旬、各財務局が継続的にヒアリングを実施している全国計1125社に対して、調査しました。このうち、資本金10億円未満の中堅・中小企業は638社でした。

 財務省の調査によると、2024年度に「ベア(ベースアップ)」または「定期昇給」を実施する企業の割合は前年度からそれぞれ増加し、中小企業ではベアが63.1%(前年は54.3%)、定期昇給が78.7%(前年は74.2%)となっており、「企業が賃金の底上げを意識していることがうかがえる」とコメントしています。

 2024年度において、「ベア」の引上げ率を「3%以上」と回答した企業の割合は、中堅・中小企業等で52.0%となりました。

 「ベアと定期昇給を合わせた賃金」の引上げ率を「5%以上」と回答した企業の割合は、中堅・中小企業等で24.4%となり、いずれも前年度に比べ増加しているといいます。

 大企業も含めて賃上げを実施する理由について尋ねたところ、「社員のモチベーション向上、待遇改善、離職防止」が最多の86%、賃上げしない理由の最多は「業績(収益)低迷(見通し含む)」(63.2%)でした。

 人件費の価格転嫁について、「(一定程度以上)できた」とする中堅・中小企業等は32.4%である一方、「(十分または全く)できていない」とする中堅・中小企業は50.2%に上り、引き続き課題となっていました。

 人件費の価格転嫁ができていない理由としては、「同業他社の動向」「原材料費の転嫁を優先している」「取引先からの理解が得られない」などが上位にきています。事業者の意見は以下の通りです。

「主要取引先は、価格転嫁要請に応じる姿勢。当社も仕入先からの価格転嫁要
請に応じるようにしている」(自動車・同附属品・東海)
「日本と比べ、取引先の米国は人件費の価格転嫁が容易」(汎用機械・近畿)

「新規製品は人件費を考慮し価格設定しているが、既存製品に価格転嫁するこ
とは難しい」(情報通信機械・東北)
「リードタイムの短い製品は比較的転嫁しやすいが、長期に渡る製品は特に当初
契約もあり価格転嫁が難しい」(電気機械・東海)

「定年退職による総支給額の減少分を賃金引上げに充当」(金属・関東)
「賃上げの原資は、企業収益であるべき」(生産用機械・北陸)

「同業他社も踏まえた地域相場であり、自社だけの価格転嫁は消費者から受け
入れられず、人件費増加分を吸収できていない」(小売・関東)

「原価が転嫁されている中、さらに人件費を転嫁すると競争力を失う可能性がある」(生活関連サービス・関東、建設・東北ほか)

「今年に入ってからはある程度理解が得られるようになってきたが、以前は別の業者に依頼すると言われるような状況」(陸運・東海)
「ここ10~20年、業界的に人件費を価格転嫁するという発想がなかった。今後は状況を見ながら転嫁していく必要がある」(鉄鋼・東北)